テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
「ルビー、こっち終わった。そっちは?」
「まだもうちょっと。ジェット、応援来て!」
「やべ、手ごわいな…。誰か暇な奴いない?」
「無理だよトパーズ。特大雷でも落とせ」
「何言ってんだよサファイア、そっちこそ早くしろ」
などと騒がしいみんなの声が、インカムから聞こえてくる。
「ナイトもなんか武器持って戻ってきてよ!」
「無理、俺もう車戻った」
というのは嘘で、大我は建物の陰からみんなの奮闘を見守っている。今日は5人で対処できそうだと踏み、戦闘には加わっていない。初動の役割を担い、相手を油断させるのが仕事だからだ。
大我の目線の先にはジェシーがいる。まるで火炎放射器のように自在に炎を出している。
少し離れたところでは、高地が雷を落としまくり、樹が氷で凍らせまくっている。
慎太郎は毒をつけた剣で戦っている。北斗が持つのは銃のみ。
まさに大混戦だ。
彼らが狙うのは、その名も「フェイラー」。
姿形は人間と同じだが、鋭い牙や爪を持つ。そして人間たちを敵だと認識して攻撃する。
対して6人も含む魔力を持つ僅かな人間は、「ファンタジア」と呼ばれる。
だがファンタジアは攻撃はしない。高い魔法の能力を備えた彼らを、国家は国内に潜むフェイラーを滅ぼすのを目的に集めた。
今日もストーンズは敵がいるとの要請を受け、倒しにやってきた。
「ふう…疲れたぁ」
「けっこう強かったし、数多かったもんね」
「俺めっちゃ頑張ってたんだけど。ジェット、闇使ってよ!」
「ごめんって。でもこないだ2回使ったもん」
「別に制限とかないでしょ」
仕事を終え帰路についた6人は、口々にぼやく。
「ちょっとルビー、火つけて」
高地がポケットから煙草の箱を取り出し、ジェシーに言う。
「めんどくせーな」
とつぶやきながら指先に小さくろうそくのような火を灯す。
「待って、俺も」と運転席の樹も便乗し、煙草につける。
ふっと息を吹きかけて、ジェシーは火を消した。
「っていうか、最近敵多くね?」
慎太郎が誰にともなく話す。
「だよな。なんでかは知らないけど活発になってるんだろうな」
「面倒だよ、俺らの仕事が増えるだけなのに」
「人員増やしてほしいよね」
「しょうがないよ、めちゃくちゃ少ないんだから」
そうだよな、とみんなは吐息をつく。
6人が共同生活している家に帰ると、それぞれ思い思いにくつろぎだす。
「なあみんな、飯何がいい?」
料理担当の北斗がキッチンから呼びかける。ただ、返ってきたのは2、3人の「何でもいい」という声。
「だからぁ、それがめんどいんだよ。お前ら5人とも闇に葬ろうか?」
「やめろよ、こえーよ!」
ジェシーが叫ぶ。
「そんな力いっぺんに出せないでしょ」と大我。
「そっか」
北斗はつぶやき、料理に向き直った。
リビングでテレビを見ている5人に向かって、北斗が呼ぶ。
「おーい、飯できたけど」
嬉しそうに5人は集まる。今晩のメニューはカレーだ。
「いただきまーす」
美味い、辛い、などとバラバラに喋っていると、思い出したように高地が声を上げた。
「あっそうだ、さっき俺のとこに連絡きたんだけど。隣町で始末してたファンタジアが一人やられたんだって」
えっ、と驚きの表情になる。
「だから一層気をつけろって」
「怖いね…」
「隣町かあ。こっちまで来ないといいけど」
たまにフェイラーが集団で襲い掛かってくると、さすがのファンタジアも太刀打ちできないこともあるそう。
と、
「あ、サファ…」
怯えたような目を大我が向けた。
見ると、樹の持つスプーンがみるみるうちに凍っていく。「うわっ、やべ!」
慌てて手を離し、拳を握って力を弱める。
「ごめん、集中切らしちゃってつい…」
もう、とジェシーが立ち上がる。
「貸して。ちょっと溶かすから」
手袋を外して指先に少し大きめの炎を出すと、じんわりとスプーンの氷が解けていく。
「次やったら手袋な」
高地が言った。わかった、と樹は申し訳なさそうに答える。
「手出して。あっためてあげる」
常に温かいジェシーの手が、冷たい樹の手を包む。
「うわあお前の手冷てーな。俺の炎が出なくなりそうだよ」
「…なんかごめん」
「ヤバっ、スマホの充電あと5%しかない。忘れてた」
食事のあと、焦った声を出したのは大我だ。
「ちょっとトパーズ、電気ちょうだい」
テレビを見ていた高地は、面倒臭げな視線を投げる。
「えー」
お願い、と手を合わせる。
渋々立ち上がり、繋げた充電プラグの先に触れて力を込めた。その瞬間、小さく火花が散る。
「お、100%。サンキュー」
「次お返しもらうまで覚えとくからな」
「わかったわかった」
こんなふうにお互いで補い合うのが、彼らの日常。
続く
コメント
1件
やっぱりストーリーも最高です! 続き楽しみに待ってます︎!🥺