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おまえは本当に、哀れですね
小さくて、弱くて、頭が悪い
だからこんな悪名高い、神殺しの業を背負った社に贄に出されるんです
可哀想に、可哀想に…
『うーん……』
パチッ。
『……またこの夢かぁ…』
僕の名前は速水泰輝。
この神社で暮らす平凡な人間だ。
…あ、平凡ではないか。
正確に言えば、僕はこの神社に生贄として捧げられた元孤児だ。
生贄って聞くと物騒だけど、
実際は衣食住はキチンとされているし僕も神社のお仕事をお手伝いしてるからあんまり生贄として実感がないんだよなぁ…
『『花嫁様』』
呼ばれて振り返ると、
紙の面を付けた巫女装束の女の子がふたり。
双子みたいにそっくりな見た目。
…顔までそっくりかは見た事ないから知らないけど。
『また居眠りをされて』『風邪をひいてしまいますよ』
『う、うん ごめんね』
この子達はこの神社の巫女さんだ。
神社の関係者はみんなこうして顔を隠している。
…異形とかヒトナラザルモノに顔や名前を隠して生きている。
何故なら、
ここは【神殺し】の神社なのだから
『……ところで…いつまで僕のこと…その…花嫁様って呼ぶの…?』
『はて?』『花嫁様は』『花嫁様でございますが』『『なにか?』』
『……う”、ううう”ッッッ‼︎ やっぱやだよ‼︎僕男なのに‼︎‼︎』
『魑魅魍魎犇くこの土地で』
『異形の花嫁である貴方を真名でお呼びは』
『『できるわけないでしょうが』』
『か、顔は見えないけど今凄く呆れられてる気がする…‼︎』
【異形の花嫁】
…………凄い恥ずかしいがこれは僕のことだ。
僕が平凡な人間って自己紹介していたが…
よくわかってないが、僕には癒しの力があるらしくて異形…妖からしたらつまり無限に回復するチートアイテムらしい…
一緒に生活するだけで怪我は早く治り活力がみなぎるとか。
『そうゆう設定って、普通可愛い女の子とかじゃない?』
『『花嫁様も可愛らしいですよ』』
『う”…あんまり嬉しくない!』
バサァッッッ
『よぉ〜ッ 速水ぃ』
目が開けられないほどの風圧の後、
凄い力で頭を掴まれた。
『うぎゃあああッ⁉︎』
『これはこれは、』『天羽の天狗衆がひとり、小林様』
『こ、小林の兄貴⁉︎何故わたくしの頭をいきなり握り潰す勢いで⁉︎⁉︎』
『うるせぇ〜 おまえは暇だぁ 暇だからさっさと俺の抱き枕になれぇ』
…この狂人…いや間違えたこの大男は小林の兄貴…。
天羽組っていう天狗衆からなる自警団のうちの鷲天狗だ。
おっきくて物凄く強くてカッコよくて……めちゃくちゃぶっ飛んでるお方でもある。
さっき説明したとおり、
僕の側で生活すると異形は元気になる。
縄張り争いが激しい山の異形はこの辺りを守ってくれる代わりにこうしてこの社に休みに来るのだ。
とくに天羽組の方々はよく遊びに…じゃなかった文字通り、羽休めに来てくれる。
基本、巫女さん達以外話し相手がいない僕にはとても嬉しいお客様だ。
……うん、暴力は置いておいて…
『……あ!小林の兄貴、まさかどこか怪我したんですか⁉︎』
『あぁ”?圧勝からの帰還に決まってんだろこのやろー』
『いだだだ!ず、ずみまぜんッッな、なんでじゃあ来たんですか…』
『理由がないとダメかこのやろう
おまえまた額に漢字彫るぞー』
訂正、やっぱり暴力反対だ‼︎
『チビちゃん達ー 速水借りるわ〜』
『『承知しました』』
『わッ⁉︎、』
軽々と抱えられ、
兄貴は社へ堂々と向かっていく。
『あ、あの小林の『速水ぃ、今日はおやっさんの命令で海の方に飛んでったからなー 寝る前に海の話をしてやる』
『!』
小林の兄貴は乱暴だし子供みたいに無邪気で無慈悲で……とても優しい。
『楽しみです!』
『………いつか本物みせてやる』ボソッ
『?兄貴?』
僕は、この社の生贄。
生贄の僕は外には出られない。
だけど、ちっとも寂しくないし不幸じゃない。
『……可哀想、じゃないよ』
夢でみる誰かさんへ、
end