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デュースが目を覚ましたとき、最初に聞こえたのは、やけに静かな部屋の空気だった。
いつもなら、エースの軽口やら意味のない文句やらが飛んでくる時間帯だ。
それがない。
「……?」
ベッドから起き上がると、エースはすでに座っていた。
だが、背中を丸め、ぼんやりと床を見つめている。
「エース?」
呼びかけると、数拍遅れて顔が上がる。
「ん……?」
その瞬間、デュースははっきりと分かった。
顔色が悪い。血の気が引いたように白く、目の焦点も合っていない。
「お前、具合悪いんじゃ……」
言い切る前に、エースは手を振った。
「大丈夫だって。ちょっと寝不足なだけ」
立ち上がろうとして、わずかによろける。
それを、エース自身が無理やり笑って誤魔化した。
「ほら、平気」
両手を広げて見せていた。
でも平気なやつの動きじゃない。
そう言いたかったが、エースはそれ以上の会話を切り上げるように制服に手を伸ばした。
デュースは、それ以上踏み込めなかった。
教室に入ってからも、様子は変わらない。
エースは席につくと、ずっと俯いたままだった。
机に肘をつき、額に手を当てている。
肩で息をしているのが、隣の席からでも分かる。
額にはうっすらと汗。脂汗に近い。
「……なあ」
デュースは小声で声を掛けた。
「本当に大丈夫か?」
「……は、平気だって」
返ってきた声は小さく、短い。
いつもの挑発的な調子が、完全に消えていた。
クルーウェルはホームルームを進めていくが、エースの異変に気づく様子はない。
デュースだけが、時間が進むたびに胸の奥がざわついていった。