テラーノベル
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「……おい。何が『【衝撃】烏丸神主の秘密を大公開!衝撃のラストに涙が止まらない……』だ。クリックしたら、ただのフリー素材の犬が走ってる動画じゃねぇか。俺のギガと10分を返しやがれ!」ある日の午後、社務所のソファでスマホを握りしめた蓮が、画面が割れんばかりの勢いでタップしていた。
「蓮、またネットの『釣り』に引っかかったのか。学習せぬ男じゃな」
コマが呆れたように鼻を鳴らすが、蓮のイライラは収まらない。
「タイトルとサムネイル(画像)で釣って再生数を稼ぐクソ動画どもめ、全員サーバーごと爆発しろ!」
蓮が鋭い目でスマホの画面を凝視すると、画面から、無数の「巨大な釣り針」の形をした、ネオンカラーに激しく明滅する怪異が飛び出していた。それは、視聴者の好奇心を煽って騙し、広告収入を得ようとするネットの歪んだ執着が生んだ怪異――『大釣りのネオン針(ベイト・バグ)』だ。
怪異からは、安っぽいBGMと共に不快な文字が次々と溢れ出てくる。
『驚きの結末』『【閲覧注意】』『ガチでヤバい』
「(あー、本当にネットのゴミだな。中身がスカスカの動画で荒稼ぎしやがって。……まぁ、誇大広告って意味じゃうちのお守りも似たようなもんだが、俺はちゃんと物理的にバグを消してるからな!)」
蓮がタッチペンを抜こうとしたその時、社務所に駆け込んできたのは、地元の若手YouTuberの青年・カイだった。
「神主さん、助けてください! 誰かが僕のチャンネルの動画のサムネとタイトルを勝手に悪用して、『【悲報】この配信者、実は大犯罪者でした』っていう完全な釣り動画を大量にアップしてるんです! 通報してもキリがないし、僕の本当のファンが騙されてどんどん離れていっちゃって……っ!」
カイのスマホからも、全く同じ『大釣りのネオン針』の怪異がびっしりと生え、彼の本物の動画データをじわじわと侵食していた。
「なるほど。ネットのクリックベイトってのは、中身の正しさなんてどうでもよくて、クリックさせた時点で勝ちっていう害悪システムだからな。まともに通報フォームから申請しても、相手はボットで量産してくるから追いつかない」
蓮は懐から電卓を取り出し、カイの前にピシッと提示した。
「カイさん。お祓い代は、今後のチャンネルの広告収入の補填も含めて28万円。その代わり、お前の名前を騙って『釣り』を楽しんでるその画面の向こうの詐欺師どもを、アルゴリズムごと一網打尽にしてやるよ」
「お願いします! 僕のチャンネルを、みんなが安心して見られる場所に戻してください!」
カイが訴えかけると、ネットの悪意と同期した無数のネオンの釣り針が、蓮たちを絡め取ろうと鋭く襲いかかってきた。
「コマ、視聴者を騙して数字を稼ぐ偽物のコンテンツを、ヘッダーごと強制削除(デリート)するぞ! 神力をよこせ!」
「おうともさ! 嘘の看板で人を惑わす不届き者め! 本物の神の鉄槌を喰らうが良い!」
コマが怒りで激しく輝き、その聖なるエネルギーが蓮のタッチペンにチャージされる。ペン先からは、偽りのデータを検知して消去する「コンテンツフィルタリング」の青いプラズマが激しくパチパチと放たれた。
蓮は襲いかかるネオンの針を華麗にステップで躱し、釣り動画を自動生成して大量投稿している海外の偽サーバー(コア)を瞬時に特定した。
「嘘のタイトルで人を釣るなら、自分のアカウントが永遠に虚無の海を漂う覚悟をしとけ。――クリック終了だ」
蓮がタッチペンを、怪異のコアに向かって鋭く突き刺す。
「――虚偽表示一斉削除・アカウント永久凍結(クリック・ブロック)!!」
ズガァァァン!!!
社務所に凄まじい衝撃音が響き渡り、大釣りのネオン針の怪異は「この動画は利用規約違反により削除されました」というエラー警告の悲鳴を上げながら、今度はシュレッダーにかけられた「ただのノイズの紙屑」へと姿を変え、空気中にサラサラと消滅した。
同時に、ネット上に転がっていたカイに関するすべての釣り動画が一瞬で消え去り、犯人の自動生成システムは完全にクラッシュして二度と起動できなくなった。
「あ……釣り動画が全部消えてる! 本当の僕の動画だけが残りました! ありがとうございます、神主さん!」
カイはすっかり安心した笑顔でお祓い代を支払い、元気に神社を後にした。
夜。社務所で蓮はホクホク顔でお札を数えていた。
「いやー、釣り動画を消して28万。やっぱりネットのお掃除ビジネスは裏切らないな」
「蓮……お前、自分のギガと10分を無駄にされた私怨が半分以上入っておったろ。まぁ、あの青年が救われたから良しとするがな」
コマが、新しく買ってもらった高級なお肉の缶詰を美味しそうに食べながら、満足げに鼻を鳴らす。
「私怨じゃない、ネットの健全化だ。さぁ、明日からは『ネットの風評被害・釣り動画撲滅フォーム』のバナーをホームページの真ん中に貼るぞ!」
拝金主義のクズ神主。彼の冷徹なタッチペンの前では、ネットに渦巻くどんな巧妙な罠(タイトル)も、一瞬で消去されるただのバグデータに過ぎないようだった。
コメント
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うわ、この話めっちゃ痛快でした!「サムネの罠は開けてみないと分からない」ってタイトルからしてニヤリとさせられるし、蓮の私怨混じりのネット掃除ビジネス、笑っちゃいました。28万円の請求も「まあ確かに価値あるわ」と思える説得力。コマとの掛け合いも相変わらず絶妙で、最後の「ネットの健全化だ」って開き直りに思わず声出して笑いました。釣り動画にイライラしてた身としては、めちゃくちゃスカッとする一話でした!