テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
輝く瞳が虚ろに変わっていったのはいつだったか。
いつしかその頬に痛々しく貼られたガーゼに違和感を持つようになったのはいつだったか。その細くなった手首を掴んだのはいつだったか。
焦った顔をして焦燥にまみれて歪み、涙をこらえたような顔を何回見ただろう。
いっその事問いただせばよかったのに。日から日を増して増えていく痣に、壊れた顔で「大丈夫!」なんて笑ったお前に言葉を飲み込んだ。
けど、あの日、あの時もっと早くに止めればよかったんだ。
言えばよかった、最低なヤツになったとしても。二度とお前が僕に笑いかけなくなって、相棒と呼ばず隣に立たなかったとしても。泣いて責められたとしても。
「俺ならそんなことしない、傷つけるなんてこと絶対にしない」
そんなモノ愛とは呼べない。
「ひば、どうしたの寝れない?」
窓を開けてそのまま窓枠に寄りかかって、足をベランダに放り出した雲雀の肩に厚めのブランケットをかける。
蜂蜜を多めに入れた昔雲雀が作ってくれた優しい味のホットミルク。雲雀程丁寧じゃないし美味しいかも分からないホットミルクの入ったマグカップを持って隣に座る。
一口、二口チビりと飲み込んだ雲雀はほんの少し幸せそうにはにかむ。それからその手からマグカップを受けとり近くに置く。
冷えた手は少し熱を帯びたようで、ほんの少し息を吐き出す。
「…ゆめ、みたの…へんなゆめなんだ、あいされてるゆめ」
「うん」
「おれが、うたってそしたらみんながわらってくれて…かぎょうも、かぞくともうまくいってる」
皆からいっぱい愛を貰う夢。
ふにゃりと笑ってそう言った雲雀は空っぽな目で星へ手を伸ばす。微睡み始めたはずの瞳も声も、どこか揺れて柔らかい。
伸ばされたその手に被せるように手を握って片手で抱き寄せる。
背は高いくせに僕らの中で一番軽く細い体。ポスリと胸に収まった雲雀は、ゆったりと目を閉じてそれからクスリと笑ってどこか遠くを見つめる。
「…そーだ、あと、あとね…」
「うん、なぁに」
「かなとにも、あきらにも、せらおにも…だぁれにもめいわくかけんでいるの」
酷く幸せそうにそれでいて、悲しそうに笑う雲雀。じわりと歪む視界を隠すように雲雀を抱きしめる力をほんの少し強める。
壊れないように、優しく、優しいけどもう二度と離さないように。
「……夢のひばは幸せ?」
「…ん、…すごく、しあ、わせ、ぁった」
限界のように瞼を閉じる雲雀。すぅすぅと穏やかな寝息を立てて寝てる姿は昔のままなのに。
細い体を起こさないように強く、抱きしめる。
僕らのことさえ拒否して、夢と現実の境もつかなくなって…ボロボロと泣きじゃっくって、食事も睡眠もさえまともに取れず、吐いて、倒れて、熱を出して、錯乱して、挙句自分を傷つけたあの頃に戻れなんて言わない。
ただ、ただ…
「夢なんかじゃないんだよ、ひば…っ」
雲雀。ねぇ、
「っ…、」
お前のことを傷つけ続けるアイツの事なんて、忘れてさ。こっち見てよ、また笑ってまた馬鹿やろう?
「ひば、雲雀…愛してるよ」
もう、二度と俺はお前の手を離さないから。
だから、
「もう、大丈夫だよ…雲雀」