今日は俺・希&じゅりあ・夢香カップルのダブルデートの日。
「良いな
ダブルデートも
楽しみだ!」
男子チームが先に来て、女子チームを待っている間に俺がじゅりあに言った。
「そうだな!
まだかな〜」
その内。
「そーう・じゅりあ!
お待たせ!」
「ごめんね!
遅れたー!」
希達が小走りでやって来た。
「おー!
来た来た!」
「大丈夫だ!
そんなに待ってないぞー!」
「ありがとう!
私が誘ったのに・・・」
夢香は申し訳なさそうに肩を落とした。
「大丈夫!
さぁ行こう!」
何処へ行くかと言うと植物園!
希の意見でそう決まったのだ。
「俺植物園行くの初めて!
どんなところかな?」
「植物園って言うぐらいだから植物が一杯あるんだろうな」
男子チームが色々想像していた。
「植物園行った事ないのー?
凄く楽しい場所だよ!
綺麗だし、今から行くところはおしゃれだよ!」
希が目を輝かせて言った。
「おー!
ますますワクワクするぜ!」
俺はテンションを上げた。
「でしょ!」
最寄りの駅から2駅で降りる。
駅を出てしばらく歩いた頃。
「まだ歩くのか?
タクシー使った方が早くね?」
とじゅりあがの希に聞いた。
「それ思う」
俺も同感だった。
「ごめんごめん
そうだよね
もうちょっとだよ!」
希は申し訳なさそうにした。
「も〜男子!
体力なさ過ぎ〜」
夢香が俺達に言った。
「何だとぉー?」
「まぁまぁ
ほら!
見えたよ!」
希が指差した先にはA place of peaceと書かれてあった。
大きな建物が緑いっぱいに飾られている。
「おぉ〜!」✖️3
「外観も素敵でしょ!?」
「うん!」
「入ろっか?」
「おう!」
テンションが上がった。
いよいよだ!
入場料はそれぞれで。
「チケット受け取ったら中で待っててくれる?」
「分かった」
こうして皆チケットを買った。
「お待たせ!」
1番最後に支払いを済ませた俺が皆と合流した。
「ほい!」
そして中へ入る。
「わ〜!
スゲ〜!」
奥へ進んで行く度に壮大な景色が広がっている。
「じゅりあ
語彙力ないね」
夢香がじゅりあに突っ込んだ。
「だって!言葉で表しようがないんだもん!」
じゅりあは頬を膨らませた。
「うん!」
しばらく回っていると。
「う・・・」
希がお腹を抑えて唸った。
「おい
大丈夫か?
体調悪いのか?」
俺は心配して希に聞いた。
夢香達も心配している。
「ごめん
何でもない
気にしないで」
そう言っている希はかなり苦しそうだ。
「無理するなよ」
「これぐらい平気
ありがとう・・・」
「あぁ」
「ほら!
あっちのドーム綺麗だよ!」
希はとってつけたみたいにはしゃいだ。
俺にはしんどいのを無理して隠してる様にしか見えなかった。
「行こう!
爽!
皆!」
希を先頭に再び歩き始めた。
植物園へ入って1時間。
「ねぇ
お腹空いてない?」
ふと夢香が皆に聞いた。
「確かに!」
「空いてる!」
「うん!」
皆同感した。
「でも此処、飲食店何てあるのか?」
「ふふん!
あるよ♪」
そう言って希は俺達を4階へ案内した。
「ほんとだ!」
「ちゃんと揃ってんじゃん!」
「美味しそう!」
「何食べようかな〜」
俺達は悩んだ。
そしてそれぞれ選びランチタイムがスタート!
食べている間希が不安そうにしている事が気になったがそれは俺だけだったみたいで、ワイワイ話しながら食べた。
「ごちそうさま!」✖️6
「皆門限とかある?じゅりあは7時だよね」
食べ終わった後、夢香が皆に聞いた。
「お前遅いんだな」
「おう」
「俺は6時」
「俺7時」
「じゅりあ遅いんだな」
「私は・・・4時」
「早っ」
希だけ以上に早い。
「ちょっとね・・・」
希の顔が暗くなる。
「希?」
「いや、何でもないない!」
彼女は明るい笑顔を咲かせた。
「ほんとに?」
「うん!」
「今3時半、え!3時半!?」
じゅりあが時計を2度見した。
「ゆっくりめのスタートだったし、結構のんびりしたからね」
「希の門限まで後30分じゃん!」
じゅりあは焦った。
「私もうちょっとしたら帰るよ
皆はゆっくりして行って」
希は寂しげに言った。
「そうか・・・
でもお前だけ帰って俺達だけいるって言うのは
ちょっと・・・」
俺達はためらった。
「良いの良いの!
ねぇ夢香
此処から私達の家までどれぐらいかかる?」
「えーっと・・・
駅まで徒歩5分だから・・・
30分ぐらいじゃない?」
「マズいなー、4時過ぎそう・・・」
希は考えた。
「そんなに厳しいのか?」
「うん・・・」
「じゃあもう出た方が良くね?」
じゅりあが提案した。
確かに。
現在3時35分。
「そうだね
残念・・・
ばいばい」
希はそう言って出口へ向かおうとした。
「俺達も一緒に出るよ」
その希を俺は引き留めた。
「良いの?」
「あぁ、良いよな?皆」
「うん!」✖️2
「ありがとう!
ごめんね・・・」
希は申し訳なさそうにしている。
「気にすんな」
こうして皆で植物園を後にした。
駅に到着してお互いに別れるところまで歩いていた時。
「・・・う・・・」
希がうずくまってしまった。
「希!」
俺達は、彼女に駆け寄った。
「お腹痛い・・・・
どうしよう・・・」
希は小さい声で囁いた。
「大丈夫か?」
「う・・・」
希は答える事が出来ていない。
これは大変だ。
「もしかしてプレッシャーかもな
家に帰れば厳しい人がいる」
じゅりあは思い付いた様に言った。
「プレッシャー・・・」
「そうか
希は花道家の娘でおじいちゃんはマジ厳しい・・・
後少しとは言え門限過ぎてしまったら・・・
彼女は想像が付かないぐらいに怒られる・・・」
「皆で希を守ろう!」
夢香は断言した。
「おう!」✖️2
希は落ち付く様子もなかったから俺は希を背負う事にした。
「希
俺お前背負うな
頑張れ!」
「・・・・・・」
俺は希を背負った。
「よし!」
俺達は再び歩き始めた。
全員で希の家に出発。
「ん・・・」
少し歩いたところで希が俺の背中の上で動いた。
「希?」
「私・・・」
希は戸惑った。
「お前駅出て皆が別れるところまで来た時お腹痛い・・・ってうずくまったんだ
トイレでもなさそうだしめっちゃ苦しんでたから俺が背負って此処まで歩いて来た
皆で希の家に言って事情を説明しようって話し合った」
と俺は希に教えた。
「そっか・・・
ありがとうね・・・」
「お腹痛いのはプレッシャーじゃないかって話になって皆で希を守ろうって」
希は遠くに見える榎本家を目にしてブルッと震えた。
「うん、学業以外は門限を過ぎる事が許されない」
「爽
ありがとう
もう着くから降りるよ」
そう言って希は俺の背中を降りた。
「大丈夫か?」
「うん!
でも説明は付き合って欲しいかも・・・
私1人じゃ・・・」
「良かった!
「勿論!」
彼女の優しく微笑みかけるあどけない表情の中には不安気な表情も紛れていた。
家の前まで辿り着いた。
「フゥー」
深呼吸を1つ。
その瞬間希は今まで俺達が見た事のない以上に冷静で心を失ったんじゃないかと思うぐらいニコリともしない落ち付いた人へと変わった。
時間は4時15分。
「ただいま戻りました、15分過ぎてしまい申し訳ありません」
希は家の扉を開けた。
「希!
やっと帰って来た!
このバカ者!
門限を15分も過ぎるとは何という度胸だ!?」
奥からおじいさんが出て来て彼女を叱った。
あの人が希のおじいちゃん?
白いひげを生やした厳しいオーラが醸しでている人だ。
「まぁまぁ
無事に帰って来たんだし良いじゃん
今この歳は自由に遊ばせてあげよう」
今度はその怒鳴り声を聞いた男性が出て来た。
お父さんかな?
おじいちゃんとは真逆のタイプだ。
「何だ?
その後ろの連中は?」
おじいちゃんは俺達を睨んだ。
「私の友達」
「初めまして、あの彼女ちゃんと4時に帰ろうとしてました
ちょっと植物園を出たのが遅くて
門限無視はしてませんでした
だから許してあげてくれませんか?」
俺は必死でおじいちゃんを説得した。
しかし。
「何?
植物園?
まさかこいつらとずっとはしゃいでたのか?」
と更に顔をしかめた。
こいつらって・・・
「うん、そうだよ」
「全く!
お前はいつどんな時も静でいないと
お前の友達は皆元気一杯で静を知らない人だらけみたいだな
お前はこいつらとは違うって教えてやれ」
「いつどんな時も静?」
夢香は呟いた。
「うん、私学校ではおじいちゃんが見てないからはしゃいでる
でも家では声をあげて笑う事はない
小学3年まではこの家の庭で走り回って遊んでた
でも4年の夏からそれが禁止されて声をあげて笑う・はしゃぐ事が禁止された
そろそろ花道家の娘としての自覚を持てってね
榎本家の看板に泥を塗らないようにって
当時の私としてははしゃぎたいし声あげて笑いたくて苦痛だった
でも逆らったら何されるか分からないから従って、そのせいで友達は離れて行き卒業する頃には1人ぼっちになってた
中学からは一層おじいちゃんの監視が厳しくなって、お義父さんがカバーしてくれてたけどずっと1人だった
私は本当の自分を見失ってしまったの
そりゃ今なら分かるよ
榎本家の娘として恥ずかしくない行動をしないといけないってね
でも入学式の日、爽に告白された事が嬉しくて皆と話せる事が楽しくて・・・
何より皆が私の側にいてくれる・・・
この人達には嘘を付きたくない・ありのままの自分を見せたいって思った
また皆が離れて行くあの光景をもう見たくないの・・・
だからね、高校と家で性格を使い分けてるんだ」
と希は説明した。
「何?!
告白?性格を使い分けてる?
お前の様な人間は呑気に付き合ったりするな
もっと他にあるだろ?
分かっているのなら行動にうつせ!
もっと自覚を持て」
「私がどうしようが別に良いでしょ?
一応言っとくと、付き合ってる相手は隣にいる爽よ、
大体おじいちゃんだっておばあちゃんと結婚したからお父さんがいる訳で、お父さんもお母さんと結婚したから私がいるんでしょ?
花道家の娘だから・後継だから笑ったらいけない
何てそんなルールはないと思うけど?」
希は強気でおじいちゃんに立ち向かった。
味方がついているから心強いのだろう。
「いちいち口答えするな
そいつか
気に入らんな
ルールは私が決めたんだ、お前を大声をあげて笑うそんな行儀の悪い人にはなって欲しくないからな」
おじいちゃんは俺を睨んだ。
「爽の事悪く言わないで!
笑わないで生きる何て出来ないよ
いつも高校で笑い方を思い出して笑ってるもん」
「そんな自分の子供に笑い方を考えさせるのおかしくないですか?」
俺はおじいちゃんに聞いた。
「何だと?」
「希は凄く可愛い笑顔の持ち主です
彼女から笑顔を奪わないであげて下さい」
「そうよ!」
「俺からもお願いします!」
俺達は頭を下げた。
「皆・・・」
「人数が多ければ許されると思ってるのか?」
「俺達諦めませんから!」
「お父さん・・・
希は母親を失って友達もいなくなりました
そんな彼女に俺は何の言葉もかけられなかった・・・
彩美が生きてた頃のあなたはここまで厳しくなかった
母親を失った彼女からは笑顔が消えてしまった
それを良い理由にあなたは笑う事を禁じた
希はお母さんが悲しむから昔みたいに笑いたくて必死に笑顔を作る練習をしていた
やっと本来の笑顔を取り戻せた
でもそれがバレてしまって家では本当に笑わなくなった
俺はもう何年も希の笑顔を見ていない
試練を乗り越えた彼女に笑う事を許して頂けませんか?」
「お父さん・・・」
希は泣きそうになっている。
皆に追い詰められたおじいちゃんは
「うむむー
彩美さんはよく笑う人だったなー
分かったよ・・・
笑いたい時思う存分笑え
もう止めはせん
それから門限は6時だ」
と言った。
「おじちゃん・・・ほんと?・・・」
希の声は震えている。
「あぁ」
「ありがとう・・・
皆・お父さんも!」
「おう!」
「あぁ、お前の為なら何だってする」
こうして希は自由に笑える様になったのだった。
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