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夜。
シェアハウスの屋上。
「……ここ来るの久しぶりだな」
フェンスにもたれながら、うりが空を見上げる。
「……そうだね」
もふくんも、その隣に立つ。
静かな風。
誰もいない空間。
「……で?」
うりがちらっと横を見る。
「どうするつもり?」
「……」
もふくんはすぐには答えない。
少しだけ考えてから。
「まだ、何もしない」
同じ答え。
でも。
「……そろそろ限界だろ」
うりが言う。
「相手、完全に分かってる感じだったぞ」
「……うん」
否定しない。
「“無敗”なんて言葉、普通出てこねぇし」
その一言。
「……」
もふくんの表情が、わずかに変わる。
「懐かしい?」
軽く笑いながら、うりが言う。
「……全然」
即答。
でも。
「……嘘つけ」
うりが小さく笑う。
「……」
もふくんは何も言わない。
ただ、視線を逸らす。
「……あの頃さ」
うりが、ぽつりと呟く。
「負けたこと、なかったよな」
その言葉。
「……」
風が、少しだけ強く吹く。
「どこ行っても勝って」
「誰も止められなくて」
「気づいたら——」
一瞬、言葉を止める。
「“無敗”なんて呼ばれてた」
静かな声。
でも、重い。
「……」
もふくんは、目を閉じる。
「……やめて」
小さく言う。
「……あー、悪い」
うりが肩をすくめる。
「でもさ」
少しだけ真面目な声になる。
「完全に終わったわけじゃねぇだろ」
その問い。
「……」
もふくんは、しばらく黙る。
そして。
「……終わらせた」
ゆっくりと言う。
「もう、戻らない」
はっきりと。
迷いなく。
「……」
うりは、その顔を見る。
「……そっか」
小さく呟く。
「じゃあさ」
少しだけ、ニヤッと笑う。
「もし戻るとしたら?」
その質問。
「……戻らない」
即答。
でも。
「……絶対?」
うりが、さらに聞く。
「……」
一瞬だけ。
ほんの一瞬だけ。
迷いが見えた。
「……」
でも、すぐに消える。
「……戻らない」
もう一度、言う。
さっきよりも、強く。
「……ふーん」
うりはそれ以上は聞かない。
ただ。
「……まぁいいや」
軽く空を見上げる。
「俺はどっちでもいいけどな」
その一言。
「……」
もふくんは、何も言わない。
ただ。
「……」
遠くを見る。
静かな目。
でもその奥には——
まだ消えていない何かがあった。
―――
屋上のドアの向こう。
「……」
ヒロくんが、静かに立っていた。
(“無敗”……)
その言葉が、頭に残る。
(やっぱり)
確信が、形になる。
「(この2人……)」
ただの過去じゃない。
「(何かと戦ってた人たちだ)」
そこまで分かる。
でも。
「……」
まだ足りない。
全部は、見えない。
「(でも)」
一歩ずつ、近づいている。
その“真実”に。