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#恋愛
#長編
(やっぱりルティや美人さん、上位種族でも《高魔力保持者》は、人族を生贄、あるいは道具として考えていない。同じ上位種族であっても、《高魔力保持者》とそうじゃないだけで、人族への印象が全く違うのね)
まだ気持ちが消化できていないけれど、今はルティのフォローが先だ。
「ルティは私に求愛してくれましたけど、私の言葉や話をちゃんと聞いて、選択肢をくださったでしょう。だからあそこにいる美人さんとは違いますよ」
「本当ですか?」
「はい」
怖いのは、お互い様だ。ルティは私が目の前から居なくなるのが怖くて、私はルティが豹変するのが怖い。そしてこのトラウマは一朝一夕では埋められないし、簡単でもない。
「でも人族の感情は流動的です。好きだって思っていても口にせず、関わろうとする時間が短くなれば、愛情も目減りします。《片翼》という繋がりや、唯一無二の存在であることを人族である私たちは、本能的に理解出来ない。人族の愛情は一つじゃないから、だから人族の伴侶を選ぶ時はとっても面倒で、努力が必要です」
「努力します」
「私もルティと一緒に居られるように努力します。お互いに自分の種族のことを、価値観のことを何度も話し合って、そうやって無理のない範囲でルールを決めるのです。今までと同じように」
「今までと同じように……。ええ、そうですね」
ルティが頬から涙をこぼすので拭って、頬にキスをする。
「ルティの常識と、私の常識が違うように、伴侶としての考え方も生き方も違うのですから、折り合いを付ける必要があるのです。それがなかったら」
「なかったら?」
「こちらのお二人のように、今まさに破局して人族側が死ぬところです」
「「!?」」
ルティは床に突っ伏している青年を見た直後、私を抱きしめて「そんなのは駄目です」と震えて怯えている。鳥竜族の女性は結界に張り付いてドンドンと叩きながら泣いていた。
「そんなの駄目よ! やっと見つけた《片翼》なのに!」
「《片翼》というキッカケなら許せるとして、それだけの理由で伴侶にしたいというのなら、今のセリフは人族的に好感度マイナスです」
容赦ないと王子の声がしたが、気のせいだと思うことにした。鳥竜族の女性はわあ、と泣き出した。
「──っ、出会った頃、小鳥の姿で怪我して……私を助けてくれたのよ。魔物の鴉相手にボロボロになりながらも、助けてくれて……ふわふわの金髪と笑顔を見た時にこの人だって……この人しかいないって……だから、死んじゃうのは、いや!」
なんだ。ちゃんと好きになる理由はあるのね。
それにちょっとだけ救われた。ブリジットもルティの話を聞く限り、生贄として迎えたわけじゃなかったのだから。よく考えれば生贄の発想は、ヴィクトル様以外の天狐族と人族の王家に伝わっていた伝承によって植え付けられたものだった。王家が上位種族と契約した時に、人族の花嫁、花婿は生贄と喧伝したのか、そう歪曲されたのかは不明だ。
そう考えつつも、私はエリオットを助けることを決めた。
「ルティ、死にかけているこの方をなんとかできますか?」
「求愛紋が中途半端に刻印されているせいで、魔力炉が未完成の状態ですね。その器官が正常に活動してなくて毒に似た症状が出ています」
見ただけで症状が分かるなんてルティは凄い。ちょっと新たな一面をしてキュンとしてしまった。
「……空竜鳥族の娘。お前はあの状態から一度解除はできるか?」
(空竜鳥? あ、上位種族の別名称!)
「……解除は、無理。私たち空竜鳥族は求愛紋を施すしかできない」
「では私が一度解除しよう。シズクに感謝してください」
「──っ」
パチン、と指を鳴らすことで苦しんでいたエリオットの求愛紋が砕けた音が聞こえた。意図も簡単に求愛紋を解除したことに声が出ない。忘れていたけれど、ルティは神々の次に力を得た天狐族だったのを失念していた。
「危なかったですね。あと一刻ほど遅かったら、肉体が持ちませんでした。魔力炉は人族にはない器官ですから、それを作り出すために半年ほど時間を掛けて肉体に馴染ませ、できるだけ傍にいることで形成させます。それを数分で施そうと勇み足を踏むから、肉体が拒絶してしまうのです」
「うぐっ……だって……」
「そ、そうなのか!?」
魔法の事になった瞬間、金髪碧眼の王子が目を輝かせて話に割り込んでいた。うん。この人は間違いなく魔法好きだわ。そしてその為なら、割とアッサリ裏切りそう。
「人族はどうしようもなく無知なのですね。《片翼》に選ばれた場合、本能的に──」
「「「?」」」
ルティは目を見開いてハッとしていた。そのあと滝のような汗を流しつつ、油の切れた機械人形のごとく首を私に向ける。この表情、ちょっと新鮮かも。
「ルティ?」
「シズク。つかぬことを尋ねますが……もしかして魔力炉がなにかとか……《片翼》について知識は誰かに聞かされずとも、知っていましたよね?」
必死なルティに対して、私は正直に答える。
「いいえ。魔力炉については、海竜魚族の出した教材で初めて知ったぐらいです。《高魔力保持者》の魔力を受け入れるには、この魔力炉が必要らしいこと。それによって片翼、番との寿命を引き上げるぐらいでしょうか」
「嘘……でしょ、《片翼》の常識とか……人族は知らない?」
「知りませんよ。……そこの王子は、この世界では常識だったりします?」
急に全員の視線が王子に向けられる。その圧に困惑しつつも答えてくれた。
「い、いや……。魔力炉は人族以外の種族にある……とは古文書で読んだぐらいで……魔法を生業にしている王宮魔法使いでも知っているかどうか……。《片翼》についても名誉なことと書物には記載されているが、人身御供の生贄という認識が根付いている。贄と引き換えに五穀豊穣を齎すとかが伝承として根付いているな」
「「………………」」
再び重苦しい空気がしばらく流れたのだった。
コメント
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読んだ…!同じ《片翼》でも種族によって愛情の形が違うのがしんどかった🥀 でもシズクが「折り合いが大事」ってルティに伝えたところ、すごく沁みた。お互いがこわがってて、それでも向き合おうとしてるのが尊い…🖤 空竜鳥族の話でちゃんと好きになる理由があってちょっと救われた気持ちになったよ🤍