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しかしフィル様を残して部屋を去るわけには行かない。ゼノは大丈夫だと目で訴えてくるが、やはりクルト王のことが信用できない。そんな気持ちが顔に現れていたのか、クルト王が布で口端を|拭《ふ》きながら、こちらを見た。

「ラズール、用があるなら気にせず行ってくれて構わない。心配しなくとも、フィルに何もしない」

「……恐れ入ります」


息を吐くようにして口を開き目を伏せる。

感情を|面《おもて》に出さないよう気をつけていたのに、クルト王に読まれてしまった。|不甲斐《ふがい》ない。もっと自分を|律《りっ》せねばならない。イヴァルの王城を出たからこそ、もっと周囲に注意を払わねばならないのに。

俺はゼノの目を見て|微《かす》かに頷く。

バイロンの王に言われてしまっては、その言葉を無視して、ここにい続けることはできない。

俺はフィル様の耳に顔を寄せると、「何かあればすぐに参ります」と|囁《ささや》いて、扉の手前で軽く一礼をしてゼノと部屋を出た。扉が閉まる直前に、フィル様が「また後でね」と手をあげた姿を見て目を細めながら。



二人とも無言で歩きゼノの部屋に入った。ゼノに勧められるまま椅子に座り、窓の外で揺れる木の葉を眺める。


「風が冷たくなってきたが、いい天気だな。ここは空気も澄んで心地よい」

「そうだろ?ラズールも毎年夏になれば、フィル様に同行して来ればいい」

「それは…いい考えだな」


木の枝に鳥が止まった。葉と葉の間についた赤い実を突いていたかと思うと、|嘴《くちばし》に|咥《くわ》えて飛んでいってしまう。鳥の姿を目で追っていると、目の前の机にいく枚かの書類が置かれた。


「はいこれ。頼まれてたやつ。諸注意とかいろいろ説明が書いてあるから、よく読んでサインしといてくれ」

「ありがとう。大変だったか?」

「いや全然。ちょうどいいのがあったからな。ラズール殿も気に入ると思う」

「そうか。楽しみだな」


ゼノが窓に近づき鍵を外して開ける。途端に少し冷たい風が入ってきて、俺は清らかな空気を深く吸い込んだ。


「今くらいの気候がいいよな。俺、暑いのも寒いのも嫌いなんだよ」

「そうなのか?俺は季節を嫌いなどと思ったことはない。その折々にフィル様がいろんな反応をされる様子がかわいらしくて…」


ゼノが窓の外に顔を向けたまま、ポツリと言う。


「ラズールのそれは……愛、なのか?」

「…俺は、フィル様のことを、生涯たった一人の主だと決めている。俺の全てなんだ」


少し置いて、ゼノがこちらを向いて笑った。


「そうか。まあ俺も、リアム様に生涯の忠誠を誓っている。でもリアム様は口が悪いからなぁ。フィル様は優しくて見た目も可憐だから、全力で守りたくなるよな」

「そうだな…」


俺は手元の書類に目を落として呟いた。

フィル様に対する気持ちは、もう好きだ愛してるという言葉では言い表せない。俺の手で幸せにしてあげたいのは勿論だが、フィル様が心穏やかに安全に幸せに暮らしていけるのなら、誰が傍にいたっていいのだ。

どうかこの先、フィル様がずっと笑顔で過ごせますよう……と、密かに心の中で神に願った。




銀の王子は金の王子の隣で輝く

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