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│第9章 決定的な誤解 │
《勝手に立ち入った理由を、説明してもらおうか》
警察官の声は、低く、冷たかった。
「……すみません」
吉田が一歩前に出る。
「でも、ここを調べる必要があったんです。」
《必要?》
警察官は眉をひそめた。
「事件当日の通話が、この地下通路から発信された可能性がある」
一瞬、警察官の表情が変わる。
《…その話は、誰から聞いた?》
「僕たちで推測しました」
吉田は正直に答えた。
警察官はしばらく沈黙した。
《とりあえず、全員署に来てもらう》
警察署に行き、取調室は五人それぞれに分けられた。
佐野は、無機質な机の前に座っていた。
《鍵の件》
刑事が言う。
《説明してもらおう》
「……覚えてない」
佐野は答えた。
《覚えてないで済むと思うか? 》
佐野は、何も言えなかった。
別の部屋にいる曽野は、スマホを机に置かれていた。
《この写真…》
刑事が言う。
《管理室前、撮った覚え…ないんですよね?》
「はい…」
《位置情報が、ロビー中央になっている》
「…はい」
《加工の可能性がある》
曽野の喉が鳴る。
《誰かに、触られた可能性は?》
「……分かりません、」
さらに別室。
塩﨑は、腕を組んだまま座っていた。
《足跡の件》
刑事が言う。
《君たちしか入っていない部屋だ》
「でも、、何も持ち出してへん」
《持ち出したかどうかは、問題じゃない》
刑事は、淡々としていた。
そして、吉田の部屋。
《君が、一番冷静だ》
刑事が言った。
《だから、一番疑われやすい》
「……そうですか」
《事件を外部犯に誘導している。論理で、仲間を安心させている。それは、犯人の行動に似ている》
吉田は、初めて視線を落とした。
最後に 山中がいる部屋。
《君は》
刑事が言う。
《不思議なくらい、何も出てこない》
「……はい」
《鍵も、写真も、足跡も… なのに、地下通路を知っていた。なぜ?》
「図面を見たからです」
《いつ?》
「最初の日。」
刑事は、数秒沈黙した。
《…それ以上、言うことは?》
「ありません」
数時間後、五人は同じ部屋に集められた。
《現時点で》
刑事が言う。
《最も疑わしいのは――》
一瞬、 空気が止まる。
《佐野勇斗》
佐野の胸が、 強く鳴った。
《鍵を所持____》
《記憶の欠落____》
《管理室前を 通過____》
《…偶然が、重なりすぎている、、》
曽野が、思わず立ち上がる。
「待ってください、! まだ、 決めつける段階ちゃうやろ」
《意見は後で》
刑事は遮った。
宿に戻ったあと、佐野が言った。
「……ごめん。 俺が一番足引っ張ってる…」
「ちゃうやろ」
塩﨑が即座に言う。
「佐野が犯人なら、こんな回りくどいことせえへん」
「でも、証拠は俺に集まってる」
「それが、おかしいねん」
吉田が静かに言った。
「“集まりすぎてる…”」
全員が、吉田を見る。
「犯人が勇斗なら、ここまで露骨な誘導はしない。こんなんしてたらただのアホ」
「……つまり?」
曽野が聞く。
「勇斗を犯人に見せたい誰かがいる」
その言葉が、部屋に落ちた。
その夜、 山中は 一人でメモを見ていた。
地下通路
通話
鍵
写真
足跡
そして____
“十分間の空白”
「……やっぱり」
小さくそう呟いた。