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51 ◇ふざけた野郎
そんな素敵な奥さんがいるのに元旦那の六田先生は、医局中が知ってるような
スキャンダラスな行動を平気でするようになって、俺の耳にまで入ってきていた。
亜矢子さんはしばらくの間静観していたようだけれど、結局離婚した。
六田さんは離婚後、周りに亜矢子さんのほうから三行半をつきつけられて
自分は離婚したのだと、周りに吹聴してたっけ。
どちらがどちらに離婚を言い渡したのかは、そんなに大事なことじゃない。
妻を裏切って同僚の女医と浮気していたことが全てだよ。
まったく、ふざけた野郎だ。
そして、ヤツは離婚後すぐにしゃあしゃあと影木景子と再婚した。
よくもまぁこの狭い空間で、恥を恥とも思わず平気で破廉恥なことが
できたもんだ。
俺含め、上司も同僚たちも一様に亜矢子さんの味方だからね。
あのふたりはあれからずっと、周りから爪弾きにされているし、
そういうことのできる人間として、人間失格の烙印を押されている。
51-2.
それに比べ亜矢子さんは余所見せず、真樹夫くん一筋で
りっぱなおかあさんなんだ。
これまでは、それでいいと思ってたけど、ぼちぼち俺のことを
見て欲しいと思うようになっていて……。
亜矢子さんがその気になれば、再婚相手などすぐに見付かるだろう。
彼女がその気になる前に、俺にその気になってもらわないと困る。
その後――――。
亜矢子先生の代打を勤めた兄貴は数日後、俺に言い放った。
「四の五の言わず、手篭めにしてしまえ! 」
なんてことを言うんだ!
「生憎俺は兄貴のような野獣にはなれんよ」と返した。
そして続けて俺は胸の中でこう呟いた。
『それと兄貴、確かにマッキーとは結婚できないが、何を隠そうマッキーから
俺は直々にプロポーズされてんだよっ! 聞いて驚くな! って言わんけど』と。
◇ ◇ ◇ ◇
「余所のお家にはお母さんとお父さんがいるでしょ?
うちのお母さんにはお父さんがいないから、にぃにぃがずっと
一緒にいてあげて? ね、いてあげてね」
俺の耳元で囁いたマッキーはその後俺に抱きついてきた。
俺は分かった、とだけマッキーに返事をした。
マッキーはにぃにぃ好きって言うとぎゅっと更に
抱きついてきた。
そんなマッキーがいじらしくて、可愛いかった。