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「よし……次こそ」
僕は、いつものカフェでコーヒーを飲みながら、静かに決意を固めた。昨日は言えなかった。でも、今度こそ。次に会ったときこそ、刹那に気持ちを伝える。
けれど――。
翌日、渉はいつもの場所で待っていた。しかし、刹那は来なかった。
「……今日は、来ないのか?」
カフェのドアが開くたびに顔を上げる。でも、入ってくるのは見知らぬ人ばかりだった。
たまたま用事があるのかもしれない。そんなふうに自分を納得させようとしたが、不安は拭えなかった。
それから数日経っても、刹那は現れなかった。
不安が、焦りに変わる。
(何かあったんじゃないか)
渉はスマホを取り出して、刹那からのメッセージがないか確認する。けれど、そもそも連絡先を交換していないことに気づいて、思わず息を呑んだ。
「……バカか、僕は」
会うたびに自然と隣にいて、会話をして、名前を呼び合って。そんな時間が、ずっと続くと思っていた。だから、連絡先を聞く必要すら考えなかった。
「……どこにいるんだよ」
カフェを出て、街を歩く。これまで刹那と一緒に歩いた道を何度も辿る。昼間の賑やかな街のはずなのに、視界が霞んで見えた。
「あのさ……」
気づけば、拓海に相談していた。
拓海は、少し考えた後、珍しく真剣な顔で答えた。
「……もしかして、もう会えないんじゃないか?」
「そんなこと、あるわけ…」
言いかけた言葉が喉に詰まる。
爪が食い込むくらい手を強く握っていた。
(……まさか)
嫌な予感が胸を締めつける。
このまま、刹那に会えなくなるなんて――そんなこと、認めたくなかった。