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「今日、うち親いないんだ。久しぶりにそっちで遊んでいい?」


 放課後、何気なく鈴がそう言った瞬間――輝の表情が一瞬だけ固まった。


「え、えっ!?いや、それは、その、筋トレが……!」


「えっ、今日って“胸筋休める日”って言ってなかったっけ?」


「いやいやいやいや!そうだけど!いや違う、でも今日はその、プロテインの配合実験が……!」


「配合実験ってなに!?研究職なの!?」


 鈴が不思議そうに笑う中、輝は背中に冷や汗をかいていた。


(落ち着け、ただの幼馴染だ。鈴はそんなつもりで誘ってない、でももし、万が一――)


 脳裏をよぎるのは、あの日の光景。


 助けを求めて手を伸ばされたのに、何もできなかった無力な自分。


「……!2度目は、絶対に……」


 小さく呟いたその声は、鈴には届かない。


「ん?なんか言った?」


「いや!?てか、そうだ!鈴、筋トレしよう!な!?鈴の家の庭で!シャトルランの続き!」


「なんで放課後までシャトルランやらなきゃいけないのよ!?」


 そう言いながらも鈴が笑ったから、輝は少しだけホッとした。


 ――この気持ちが「好き」だと気づくのは、もう少し先の話。


「なんか顔赤いわよ?」

「気のせいだろ。筋トレしすぎて熱いだけだ」

「水飲みなさいよ!?」

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