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非現実的な空間で、知らない少年と向き合っている。
「名前は? 何でこんなとこにいるんだ? いやそもそもここはどこ」
「ちょっ。待って待って、ひとつずつ答えるから」
手で制し、少年は息をついた。
「俺は間違えてたまたま入ってきちゃったんだ。でもあんまり帰る気しないから、もうずっとここにいるよ。ここは……交差点とかにだけ現れる、異世界。とか言った方が分かりやすいかな」
彼は軽く肩を竦めると、おどけた調子で笑った。
異世界なんて言葉久しぶりに聞いた。確かに例えとしては分かりやすいが、子どもに戻ったような気分だ。
訊きたい事がありすぎて言葉がすんなり出てこない。清心に、少年は笑顔で手を振った。
「ところでお兄さん、どこかに急いでたんでしょ。だから赤信号につっこんで車に轢かれそうになった……。でも安心して。ここは時間が止まってるから、今は十時十分で合ってるよ」
「え」
「はは、じゃあね。もう来たらだめだよ」
軽く肩を押される。
次の瞬間、また騒々しい音と光に包まれた。
「うわっ!」
目の前に広がったのは見慣れた景色。たくさんの人と、車。気付けば交差点の前で、信号待ちをしている状態だった。
突然大声を上げた清心を、周りは不審な目付きで見ている。
信じられない出来事だ。
戻ってきた。たった今変な場所にいたのに……!
時間的には三分ぐらいのもの。しかし確かに、自分はここではないどこかに立っていた。