コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
人々の暮らしは、如何なる事象が発生しようとも、生命がある限り終わることはない。内閣は、以下の事項を速やかに行うものとする。
東京ジェノサイドに関する特別チームの結成。
東京ジェノサイドに関する所在不明者家族相談窓口を、各都道府県に設置。
東京ジェノサイドに関する行動制限の解除。
東京ジェノサイドに関する報道協定の解除。
東京ジェノサイドに関する宅地物件、保険、銀行取引等、消費者相談窓口を開設。
東京ジェノサイドに伴う、火災による被害の全容把握。
東京ジェノサイドに伴う火災による被災者の救済。
東京ジェノサイド究明にあたり、内閣府直轄の特別捜査機動部隊を新設する。本部長は内閣総理大臣とする。
東京区足立 葉山会系松下組事務所
指定暴力団事務所のガサ入れが初仕事となった、元公安調査庁・第二部部長の柿崎芳正は、飛び交う怒号の中で、同じく特捜機動隊へと引き抜かれた大野誠治の質問責めにあっていた。
小柄で薄い髪と丸眼鏡。
柿崎よりもひと回り歳下の大野は元税務官で、何故自分が特捜へ配属になったのか未だに判らないという。
銃を持つのが初めての大野は、懐に忍ばせたS&W M3913レディースミスをしきりに触っていた。
柿崎は言った。
「おい、気持ちはわかるけどそんなに触んなよ。バレバレじゃねえか」
「あ、ハイ、しかしどうも落ち着かなくて。それに何故国税局の自分なんかがこんな処にいるんでしょうか?」
「こっちが聞きたいよ」
「はあ…」
その時。ひとりの若い組員が大野に詰め寄りながら怒号をあげた。
直立のまま動けないでいる大野の前に、柿崎はとっさに割って入った。
「オイ!テメエら令状無しとはどういうこった!?これで何にも出なかったらどう落とし前つけてくれんだ馬鹿野郎!」
警察官に取り抑えられながらも、悪態をつく組員に柿崎は言い放った。
「知らねえよバ~カ!」
事実、カタチだけのガサ入れに意味は無かった。
本丸は葉山会系稲垣組であり、特捜機動隊は中国共産党と稲垣組との関わりに深い関心を持っていたのである。
時刻は10時を指していた。
今頃、年上部下の神代一紀は、松下組会長と蕎麦でも食っているのかと思うと、柿崎は無性に腹が立った。
元マル暴の神代を、柿崎はどうしても好きにはなれないでいた。
とっくの昔に終わった男…それが神代の評判だった。