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#記憶喪失
視点:須藤亜樹
家を出てから何時間経った?もう数えてもいない、というより最初からわからない。取り敢えず陽聡の家に行こう。事情は…話さなくてもわかってくれるだろう。
数十分後—ピーンポーン、と間の抜けた音が家の前で広がる。ガチャリ、
「おう、亜樹、どうした?こんな時間に?」
「いや、少し今日泊まらせてくんねぇか?」
「いきなりか?」
「あぁ、すまねぇ、頼む!」
「まぁいいけどよ、取り敢えず上がれ。」
そう促され僕は三和土三和土 を上がる。ぎしっと音が鳴ったが誰も気にしない。むしろその音が静寂を包み込むようだった。
「ここ座れ。」
「ありがとう。」
それだけ言い陽聡は台所へ行き、二つのガラスコップに麦茶を注いで来た。
「ほらよ。」
「あぁ、ごめん、ありがとう。」
そう言い少しだけ麦茶を口にする。爽やかな香りが鼻を通っていった。
「で?いきなりなんで泊まりたいって?母さんはいないからいいけどよ。」
「ちょっと親父と喧嘩しちまってさ。」
「…そうか。」
陽聡がなにか言葉を漏らしかけたがすぐに喉の奥に押し込んだ。
「じゃあ今日はここで寝ろ。」
そう指示すると少し広いフローリングの部屋を指さされる。
「ありがとな、いきなり来たってのに。」
「お前じゃなきゃ泊めてねぇよ。」
「嬉しいこと言ってくれんじゃねぇか」
そう言い僕はニヤニヤしながら陽聡を眺める。
「なんだよ、ニヤニヤして、気持ち悪りぃな。」
「ひっど」
そう口では言ったものの2人とも自然と笑っていた。
「明日も学校かー、まぁあと少しで冬休みだからいいけどよぉ」
「そうだな。陽聡、明日一緒に行かねぇか?1人で登校ってのはあれだしよ。」
「ん?あぁ別いいけどよ、委員長は?」
そう言われ、少し胸の奥がちくっとしたのは気のせいだろう。
「あぁ、優里は当分休みだってよ。」
「委員長が?珍しいな。」
だが陽聡はすぐに興味を無くしたのか自室へ足を向けた。
「じゃあな、おやすみ。布団は押入れに入ってる。」
「おうよ、おやすみ。」
そう言い各々の布団に潜り込んだ。だが僕の頭にはこれからのこと、クソ野郎の殺し方、陽聡への説明…最後はしなくてもいいか。そんな結論へ辿り着き、浅い眠りについた。
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