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ルカの「幸せなサボり生活」が始まったのも束の間、平穏は長くは続きませんでした。ある日、王宮の庭園でアヤ、ミナ、ナツメの三人と優雅に(中身はダラダラと)ティータイムを楽しんでいたルカでしたが、茂みの中から「カサカサ……」と不穏な音が響きました。
現れたのは、一匹の**「ぷるぷるスライム」**。
攻撃性は皆無、幼児でも指一本で潰せるような、この世界で最も弱く、最も愛くるしいとされるモンスターです。
しかし、元ニート・健二の防衛本能は、その「未知の不定形生物」に対してマックスまで跳ね上がりました。
(……ひっ! な、何だあの青いゼリー状の化け物は!? 前世のネットで見た『猛毒スライム』か!? 触れたら溶かされるやつか!?)
「うわあああ! 来るな、来るなよおおお!」
ルカは顔を引きつらせ、椅子を蹴り飛ばさんばかりの勢いで立ち上がると、反射的に一番近くにいたナツメとアヤの間に割り込み、二人の腰にがっしりと抱きついて背後に隠れました。
「ナツメ! アヤ! 助けて! あいつを何とかしてくれ! 俺の代わりに戦ってくれえええ!」
ルカは半泣きで、二人の服をギュッと掴んでブルブルと震えています。中身は42歳のおっさんですが、外見は超絶美形公爵。その「必死の抱擁」を受けた二人の脳内は、瞬時にショートしました。
「……っ!! ル、ルカ様が、私とアヤを同時に抱き寄せ……『二人の力が必要だ』と仰っている……!(ナツメ)」
「計算外ですわ……! この密着度、心拍数がオーバーフローして、スライムの解析どころではありません……!(アヤ)」
二人はルカの恐怖の震えを、「強大な敵を前にした武者震い」、あるいは**「愛する二人への情熱的な鼓舞」**と見事に変換。
「……分かりました、ルカ様! あの邪悪なる『深淵の青(ただのスライム)』、このアヤが因果律ごと消滅させますわ!」
「主の御心のままに! 露払い、ナツメが引き受けた!」
アヤは眼鏡を光らせて指を鳴らし、庭園の半分が消し飛ぶほどの極大消滅魔法を展開。ナツメは神速の一閃で、スライムがいた空間そのものを切り裂きました。
ドォォォォン!!
爆風で庭園の木々がなぎ倒され、スライムは蒸発。ルカは爆音に腰を抜かして、今度はミナの懐に飛び込みました。
「ひいいい! 爆発した! 怖い! ミナ、守ってえええ!」
ミナは「あらあら」と微笑みながら、ルカの頭を優しく胸に抱き寄せました。
「大丈夫ですよ、ルカ様。貴方様が『あえて弱者を演じて』、彼女たちの実力を引き出そうとしたその慈愛、私が一番近くで癒やして差し上げますね」
周囲の兵士たちは、焦土と化した庭園を見て震え上がりました。
「……恐ろしい。ルカ様は、あの小さなスライムの裏に潜む『世界の歪み』を察知し、二人の傑物を一瞬で動かしたのだ……」
「しかも、最後はミナ殿の懐へ……。勝利の後の安らぎすらも完璧な計算の内。まさに、愛と破壊を操る支配者だ!」
ルカはミナの腕の中でこっそりミナの胸を揉みながら(胸柔らかいなぁ……)と現実逃避しながらも、心の中で激しくツッコミを入れていました。
(……いや、ただのゼリーが怖かっただけなんだって! 庭園ボロボロじゃねーか! 誰が直すんだよこれ、俺の責任になるの!? やだあああ、働きたくないいいい!)
こうして、スライム一匹を相手に国家存亡レベルの戦力を投入したルカの伝説に、新たに「戦場すらもハーレムに変える、無慈悲な指揮官」という項目が加わることになったのである。