テラーノベル
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⚠かなりの暴力表現ありなので念のためセンシティブつけました
「はぁっ、はぁっ……」
全力で走る。息が切れて胸が苦しい。
それでも、いち早く彼を助け出さねば、とその一心で走り続けた。
電話で伝えられた場所に着いた瞬間、その空気でわかった。
敵が多すぎる。
気配の数が異常だった。
目の前にいる男たちだけでも10人近く。
全員、自分より体格がいい。
「っ、」
舌打ちを飲み込む。
その奥。
暗がりの向こうには、縄で拘束された佐久間さんの姿があった。
動けないまま俯いている。でも大きな怪我はしていないようだった。
「…佐久間さん」
小さく名前を呼ぶ。
反応はない。
でも、彼は生きている。
それだけで十分だった。
「来たか、阿部」
男の一人が笑う。
「思ったより素直じゃねえか」
「……黙れ」
低く吐き捨てる。
自分より体がでかいそいつを睨みつける。
次の瞬間。
地面を蹴って一気に距離を詰める。
「っ!?」
最初の一人が反応する前に
ボコッ
顔面を打ち抜く。
男が倒れる。
間髪を容れず、
バキッ
二人目も蹴りを叩き込む。
「ぅぐっ……!」
一人、二人…
確実に、潰していく。
無駄な動きは一つもない。
ただ、最短で、最速で。
「っ、調子乗んな!」
複数で囲まれる。
俺よりも圧倒的にガタイがいい。
でもそんなことはもはやどうでもよかった。
「遅ぇよ」
低く呟く。
ボコッ、ドンッ
一人ずつ、確実に仕留めていく。
何人もの男たちが次々と倒れてゆく。
数の差も体格差も俺には関係ない。
今はただ、彼を助けるためだけに動いている。
「はぁっ、、はぁっ……」
残りはあと二人。
目の前の男に一撃を入れ投げ飛ばした。
「ぅがッ………!」
―――あと一人だ。
そう思った瞬間、
バコッ
「っ―――」
鈍い音と共に、後頭部に強烈な衝撃が走った。
視界がぐらりと揺れる。
(っ…やば……)
そのままバランスを崩して冷たいコンクリートに倒れ込む。
「へっ……所詮、阿部もこんなもんかよ」
頭上で、笑い声がする。
「がっかりだぜ…」
男が鉄パイプが振りかぶる。
――まずい。
「っ、」
鉄パイプが振り下ろされる。
その瞬間、体が本能的に勝手に動いて、間一髪で転がるように避けた。
ガンッ、と鈍い音が地面に響く。
目眩がする。前もよく見えない。
それでも立ち上がり、渾身の一撃を叩き込んだ。
ボコッ
男はその場に倒れ込む。
―――全員倒した。
「…はぁっ………っぐ……」
よろりとその場に倒れ込む。
頭が痛い。自分でも出血しているのが分かる。
それでも立ち上がって、佐久間さんの方へ、足を踏み出す。
「…佐久間さ……」
そのときだった。
「おーい。ここにあと一人いるけどぉ?笑」
背後から、声。
ばっと振り返る。
そこには、ナイフを持った男が立っていた。
「っ……」
視界が揺れる。
頭の痛みがひどい。
「死ねっ」
ナイフがものすごいスピードで俺に突き出された。
速い。ぼんやりとした視界で、その動きを認識することなんてできなかった。
グサッ
「ぅぐッ……!」
鈍い痛みが、腹に走る。
一瞬息が止まる。
服に血が滲んでいく。
「…っは、……」
力が抜けてその場に崩れ落ちる。
……だめだ…………
俺は、彼を……
佐久間さんを守るって決めたんだ………
男は勝ち誇った顔でにやりと笑うと、そのまま佐久間さんの方へ歩いていく。
佐久間さんは蹲って耳を抑えて震えている。
「……やめ……ろ……」
声が掠れる。
「佐久間さんに……近づくな……」
刺された場所を抑えながら立ち上がる。
自分の腹に刺さったナイフを抜いて、男の背中をめがけて倒れ込む。
そのまま勢いでナイフごとそこに押し込んだ。
ザクッ
「がっ……!」
男は倒れ、しばらくすると完全に動かなくなった。
静寂が落ちる。
ようやく、終わったんだ。
「……ぁ、べさ…ん……?」
弱々しい声。
「……佐久間さん」
ふらつきながら近づく。
声が掠れる。
「怪我は、ないですか」
「俺は、大丈夫だけど……阿部さんは……?」
声も息も震えている。
「……大したこと、ないですよ」
できるだけ、軽く言う。
佐久間さんをこれ以上不安にさせたくない。
「嘘……」
それでもやはり佐久間さんは空気で全てを感じ取ってしまっていた。
「おなか、刺されたでしょ…あべさん………あべさ…………」
声が、崩れていく。
俺は咄嗟に佐久間さんの手を握った。
俺の手は血まみれだったけど、そんな事を気にする暇なんてなかった。
「……大丈夫だから」
「落ち着いて。」
自分でも、驚くくらい冷静な声だった。
「これから」
ひとつずつ言い聞かせる。
「誰に何を聞かれても、」
息が苦しい。
身体中が痛い。
自分のいる場所に血溜まりができていく。
それでも、口を止めない。
「『何も知らない、巻き込まれただけだ』って答えて」
はっきりと。
「絶対、大丈夫だから。……わかった?」
「…阿部さんは、?」
佐久間さんは震える声で俺に問いかけてきた。
不安と恐怖で押しつぶされてしまいそうだった。
「……俺は、大丈夫だから」
そう言うしかなかった。
遠くからサイレンの音が聞こえる。
その音はこちらに近づいていた。
パトカーだ。
「……っ」
ほんの少しだけ、力が抜ける。
もう大丈夫だ。
佐久間さんを守ることができた。
それだけで十分だった。
「……佐久間さん」
もう一度、小さく名前を呼ぶ。
「…はい……?」
「……無事で、よかった」
それだけ伝える。
サイレンの音は、すぐ近くまで来ていた。
#ご本人様には関係ありません
楪羽*yuzuriha*
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つーぴ
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#佐久間担
yuka @1ヶ月猫化
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コメント
1件
うわっ……第14話、一気に読んじゃいました。めちゃくちゃ重い展開ですね。阿部さん、自分を顧みずに佐久間さんを守ろうとする姿勢が痛々しいほど伝わってきました。最後の「無事で、よかった」の一言に、全部の想いが詰まってる感じがして、胸がぎゅっとなりました。伏線というか、この後の展開が気になりすぎます……ふみさん、続きが待ちきれないです!