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錆の都が再生され、人々が再び希望を見出したその数日後。亮、篠田、そして鋼谷はそれぞれの選択を迫られていた。彼らが戦いの中で手にした勝利は決して軽いものではなかったが、その代償もまた大きかった。
篠田は朝早くから鋼鉄結社の事務所を訪れ、上司の前に退職届を静かに置いた。
上司は目を細め、篠田をじっと見つめる。「…本気か?」
篠田は一瞬迷うような表情を浮かべたが、すぐに目を鋭くし、言葉を紡いだ。
「俺は、身体に宿る“神楽一刀斎”とこれ以上共存することはできない。力に頼るばかりでは、自分が壊れていくのを感じるんだ。」
上司はため息をつきながら首を振った。「わかった。戻りたくなったらいつでも来い。」
篠田は微笑み、背を向けた。「もう戻らねえさ。この命、今度は人を守るために使う。」
一方、鋼谷は事務所の屋上で空を見上げていた。錆の都を取り戻した達成感とは裏腹に、心には常に重い影が付きまとっていた。
亮が隣に立ち、口を開いた。「お前も辞めるつもりか?」
鋼谷は苦笑いを浮かべた。「まだ決めかねてる。俺には戦い以外の生き方がわからないんだ。」
亮は肩をすくめた。「自由だ。自分を失うな。戦う理由を見失ったら、何のために生きているかわからなくなるぞ。」
鋼谷は頷いた。「それがわかったら教えてくれ。」
そして亮自身もまた、新たなステージを迎えようとしていた。錆の都の再生という偉業を成し遂げた彼には、無限の可能性が広がっていた。
「俺は、もっと多くの街を救う道を探すよ。」亮は篠田と鋼谷に語った。「数学と異能を使って、この世界を変えられるかもしれない。それが俺にとっての戦いだ。」
篠田は苦笑しながら手を差し出した。「お前は大きすぎて俺にはついていけねえな。でも、どこかで困ったら呼べよ。」
亮も笑顔で握手を交わした。「お互いにな。」
こうして、三人はそれぞれの道を歩むことを決めた。篠田は平穏な生活を取り戻すために、鋼谷は自分の戦い方を見つけるために、亮は世界を救うために――。
錆の都の夕暮れ。別れを告げる彼らの背中には、それぞれの未来が広がっていた。
「退職か…」鋼谷は独り言のようにつぶやいた。「こんなにも自由になるのが怖いもんだとは思わなかったよ。」
それでも彼の顔には、新たな覚悟が浮かんでいた。