テラーノベル
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りりは驚いて、すぐ話し始める。
「あ、もしもし?椎名ちゃん、最近大丈夫かなって思って__」
だが、りりが思っていたものとは、180°は違う展開が、そこには待っていた。
「もしもし、”レイマリ”と申しますが。」
「貴方は…”東雲椎名”のご親友の方でしょうか。」
「…えっ?」
あまりに突然なことに、心底腑抜けていて、素っ頓狂な声が漏れだした。
「な、なになに!?れ、レイ、マリ?誰!?」
「椎名ちゃんは!?」
「あ…そうでした…これを知ってる人って、私以外誰もいないんでしたね。」
レイマリと名乗る人は、椎名の声を借りたまま、極めて冷静沈着で、クールそうな声色で話す。
そこに眠気混じりのものなど一切混ざっておらず、完全な”大人”だ、なんて印象を強く受ける。
まるでギャップ系男子の極端な例みたいだ、ヤンキーが捨て猫に優しいだとか、そういった類いとはあまりに違うのだが。
「初めまして、でしょうか、東雲椎名の…2つ目の人格とでもいえばいいんでしょうか?」
「Sレイマリ、と申します。」
「じ、じんかく……??」
りりの頭は今にもフリーズし、爆発してしまいそうであった。
何が起こっている?まったく整理がつかない。
何が起こっている?何が__
「ん?えっと、えっ?」
「ご、ごめん、なに?ああっ、いや違う。なんですか?」
「ご、ごめんなさい!困惑させますよね。」
「色々事情がありまして、どうか東雲椎名にだけは言わないでください…。」
「え??え??」
もうずっと困惑が止まらず、何も頭に入ってこないりりは、必死に頭を整理しようとしてもまったく出来ない、といった様子だ。
必死に、必死に言葉を出そうとする。
「え?…えっと、もしかして椎名ちゃんがずっとおかしいのって…」
「あ…十中八九、私が原因だと思います、すみません…。」
あまりの別人具合に頭がおかしくなりそうになる。
「えっと、困惑してますよね、きっと。」
「椎名はこんなんじゃありませんから、無理もないです。」
本気で焦っていることを、レイマリと名乗る人物は伝えようとしている気がするし、りりにもそれは伝わってくる。
「う、うん…」
「事情は説明できないの?レイマリ?さん。」
「…椎名の何かに関わったら、私は嫌ですから…。」
「…本当、すみません。」
「えっ、と…き、切りますね、ごめんなさい…」
声を詰まらせながらそう言って、りりは速攻で通話を切った。
(…ゆ、夢なの?なんなの…?)
(わかんない…な、なに…?)
りりは頭を抱える。
思考を整理しようとしても、どこかでバグが生じて、回路がくずれるような、言い表しづらい感覚が、喉に引っかかっている。
取り出そうとしても無駄で、魚の小骨が引っかかったように違和感とちくりとした痛みがある。
これはなんだ?洗脳か?夢か?それとも現実か?
何か別の力が働いているのではないか?
そう考えても、一切それが出てくることはない、答えはない。
だって自分が目を逸らしているのだ、あるはずもない夢にすがって、この困惑にピリオドをつけようと、終わらせようとしている。
「あ、明日どんな顔で会えばいいの?わ、わかんない、何?」
「ね、寝たら忘れる?わからない」
自問自答を繰り返す、手繰り寄せようとする、だがわからない、いっさい分からない。
きっと夢だ、これは夢なんだ。
明日、何もかも嘘で、夢だって思わせて欲しい、そう願って、りりは眠りにつく
_今日は、考えすぎていつもより30分寝つくのが遅かった。
___
「…困惑させてしまいましたね。」
「はぁ…こんなことになるとは、私も思いませんでしたよ。 」
Sレイマリと名乗った人物は、そう言って机に置かれたもの_
“リィン・システム”を手に取った。
ダイヤのようだが、黒く輝くそれを持つと、夜の街へと足を踏み出す。
「…本来は、寝るべきですけど…そうすることができないんですよね…」
【呪いだ、呪いだ。】
【継承するな、今すぐ手放せ。】
【存在するな、消えてしまえ。】
頭の中で、声が響く。
どす黒い何かが混ざった、悪意ばかりが混ざった声。
ひどくノイズがかって、耳に嫌に残っては、今暫く反響する。
【償いだ、君のエゴの償い。】
「…………煩い声が、ずっと頭で響いてる。」
「怖い…怖いんだ。」
「…今日も、助けなきゃ…」
「人を…世界を…」
レイマリの目に光はない。
椎名とはあまりに違いすぎる、その眼が異質で、気持ち悪く思えて仕方がない。
後悔も、吐き気も、何もかも混ざっては、どす黒く変色した。
それは消えない火傷みたいに残っている。
「…」
レイマリは暗い部屋の中立ち上がり、ゆっくりと自室の扉を開けた
もっとも、この部屋はレイマリのものではなく、椎名のものなのだが。
「_いやでも、そう定義しなければ、私すら分からなくなりそうなんだ。」
レイマリはあまりに重い頭の、右の方を押さえながら、ゆっくりと階段を下りる。
「行かないと…」
「しいな…」
「ごめん、こんな身体にしてごめん…。」
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