「ふふふ、類、前より笑うようになったわね」
学校に行こうと朝食をとっていた時だった。ふと母さんがそう呟いた。
🎈「そうかな?」
「うん、明らかに昔よりもニコニコしてる」
転校してから1週間経つ。毎日が楽しくて楽しくて。それが自然と顔に出ていたのだ。
🎈「…楽しい…かな、」
「そう。…ってせっかく早く起きたのに遅れちゃうわよ。」
もうこんな時間か。久しぶりに早く起きれたし、もう出ようと思ってたのに!
🎈「んー!行ってきます!」
「気をつけてねー」
玄関を勢いよく開け、学校へと急いだ。
スマホを見て時間を確認する。まだまだ余裕かなぁ。そういえば今日は天馬くん達のショーユニット見に行くんだっけ。
🎈「はぁ、どうやって断ろう」
半分ノリで言ったものだから、どう断るべきか悩んでいた。正直に言うべきか、。だけど、あんなに勧誘されてしまったし…今更断るのもなぁ…。
🎈「って噂をすれば…」
🌟「おぉ!寧々ではないか!」
🤖「げ」
🌟「げとはなんだ!!」
騒がしい。言ってしまえばそうだけど僕はこの空間が1番好きだ。
🎈「おはよう、天馬くん、寧々」
🌟「は!!、おはようございます!!」
🤖「うるさ…おはよ」
🎈「今日も朝から元気だね〜」
🌟「そ、そんなことないですよ…///」
🤖「はいはい、朝から惚気ないで」
🌟「なんだと!?」
🎈「あはは笑笑」
やっぱり好きだなぁ。不思議と居心地の良さを感じていた。このなんとも言えない距離感に信頼関係。
🤖「今日は類早いじゃん」
🎈「たまたま早く起きれてね」
🌟「さ、流石です!!」
🤖「うわ、全肯定bot…」
🎈「こんな騒がしい朝もいいかなぁってね」
🌟「そうですね!、ボクも嬉しいです!」
僕には勿体ないぐらいだ。
🌟「あ!先輩、昼休み暇ですか? 」
🎈「特に何もないけど…」
🤖「ショーユニット組むんだったらもう1人紹介したい子がいてね。その子が昼休みにくるからどうかなって。」
🌟「全て言われてしまった…」
🎈「それなら問題ないよ」
問題ないじゃない!!断るんだろう!?!?流れでそのままいってしまいそうだ。
🎈「あー、その話なんだけど…」
キーンコーンカーンコーン。
🌟「な、なに!?」
🤖「えぇ、嘘でしょ、間に合わない」
🌟「走るか!」
またタイミングよく…。昼休みに伝えるしかないか。それよりも間に合わない!!
この後、5分遅刻したのはまた別の話。
退屈になりつつある授業を終え、昼休み。もう見なれてしまえば普通の日常となんら変わりがない。
🎈「飽きちゃったなぁ」
飽きもくるわけで…。そんなこと言ったら、ここにいるみんなそうだけどね。
🎈「てか、どこに集まるんだろう…」
昼休み集まると聞いたものの肝心な場所を聞いてなかった。重要な部分を…。
「なぁ、聞いたか?また宮女の奴が来てるらしいぞ」
「えー、あのピンクの子でしょ?」
🎈「ん、宮女?」
「ショー関連でうちの学校にキャストいるからなんだとか…」
🎈「その話詳しく聞かせてくれないかい?」
おやおや、今日は僕ツイてるみたいだね。
話を聞く限りそのキャスト達は屋上によく集まっているらしい。屋上。やっぱりか。
🤖「ん、類遅い」
🎈「いやいや、場所が分からなくってね 」
🌟「は!すみません、伝えそびれてました」
🎈「大丈夫だよ、こうして来れたんだし」
情報もゲットできたし一石二鳥といったところかな。まさかもう1人は宮女の1年生だなんて。それに聞いた話では財閥のお嬢様とか。厄介なことに巻き込まれなきゃ良いけど。
🎈「それでもう1人の子は…」
?「あたしだよ?」
🎈「…ッッ!?!?」
いやどころからでてきた!?。真後ろには誰もいなかったはずだけど!?
ピンク色の髪をした少女がきょとんとして、こちらを見ている。まさに興味津々。
🎈「え、えっと…」
?「あなたが神代類くん?」
🎈「へ?」
🍬「あたし、鳳えむって言います!司くんや寧々ちゃんからはお話聞いてま〜す!」
天馬くんよりもキラキラした目。それにこのはしゃぎよう。中学生みたいだ。
🍬「一緒にショーしてくれるんですよね?」
🎈「あ、その話なんだけど…」
🍬「えぇ、、、?」
言わなきゃ。
🎈「僕はショー自体関わりたくないっていうか…。その…。」
🍬「えぇ、一緒にやってくれないの??」
🎈「ぇ」
🍬「みんなでするの楽しいよ??」
🎈「ぅ」
🤖「あ、類がおされてる」
🌟「えむの勧誘方法は誰も断れんからな」
この方法は。天馬くんが言っていた”えむ”ってこの子だったのか。やっぱり、断りにくい。天馬くんとはまた別の破壊力。
🍬「せんぱ〜い(泣)」
🎈「わ、わかった、わかったよ」
🤖「あーらら」
まさか2度同じ手を食らうとは。流石に対策不足と言ったところかな。
🍬「やったぁぁあ✨️✨️✨️」
🎈「それより鳳さんは…」
🍬「えむでいいですよ!私も類くんって呼びますし!」
🎈「じゃ、じゃあ、えむくんは…」
🌟「な、なにぃ!?!?」
🤖「まーた、先越されてる」
鳳って嫌な予感するな。信じてなかったけどほんとに財閥の子供???
🎈「鳳財閥の…」
🍬「そーです!」
🎈「じゃあ、フェニックスワンダーランドのショーキャストっていうのも…?」
🍬「あたし達のことです!知っててくれてるんですね✨️✨️✨️」
🎈「いや、小耳にはさんで…」
まさかのまさかすぎる。もしかしたらこの3人はとてつもなく凄い人達なのでは??
🍬「よかった〜。丁度えんしゅつか?不足だったので!」
🎈「演出家かい?、僕に務まるかな、」
🌟「務まると思います!絶対!」
🎈「ほ、ほんとに?」
🌟「はい!」
そんな自信満々に言われてしまえば不思議と自信は湧くもので。やってみようかな。
🍬「でも、どうしてショーに関わりたくないんですか? 」
🤖「ちょ、えむ!」
気になる…よね。寧々がスっとえむくんの口を覆う。
🎈「別に構わないさ。大した理由なんてないし。」
🤖「でも…」
🎈「知りたいかい?えむくん、」
🍬「は、はい!!」
話せば長くなるんだよね。こればっかりは。だけど、折々で説明させてもらおうかな。あまり思い出したくないし。
🎈「ま、要約するんであれば僕は演出を人につけるのに抵抗がある…かな?」
🍬「抵抗…??」
🎈「僕もここにいるみんなはそうだけどショーで誰かを笑顔にするのが好きだろう?」
ショーを行ったあとの見ている人たちの顔。あれは見ているだけでこちらも笑顔になれる。歓声があがって幕が下りても拍手は鳴り止まない。何度想像しただろうか。
🎈「幼い頃は確実に好きだったし、ショー以外楽しいと思えるものは一切なかった。それほど僕の中心的だった。だけど…」
あの時だけは違った。演出は認められることはなく、失敗に終わった。それも大失敗。
🎈「あれは中3の夏ぐらいかな。
1つのミスで失敗してしまってね。」
それがただの失敗で終わればよかったのに。
🎈「1人の子を…植物状態にしてしまったんだ。」
🌟「は…」
🍬「え、」
🤖「…..。」
🎈「そこから演出をつけるどころか人と関わるのも怖くってね。」
取り返しのつかないことをした。その人の人生そのものを奪ってしまった。そこからは何も手がつけられなかった。