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夜ご飯は、先生手作りのスパゲッティだった。
ソースは挽き肉多めのボロネーゼ。
「どう?美味しい?」と聞いてきた。
「とても美味しいです!!」と答えた。
正直、本当に美味しかった。
やはり先生は独身の一人暮らしだったからなのか、料理のレベルが高い。
片付けは2人でわいわい喋りながら。
先生は笑顔で話しかけて来るので、自然と私も笑顔になってくる。
白河先生の笑顔には、自然と笑顔になる魔法でも入っているみたいだった。
寝る前に、2人で温かいココアを飲んだ。
「凛さんと居るの、楽しい」と先生が突然言ってきた。
「私も、先生と居るの楽しいです。」
「もうそろそろ”先生”呼びを替えてもらいたいな…。外に出た時の他人の目線が…気になるから。」
『確かに』と私自身も思った。
「何呼びにしようかな…」
『そのまま”優輝くん”? それとも…”優輝”で呼び捨て系?』
最終的に私が思い付いたのは、”優輝くん”をいじった “ゆっくん”。
私は先生に早速「”ゆっくん”でいい?」と聞く。
先生はクスクスと笑いをこらえながら「良いよ!」と言ってくれた。
ふと時計を見ると、夜中1時を回っていた。
「もうそろそろ寝ますよ」と言ってきたので、
私たちは、一番奥の部屋の先生のベットで寝る事にした。
2人で同じ布団を分け合って寝る。
「おやすみ」
「うん、凛さんおやすみ。」
先生が言い、部屋の電気を常夜灯にした。
しばらくすると、白河先生は寝息をスヤスヤたて始めた。
私はそれを見計らい、そっと布団の中で先生と手を繋いで眠った。
「…きて…」
「凛さん起きて」
目が覚めると、もう朝だった。
白河先生が起こしてくれた。
こんなボイスで毎朝起きれるなんて、最高だ。
「朝ご飯は作っておいたから、一緒に食べよ!」
テーブルの上には、白ご飯と茄子の漬物、鮭、おあげの味噌汁があった。
「これ朝からせん…あっ……ゆっくんが作ったの!?」と言う。
「いや…お恥ずかしながら、全部インスタントだよ」と笑いながら答えてくれた。
インスタントでも、先生と食べてるからなのか、一段と美味しく感じた。
先生が「そういえば、家族って心配してないの?」と聞いてきた。
「私なんて家族に居てもいないような存在ですから。全然構ってもらえなかったし、普通に叩かれたりしてたりしたし…」
「そうなんですね…。」
「先生は?」
「僕も…。子どもの頃はとにかく勉強しろって言われ続けてた。1歳差の弟が居たんだけど、ある日一緒にサボって家出した。でも結局親にバレて、その2日後に弟は川で…発見されて…」
私はとにかく先生も似たような環境で育ったんだと思った。
「今は…親は…?」
「父も母ももう亡くなってしまったよ…。一番下の弟に…ね…。そうしたら弟自身も死んでしまった…。だから今はもう僕1人だけ…」
「孤独…」私は自然とそう呟いた。
「でも、その分、凛さんが親から貰えなかった愛情を、僕が補ってあげるからね。」
『なんて…優しいんだ…』と思ったと共に、 こんな良い人も居るんだという安心感が私を包みこんだ。
朝ご飯を食べ終わると、夕食の時と同じ様に一緒に片付けた。
「ちょっと行かなきゃ…」
そうだ、先生は先生だ。私は卒業しても仕事がある。
常に一緒に居られる訳ではない。
「あと、やっぱり先生って方が呼びやすい」
「そうだよね。良いよ。先生呼びで。」
とカッターシャツを着ながら先生が答えた。
やはり慣れている呼び方の方が自然に言えるから。
「お昼はそこにあるご飯とか、冷蔵庫の中の冷凍食品とかを食べて良いからね」と指を指しながら言ってきた。
「じゃあ行ってきます!」と先生は元気よく玄関を飛び出して行った。
私は家にいる間は、テレビを少し見たり、スマホをいじったり、昼ご飯に明太子ご飯と肉じゃがを食べたりした。
午後6時頃に「ただいま!」と先生が帰ってきた。
教師とはいえ、現段階では3年生の先生だから、生徒を卒業させたので、仕事の量としては1年生や2年生の先生たちに比べると圧倒的に少ないから早く帰ることができたようだった。
夕食は、一緒にわたぬきをしてのエビチリ。
相変わらず2人でわいわい笑顔で沢山お喋りをした。とても楽しくて、嬉しい。
食べた後は、昨日と同じ様に、ココアを飲んだりして過した。
次の日には、制服の採寸に行った。
先生は、「可愛い!」を連発していて少し恥ずかしい。
店の人からも「お父さんは娘さん好きですね」と苦笑いされながら言われ、互いに複雑になった。
私は心の中で「本当は恩師だけどね」と呟いた。
4月1日
今日は先生たちの役職の発表があると同時に、退職、転任の発表もある。
白河先生が帰って来てからすぐに「どうだった!?」と聞く。
「今年度は1年生の担任に戻りました。」とのこと。
「頑張ってね。1年生大変そうだから。」
「いや、3年生の方が実際は大変だったから。まぁ…一番良かったのは2年生かな?」などと会話を交わした。
「次は凛さんの入学式だね。絶対行くからね。」
私にとっては嬉しい言葉だった。小学校の入学式以来は親が来たことすら無かったからだ。
そして、いよいよ私の高校の入学式がやってきた。