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第15話 優しさの裏側
───結翔side
今日は日曜日。
学校もない。
特に予定もなかったから、朝から家でゆっくりしていた。
……そのはずだった。
結翔「………ッ…」
頭が痛い。
昨日からずっと。
薬も飲んだ。
少し横にもなった。
それでも、全然治まらない。
結翔「……なんなんだよ、これ」
しばらく頭を押さえていたけど、さすがに我慢できなくなってくる。
結翔「……病院、行くか」
スマホを見る。
結翔「…………」
結翔「……って、今日日日曜だし…やってなそうだよな……」
ネットで確認したが
結翔「どこも休みじゃねーか!」
どうしたものかと机を見る。
そこで、ふと目に入った。
───あの日、雫から貰った袋。
結翔「…………あ」
結翔「そういや、あの人……」
薬のことにも詳しかった。
それに、あの時言っていた。
『もし、何かどうしようもない時は、ここに来てくれれば、また私が何かサポートしてあげますよ』
結翔「……行ってみるか」
──────
結翔「……ここだよな」
扉を開ける。
中に入ると、雫がすぐに気づいた。
雫「あら……結翔さん?」
雫「どうしました?」
結翔「昨日から頭が痛くてな」
雫「ずっとですか?」
結翔「ああ。薬も飲んだけど、全然効かねぇ」
雫「そうでしたか」
雫はすぐに俺の様子を見る。
顔色を確認して、いくつか質問をしてくる。
雫「眠れていますか?」
結翔「最近はあんまり」
雫「食事は?」
結翔「普通に食ってる」
雫「そうですか」
雫は一つ一つ確認していく。
その姿は、あの日と同じだった。
落ち着いていて。
優しくて。
こっちが不安にならないように、ちゃんと目を見て話してくれる。
雫「少し休んでいてくださいね」
結翔「悪いな」
雫「いえ」
雫「困っている方を放っておく方が、私は嫌ですから」
結翔「…………」
雫は微笑んだ。
その笑顔を見て――
結翔は、少しだけ首を傾げた。
結翔「……雫さんってさ」
雫「はい?」
一ノ瀬ルナ
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結翔「人を助けるの、好きなんだろうな」
雫「……どうして、そう思うんですか?」
結翔「なんとなく」
雫「なんとなく、ですか」
結翔「あぁ、俺から見たらそう感じたんだ」
少しだけ雫を見る。
結翔「誰かのこと話してる時だけ、雫さんの目が変わるから」
雫「…………」
結翔「その人がどうしてるとか」
結翔「ちゃんと良くなってほしいとか」
結翔「……そういうことばっか考えてるんだろ」
雫「……よく見ていますね」
結翔「まあな」
雫は少しだけ笑った。
けれど、その笑顔はいつもよりほんの少しだけ固かった。
結翔「でもさ」
雫「はい?」
結翔「雫さん自身のことは、あんまり考えてなさそうだな」
雫「…………」
結翔「誰かを助けたいって思うのは、別に悪いことじゃねぇと思う」
結翔「俺も、そういうのはいいことだと思うし」
結翔「でも……」
少しだけ言葉を選ぶ。
結翔「雫さんまで苦しくなる必要は、ねぇんじゃねぇか?」
雫「…………」
その言葉だけは。
なぜか、胸の奥に深く残った。
雫「……どうして、そんなことを?」
結翔「いや」
結翔「なんとなくそう思っただけだ。」
雫「…………」
結翔「雫さん、笑ってるけど」
結翔「ずっと誰かのこと考えてる顔してるから」
雫「…………」
雫は何も言わなかった。
結翔も、それ以上は聞かなかった。
ただ――
雫の表情が、ほんの少しだけ変わったのを見た。
雫「…結翔さんはとても優しいですね」
結翔「別に」
結翔「思ったこと言っただけだ」
雫「…………そうですか」
結翔「ああ」
雫は俯いた。
その表情からは、何を考えているのか分からない。
けれど――
雫「……自分のことを考える…ですか」
小さな声だった。
結翔「ん?」
雫「……いえ。何でもありません」
結翔「そうか」
雫はまた、いつもの笑顔に戻った。
雫「では、今日は無理をしないでくださいね」
結翔「早めに寝るようにするわ……」
雫「それが1番いいと思いますよ笑
また何かあったら、いつでも来てください」
結翔「……ありがとうな」
雫「いえいえ。気軽に来ていただいて大丈夫ですからね」
結翔「すごく助かったし、また調子悪くなった時とか頼っていいか?」
雫「もちろん。とにかく今日はゆっくり休んでくださいね。結翔さん」
──────
帰り道。
結翔「…………」
頭痛は、まだ少し残っている。
でも――
結翔「……あの人」
雫の顔が頭から離れなかった。
笑っていた。
ずっと。
優しく。
なのに。
結翔「多分だけど何か、隠してるよな…でも踏み込みすぎは良くないよな……」
結翔は、それ以上考えるのをやめた。
まだ自分には、踏み込めない場所なのだろう。
だからこそ。
雫が話したくなった時に聞けばいい。
──────
一人になった部屋。
雫「…………」
誰もいない場所で、雫は静かに目を伏せた。
結翔の言葉を思い出す。
───雫さんまで苦しくなる必要は、ねぇんじゃねぇか?
雫「…………」
雫「……困りましたね」
小さく呟く。
雫「そんなこと……言われたら」
雫「少しだけ、自分のことまで考えてしまうじゃないですか」
それでも。
その瞳の奥にあるものは消えない。
家族の無念。
自分が見てきた人たちの苦しみ。
忘れることのできない声。
そして――
あの男。
雫「…………」
雫「……私は、まだ終われません」
優しい声だった。
けれど、その言葉だけは揺らがなかった。
コメント
1件
いやー、今回も良かったわ…。結翔が雫さんの優しさの裏側に気づいて「自分まで苦しくなる必要ない」って言うシーン、じんときたね。雫さんの「まだ終われません」ってところも、何か背負ってる感じがして気になる。キャラの心情描写が丁寧で、どんどん引き込まれるわ🔥 続きが待ち遠しい!