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ふと目を開けると、見慣れない白い天井が見えた。
逝き損ねちゃったかも、なんて。少しがっかりしながら辺りを見回して…目に飛び込んできたのは鮮やかなピンク。
目元を真っ赤に染めた泣き腫らした顔で、それでもどこか穏やかに俺を見つめてた。
「…さく、ま…くん…?」
「おはよ、蓮…」
「…夢じゃ、なかったんだ…」
ぼんやりとだけど覚えてる。倒れてる俺の側で、泣きながら訴えかけてくる佐久間くんの姿。
『蓮がいないと俺が生きていけない…っ!!』なんて、引き留める為の嘘だとは分かってても嬉しかった。
嬉しい気持ちのまま消えたかったなぁ…。
「うん…。合鍵勝手に使った、ごめん…」
「ううん、心配して来てくれたんでしょ…? ごめんね」
「蓮が謝ることなんてないだろ」
「自己管理出来てなかったのは、自分の責任だから…佐久間くんの手を煩わせてごめんね…?」
「そうじゃ、ないだろ…」
「佐久間くん…?」
穏やかに話していた佐久間くんの様子が変わる。
悲しそうに顔を歪めたと思ったら、前触れもなくその目からぼろぼろと涙が溢れ始めた。
「飯は食わない、睡眠も取らない。おまけに水分補給だって最低限。自己管理以前の問題だからな…っ!」
「…そう、だね」
「…倒れてる蓮を見つけた時、すごい怖かった。蓮がいなくなっちゃうって、そう、思って…っ」
「…ごめん」
謝罪の言葉だけを繰り返す俺を、佐久間くんの大きな目がきつく睨み付ける。
「……いなくなるつもり、少しあっただろ。蓮は覚えてないかもしれないけど、俺の顔見て『最後』って言ってた。あれ、死ぬの覚悟してなきゃ出てこないだろ」
「……っ、ごめん…」
ああ、やっぱり佐久間くんも気付いてたんだ。
だからあれだけ心配して、何度も何度も声をかけてくれた。
でもそれは俺の欲しいものじゃなかったから。だから一度も受け取らなかった。
少しの罪悪感に目を伏せると、佐久間くんの口から驚くべき言葉が溢れる。
「…まだいなくなりたいなら、そうしてもいいよ。でももし、蓮が死んだら…その後すぐ俺も死ぬから」
「…なに、言って…」
「蓮がいない世界で生きたくない。だからもし死ぬなら、俺も連れてって」
冗談でしょって言いたかった。でも佐久間くんの目は真剣で、絶対譲らないって顔をしてる。
俺の好きな、佐久間くんの頑固さ。
だからといって、俺の執着ともいえる重さに付き合わせるわけにはいかない。
「そんなこと、出来るわけないだろ…っ」
「だったら、自分でやる。頑張って付いていくから。だから…置いていかないで…」
「佐久間くんは、俺の分まで生きてよ…」
「やだ。蓮がいないのに、無理…っ」
最後にはまるで迷子の子どもみたいな顔をして。駄々をこねるみたいに言ってぐっと唇を噛み締めてる。
どうして、そんなこと言うの。
俺が俺の形が要らなくなったのは、佐久間くんが側からいなくなったからなんだよ…っ?!
「……だったら何で、俺の手を離したの…っ?」
本当はこんなこと言うつもりじゃなかった。佐久間くんを責めたかったわけじゃない。
だけど、そんな風に言うならどうして俺を愛し続けてくれなかったの。
不意に、佐久間くんの瞳の色が変わった。
いつも明るくきらきら輝いてる目から光が消えて、昏い色を帯びながら伏せられる。
その色は、鏡越しに見る俺の目の昏さとよく似ていた。
「…怖かった。きっと蓮は、これからもっと有名になって人気だってすごいことになる。そうなった時、変わらずに好きでいて貰える自信がなかった…」
「…それが、本当の理由…?」
「蓮の為って言ったけど、本当は…自分が怖かっただけなんだ…。ごめんな、蓮…弱くてごめん…っ」
昏い色の目から溢れ落ちる涙は、それでもやっぱり綺麗で。触れたくて堪らなくなった。
そっとその髪に手を伸ばすと、佐久間くんがようやく顔を上げる。
それは、エゴとか自己保身と呼べるのかもしれない。
でも言い換えてみれば、俺を失いたくないっていう独占欲という名前の愛情だ。
ねえ、佐久間くん。そんなどろどろしてて綺麗な想い、どうして見せてくれなかったの?
「佐久間くん、俺のこと好き…?」
「ん、好き…蓮と心中したいくらいには」
即答された内容の不穏さに思わず吹き出す。
俺に負けず劣らず重量級だ。
「ふはっ…思ってたより全然重かった。俺も好きだよ。振られたら生きる気力無くなっちゃうくらいには」
「う…ごめん…」
「謝らなくていいよ。それより、もっとこっち来て」
精一杯片腕を伸ばすと、求めに応じて佐久間くんも腕を伸ばして首筋にぎゅっと抱きついてくれた。
そっとその背中を愛おしさを込めて撫でる。
「また俺の側にいてくれる…? 今度はもう二度と離してあげられないと思うけど…いい?」
「ん、離さないで…? 蓮がどんだけ想ってくれてたか分かったから、俺だってもう絶対離れない」
そう言って涙が残る俺の目元に、佐久間くんはちゅっと唇を落とした。
それも嬉しいけど、それだけじゃ足りない。
「そこじゃないよ。こっち…」
頬に手を添えて唇を重ねる。軽く触れて一度離れると、頬を赤く染めて微笑む佐久間くんがいた。
ああ、愛おしくて堪らない。
俺がこの世で持てるだけの恋い慕う気持ち、全部開け渡しても足りないくらい。
どちらからともなく再び唇が触れ合った。
「ん…っ、蓮、好き…」
「愛してるよ、大介…」
後に大介は、間違った選択を『一生後悔し続ける』と言った。
俺は、それが嬉しい。
大介に思い悩んで欲しくはないけど、それでも、その後悔は重くて昏くて深い俺への想いから生まれたものだから。
だから、その後悔ごと俺は大介を抱きしめて愛し続けるよ。
重量級の愛情同士、きっとお似合いだよね。
めめ視点でのお話でした
仰りたいことは分かります、はい。このめめさく、重ぉっ! どっちもやばい重さ…!!
『ねえ、佐久間くん。そんなどろどろしてて綺麗な想い、どうして見せてくれなかったの?』
の一文が出てきた時には、書いてる本人が「ひぇ…っ」となりましたw
ある意味共依存とか執着に近いものではあると思いますが。それがこの2人にとっての愛であり、側にいることによって何者にも負けないくらい強くあれるならいい関係なんだろうなと思います
これこそ割れ鍋に閉じ蓋。きっと他の人じゃ潰されちゃうw
こんな話を書いてる間にまためめさくで大変な祭りが起きましたね!
今度はあのくらい明るくてハッピーな話を書きたいですww
コメント
4件
実際、自分に振りかかったらいやだけど…共依存ってある意味、究極の愛よね(ΦωΦ)ふふ 壁になって、そんな2人を見届けたいわ って、コメント増やしちゃってごめんなさいね💦
