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神隠し

3 - 第3話 恐怖

2024年12月24日

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翔は赤黒い空を見上げながら、異常な空気に息が詰まるのを感じた。目の前の少女は、どこか神々しい雰囲気すら漂わせている。その微笑みは無邪気でありながら、背筋を凍らせる冷たさを帯びていた。

「ここは……どこだ?」

翔は声を震わせながら尋ねた。

「ここは“神隠しの庭”。悪いことをした人や、余計なことに首を突っ込んだ人が来る場所。」

少女は黒い鈴を軽く振りながら答える。その音は耳を刺すように鋭く、周囲の空間がわずかに揺れるように感じられた。

「楓はどこだ!? 返せ!」

翔は叫んだが、少女は肩をすくめるだけだった。

「彼女は別の場所にいるよ。でも、助けたければ自分で見つけて。」

「どういうことだ!?」

翔が詰め寄ろうとすると、突然、地面が裂けるように開き、黒い霧が噴き出した。その中から無数の手のようなものが現れ、翔の足元を掴もうとする。

「逃げたければ、早く動くことだね。」

少女の声は楽しげだったが、そこには一切の慈悲がなかった。

翔は必死に走り出した。足元から伸びる黒い手は執拗に追いかけてくる。振り払おうとするたびに、まるで生き物のように動き、ますます絡みつこうとしてきた。

「こんなところで終わるわけにはいかない!」

彼は心の中で叫びながら、霧の中に突っ込んだ。

霧を抜けると、視界が一変した。そこは廃墟と化した遊園地のような場所だった。壊れた観覧車が不気味に軋み、風に揺れる錆びたメリーゴーラウンドからは、不気味な音楽がかすかに流れていた。

「楓! 楓、どこにいるんだ!?」

翔は声を上げて走り回ったが、返事はない。ただ、代わりに誰かの囁き声が耳元で聞こえる。

「見つけられるかな?」

翔は振り返ったが、そこには誰もいない。しかし、観覧車の下に黒い影が揺れているのを見つけた。影の中には、かすかに人影が浮かび上がっていた。

「楓!」

翔は全力でその場に駆け寄った。しかし、影の中から現れたのは楓ではなく、誘拐犯の男だった。

「お前……!」

翔は驚きで足を止めた。男はぼろぼろの姿でこちらを睨んでいる。

「逃げられると思ったか……? 俺はずっとここであのガキに遊ばれてるんだ……!」

男の声は怒りと絶望が入り混じっていた。

「ガキ? あの少女のことか?」

「そうだ……あいつはただの子供じゃねえ。俺をここに閉じ込めて、毎日、毎日――」

男が話し終える前に、再び黒い霧が湧き上がり、彼を覆い尽くした。

「待て、話を――」

翔が声を上げる間もなく、男の姿は消え、霧の中に飲まれてしまった。

「面白いね。」

背後から、あの少女の声が聞こえた。翔が振り向くと、少女が黒い鈴を手にしてこちらを見ていた。

「どうして俺をこんなところに連れてきたんだ!?」

翔は怒りを込めて叫んだが、少女は笑みを崩さなかった。

「あなた、気づいてないの? あなた自身が“神隠し”に選ばれた理由を。」

「理由……?」

翔は息を飲んだ。

「この世界に来るのは罪を犯した人だけじゃない。真実を求めすぎた人、そして自分の運命を知らずにいた人――。」

少女の言葉に、翔は言い返せなかった。胸の奥に、何か触れられたくない秘密があるような気がしたからだ。

「君は――一体、何者なんだ?」

少女は黒い鈴を強く振った。その音が響き渡る中で、彼女は言った。

「私は神隠しそのもの。あなたが逃げられるかどうか、最後まで見届けるよ。」

そして、鈴の音とともに翔の視界は一瞬で暗転した。

次に翔が目を開けたとき、彼は楓と一緒にいた。だが、その場所は見覚えのある倉庫だった。

「翔……? 何があったの?」

楓が混乱した声で問いかける。

「わからない……でも、俺たちは――」

そのとき、倉庫の隅に置かれた黒い鈴が微かに揺れた。そして、少女の声が耳元でささやいた。

「まだ終わりじゃないよ。」

翔は背筋を震わせながら、鈴を睨みつけた。それはまるで、また何かが始まることを告げているかのようだった。

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