頭の中でだんだんと、嫌な予測が浮かび上がってくる。信じたくない…、でもそう考えると辻褄が合う…。
「失礼します!!」
私は居ても立っても居られなくなり、そう言ってその部屋から飛び出した。
彼は私を引き止めることはしなかった。
私は、少女の部屋へ急いだ。襖を勢いよく開けると、そこに彼女はいなかった…。
やはり、予測は当たってしまった…。彼女は、巫女だったのだ。彼女が巫女であれば、彼女が家を抜け出して来たのは巫女としての人生が嫌になったとからであれば理由としては十分だ。そして、巫女は長くは生きられないことを考慮して、大切な人を増やさないように、自分が親だと明かしていない場合も、彼ならありえる。だとしたら、彼女が「両親はいない」と言ったのも納得がいく…。
彼女は私の妹であり、巫女だった。
今、彼女がここにいないことが何よりの証拠だ。先程読んだ書物に書いてあった。巫女を神に捧げる時は、最も月が近くに来る部屋を使う。
私は月明かりを頼りに、その部屋へ向かった。
いくつもの部屋を周り、一番月が近いであろう部屋に辿り着いた。ゆっくりと襖を開けると、そこには月光に照らされた美しい少女が座っていた。
「…おや、おねえさん。よくここが分かったね。」
彼女は笑っていた。落ち着いたように、悟ったように…。
手には銀で作られたと思われる盃を持っていた。その盃には水のようなものが入っていて、内側は微かに赤っぽく見えた。
「………。」
私は何を言ったら良いのか分からず、言葉が出てこなかった。私が何を言おうと、全てを受け入れてしまった今の彼女には届かないと、分かってしまったのだ。
「ねえ、おねえさん。」
彼女は私に話しかけると、盃の中に入っている水らしきものを全て飲み干して、こう言った。
「明日はきっと…、雨が降るよ…。」
コメント
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難しいし複雑に絡み合ってて文章作るのすっごく大変そうなのに、最終章まで完走しましたね、、本当にお疲れ様です……!✨ 明日はきっと、雨が降るよ…でめっちゃ背中と首がふわァァってなりました。←は? 少女の正体が分かっても真実に辿り着いても、悲しい、、😭 神作でした…………!! 素敵な作品ありがとうございましたッッ(ˊo̶̶̷ᴗo̶̶̷`)੭✧✨✨✨