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ある日曜日の朝のことだった。
「おお~!新技来た!マジで神!!」
家中に響き渡る大きな叫び声と、バタバタと床を叩きつける音で、来見伊吹は目を覚ました。
時刻は8時52分。ちょうど、妹のもかが魔法少女アニメ『めたもる☆める』を視聴している時間である。もかは、毎週このアニメを視聴しては、時折興奮しながらはしゃいでいる。多少はしゃいでいる程度の声であれば伊吹も慣れっこだったが、今日はいつにも増して騒がしい。伊吹は一言文句を言ってやろうと、まだ重たい身体を起こした。
リビングに降りると、もかは『めたもる☆める』に登場する妖精プリムのでかぬいぐるみを抱えながら、食い入るようにテレビを観ていた。とても集中していて、伊吹が来たことにも、気が付いていない。
「もか。おい、もか」
二回声を掛けたところで、もかはようやく気が付いた。
「あ、伊吹起きてたんだ。珍し」
伊吹は呑気な返事に苛立ち、少し嫌味っぽく返す。
「あぁ、さっきお前の大声で起こされたとこだよ。…全く、もうちょい静かに観れねぇのかお前は」
「しょうがないじゃん!だって今日新技お披露目回だったんだもん!あーマジで神回だったなぁ…!作画超ぬるぬるだったしめるときらりとらんぜが本当の意味で仲間になれたって感じがしたし…しかも来週プリム深堀回やるしもうテンション爆上がりだよねー!」
先ほどまでこちらが文句を言っていたはずなのに、気が付けば、もかは『めたもる☆める』の感想を語り出していた。こうなってしまっては、もう止まらない。
伊吹は、声を張り上げて妹を制止した。
「分かった!分かったから一旦黙れ!」
そして、とても端的にまとめた文句を、捲し立てるように言った。
「いいか?朝っぱらから大声で騒ぐな。そして人の話は最後まで聞け。俺が言いたいのはそれだけだ」
「はいはい、分かりましたよ~」
もかは、すごく面倒くさそうに返事をしてソファに座り、ため息混じりに呟く。
「あー、わたしのとこにも妖精降ってこないかなぁ…」
「降ってくる訳ねぇだろ」
伊吹がツッコミを入れたその時、キッチンから母親の呼ぶ声が聞こえた。
「伊吹~、もか~!ご飯よ~!あと、どっちかお父さん起こしてきてくれる~?」
「はーい!伊吹、お父さん起こしてきて。」
もかはそう言い残して、さっさと台所へと走って行った。
「あ、おい!…ったく……」
伊吹は、父親を起こしに渋々二階の寝室へと向かう。
「おーい、父さん!起きろ~!」
何も変わらない、平凡な日常。そこに、大きな変化が訪れることになるとは、誰も思ってもみなかった。