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僕は目を瞑る。
賑やかに騒ぐ小人達の声は、
それから聞こえて来る。
「声って、何の話よ。全く…」
「巨人殿には耳まで届いていないのかもですね」
「声を出せー、なんて言われずとも。俺達の中で会話が止んだことは一度もないのによ」
小人達はやはり、すぐ傍まで来ているようだった。
「このままだと、あいつがこの屋敷から出ていっちまうぞ!」
「何か気付いてもらう方法はないかしら…」
「力づくで 止めるなんて、僕達じゃ非力すぎるよね…」
小人達は会議を始めたようだった。
しかし、僕は既に彼らの力になると決めていた。
「そうだ!あれだよ!あれ」
とびきり大きな声が聞こえたかと思うと、
彼らの気配が遠ざかっていく。
僕は目を閉じていた。
しかし、彼らの声は聞こえなくなっていた。
…。
…。
…コツ…
コツッ…………。
僕は階段を降りていた。
途中の階を詮索する。
…。
ここは何階なのだろうか。
先が見えないほど真っ黒に続く廊下。
やはり、小人達の言う通り
この屋敷全体の明かりが消えているようだった。
…。
ガタガタ…。
…ガタッ…ガタッ。
静寂の中、窓の音だけが聞こえる。
まるで屋敷の外から見えない何かが
入ろうと試すように。
その姿を見ようと
一目窓を見た時だった。
「待……っ……」
それは窓に書かれていた。
「て……」
ゆっくりと一文字ずつ浮き出てくる。
窓の曇りの中、見えない何かがメッセージを
伝えているようだった。
「い……かな……」
「い…で……」
窓の隅に、爪先くらいの大きさの文字が
ガタガタに並んでいる。
僕は目を閉じる。
すると、
声は確かに窓の縁から聞こえてきた。
「ちょっと!もうちょっとでかく書かないと、見えないでしょ!」
「と言われましても…梯子が足りないからって肩車はキツイっす…」
「まーしょうがないねー。窓の位置が高すぎなんだよねー」
「梯子使いすぎたぁ…めっちゃ疲れた」
小人達の話し声が聞こえる。
窓に近付くと、
すぐ傍に彼らを感じられた。
「うわぁ。巨人様が近づいてきましたね!」
「いや、見えないからでしょ。字がちっさすぎて」
「窓ってこんな高い場所なんだなー。俺、感動しちゃうわ」
「感動してる場合じゃねぇ。ここは極寒の地かなんなのか。バカ寒いぞ」
小人達は、どうやら先回りをしていたようだ。
それにしても、よくここにいたと思う。
僕があの時、さらに階段を下っていたら
彼らは今頃…。
…。
…。
「そこ…へ…」
「は…いっ…」
「て…」
窓いっぱいに書き詰められた字。
言葉の最後に、何やら絵を描いていた。
これは…目だろうか…。
正面から向かい合うように目の絵がある。
その瞳は、僕を見つめている。
「そこへはいって…」
僕はそれを見ながら、
目を瞬かせていた。
「違うよ!後ろ!後ろ!」
閉じた瞬間、小人の叫び声が聞き取れる。
僕は言葉通りに、背後を振り向く。
そこには電気室と書かれていた。
ドアノブを捻り、中へ入っていくと
大きな地球儀が机上に置かれていた。
「なんだこれは…」
やたら大きなそれは、
僕の腕の中に 収まりきらないであろう大きさだった。
辛うじて、
装飾やら形やらが地球儀には見えるが
厚い雲に覆われていて、
国なんてものは一つも見えない。
目を閉じる。
「なんだこれは…か。まあ、この状態だとそうだよな」
「これが直らない事には、光は封印されたまま…」
彼らの補足からして、これは館の明かりと何か
深い関わりがありそうだ。
「まずはあの厚い埃を取って欲しいわ」
「そうですね、我らでは小さすぎて泥沼に足を突っ込むようなものですからね」
「どうやって、それを伝えたらいいかな?」
…。
…。
途端、分厚い雲の中に小さな穴が出来る。
それは、地球の下付近で
机上に見える靴先の跡を追っていたら
たまたま目に入ったものだった。