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災害特別調査報告書 No.7092-HX件名:シェツェ諸島 大規模火災及び住民消失事件
報告日:平成■年■月1日
作成:国際災害調査庁 第六分析局(災異班)
閲覧階層:制限C-04(公開抄録版)
■一、概要
■■■■年5月20日未明、南洋の孤島群であるシェツェ諸島にて、衛星による自動検知により不審な熱源と異常な光波放出が観測された。
当該時刻よりおよそ47分間、通信・監視網は完全沈黙状態に陥る。次回観測時には島全域が焦土と化し、住民213名が消息を絶っていた。
本報告書は事件の概要、島の歴史的背景、並びに関係者証言等を含めて編纂されたものである。
■二、地理的情報および歴史的背景
シェツェ諸島(Shezhe Archipelago)は赤道に近い南方域に位置し、外界との交通が極端に制限された島嶼群である。主島1つ、副島4つから構成され、いずれも断崖と密林、火山性地形に覆われる。島民による自給自足経済圏が成立しており、外部依存度は非常に低かった。
13世紀以前:交易記録なし。先住民の神話体系には「母なる島」や「潮を食らう座」が登場。
1802年:ヨーロッパ系探検隊による初入島報告。記録に「地形が変わる」「時間感覚が混乱する」との記載あり。
1911年:島民による“沈黙の儀礼”が記録される。内容不明。以降、島外への文化流出なし。
1979年:国家の保護下に入り、限定的な外部接触が許可されるが、宗教的理由により月に一度の補給船以外の定期航路は拒否された。
2001年:島の全域において精密な地図作成試みられるも、衛星画像と地上測量が一致せず、計画は中断された。
■三、火災発生及び消失事件の詳細
05:12 JST:気象衛星セレノ・VIIが諸島中央部に高熱源を観測。
05:13~05:19:島全域にわたって同心円状の熱放射が広がる。赤外線反応が過剰で、温度推定値は摂氏2,200度超。
05:20:全島より電磁波反応が消失。
06:04:衛星画像更新、島の地形に不自然な変動あり(詳細機密指定)。以後、周辺海域に生物反応ほぼ無し。
行方不明者:213名(確認済住民全数)
避難信号、通信発信、SOS等一切なし。最終の外部通信は5月19日午後17時45分(定時連絡・異常報告なし)。
検索隊による現地踏査では、建築物基礎以外の構造物は灰化、有機物の存在率ゼロ。
骨・血液・衣類・紙類・皮膚片、全て検出されず。あたかも“削ぎ取られたように消失”していたとの記録。
■四、証言・調査補足
インタビュー記録(抄)
名前非公開(元島民・女性・32歳)/退島から5年経過
「あそこは……歩いていたことがある。誰も信じないけど。森の奥に入った弟が“地面に飲まれたって、私は本当に見たの」
「でも言っちゃいけなかった。島の掟で。あの島は人を許すけど、怒らせると全部奪っていくの」
「火なんて出るはずない。水が勝ってる土地だったから。……あれはきっと怒ったんだと思う」
外部調査員M氏(匿名希望)/第六班・植物分析担当
「焼け跡にね、“焼け焦げてない葉”があったんですよ。しかも中央に寄るほど青々としてた」
「逆転してるんです、自然の摂理が。あそこは焼かれて死んだんじゃない。変わってしまった。そういう印象を受けました」
■五、分析と仮説(公式見解)
調査班では、次の要因をもって「地下性爆裂的火山現象及びその後の広域地殻性揮発ガスの急速燃焼」と結論づけている。
1)中央部地下からのガス蓄積による熱圧集中現象
2)表層地殻の構造的歪みによる圧縮爆発
3)高温燃焼ガスによる酸化的消滅
4)全島の構造的沈下(※地形写真の改竄及び加工指示あり)
※なお、上記は科学的証明に乏しいが、事象の公的記録としては最も安定した言説であるため、対外的に採用。
■六、今後の方針
【補遺:機密A-7 抜粋】
「島の形が、わずかに動いていたように見える」
「衛星画像の連続比較にて、諸島全体が‘収束’していく様子が確認された」
「中心部の熱源が拍動していたという解析も存在」
「だが、それは自然現象ではない――断定できない、というだけだ」
記録終了。以後の閲覧は許可階層申請の上でのみ可。