私は夏彦と二人きりになった。
倫太郎は長期休みでも帰ろうとしない。夫は子育てから手が離れたとそれをいいことに仕事と言って他の女と不倫をした。
家に帰れば何もせず口ばかり文句ばかり。私を相変わらずモラハラし続ける。
私は夫がいない時間とこの仕事場の時間が一番平和だ。
そして隣にいる誠也、彼の存在が一番生きる糧になっている。倫太郎はもちろんだけど……彼は私にでさえも会うことを拒んでいる。
自覚はあるわ。夏彦から受ける言葉の暴力の捌け口は倫太郎だった。手は出さないが彼に怒鳴りつけたりキツく話したり。
オンラインの占いの仕事の時も倫太郎が遊びたがって邪魔してきたけど、あんたのお父さんがお金を入れないからこっちは苦労してるんだ! あっちいけ! と怒鳴ってからは私にあそぼう、だなんて言わなくなってしまった。
小学校の担任からは息子は友達からハバにされていたことを聞いてショックだった。
それも知らず私は仕事に一心不乱で気づいてあげられなかった。
だから倫太郎は一人で進学校を決め一人で家を出て行ってしまったのだ。
だから私に残るのは誠也……この誠也だけ。
「姉ちゃん、夏彦さんがひどいことをしたのは確かだ。その女の人たちも妻子がいるのわかってたりわかっていても夏彦さんとの関係を辞めないのもいけない。でも占いも利用してその女の人たちも……ある意味被害者の彼女たちも傷つけるのは間違っているよ」
それはわかってる、わかってるよ。
「マダム金城や……お姉ちゃんを慕ってやって来て幸せそうに帰っていく人たちの顔を思い出して……」
ええ、みんなこんなズブなど素人な私の占いを信じ、解釈して……中にはわざわざお礼しに来てくれる人たちもいた。
占いは忌み嫌われることもあるけど幸せにすることもできる。なのにそれを利用して……ひどいわよね。
他の占い師さんにも申し訳ないし本当に悪いことを利用してお金を巻き上げている占い師を私は軽蔑してたけど今の自分はそうじゃない。
私はどの仕事も続かなかったけどこの占いの仕事は長く続いている。
大切にしない……と……。
いや、まだダメよ……まだ……。私は体を起こした。
「お姉ちゃん……大丈夫?」
「大丈夫……準備しなきゃ。昼からくるあの人を出迎えないとね」
「……そうだったね……でも……」