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#一次創作
ruruha
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コメント
1件
わあ……一気に引き込まれました。リズが「入蝕」されてるって衝撃的でしたね……。友達だと思ってた人が人間じゃなかったって知る主人公の戸惑いと恐怖がすごく伝わってきて、胸が痛みました。それにしてもフレディくん、小さくても頼りになるんだけど、やっぱり子どもっぽいところもあって愛おしい(笑)。「ヒトの作り方」の本が出てきたところで物語が一気に深くなった感じがして、続きが気になります!チェシャ猫さんの世界観、本当に丁寧で素敵です🌷
リズはのたうち回って、背後のドアから飛び出していく。
「くそ……!」
追おうとした彼に、私はしがみついた。
「うわ!何っ……放せ!」
でも私は手を緩めない。
フレディにしがみついたまま叫んだ。
「何で撃ったりしたの!?私の友達なのに!」
「姉ちゃん、あれは」
「ひどい!撃つなんてひどい!!」
「あのね、彼女は」
「やっと会えたのに!リズ、怪我してるのに!」
「ちょっと俺の話、聞いて……」
「ひどい、ひどい、ひどい、ひどい!!」
ぱちん。突然頬に痛みが走る。
ほっぺに手を当てて、呆然と彼を見返していた。
……叩かれた?
痛みは大したことなかったけど、その音と叩かれた事実にびっくり。
誰かに叩かれたのなんて、初めてだ。
「姉ちゃん、いい子だからちょっと俺の話聞いてね」
フレディは銃をベルトに戻しながら、ゆっくりと言った。
相変わらず頬を押さえたまま、ぽかんと見る。
「彼女は入蝕されている」
「ニュウショク?」
言っていることが分からなくて、一生懸命頭の中でそれを繰り返した。
ニュウショク?
「ニュウショクって……何?」
「人間に似てるけど、似てない奴。見てるでしょ?」
「舌の……長い……?」
さっきのリズの舌は……。
「そう。それを俺たちは、『冥使』って呼んでる」
「メイシ?」
また知らない単語。
「ヴァンパイアって言った方が通りがいいかな」
「ヴァンパイア!?」
それは知っている。
お話の中によく出てくる……牙を持って血を吸う怪物。
でもあれは、本の中の!
「吸血鬼に血を吸われた人間は吸血鬼になる。吸血鬼伝承では基本でしょ。まあ本当は血を吸われたからってわけじゃなくて、その時冥使の血が体内に入ることが多いからなんだけど……とにかくそうやって冥使の血に侵されることを入蝕って言うんだ」
彼はまっすぐ見据えた。
銀色に見えるグレーの瞳。
懐かしい気持ちにさせる、不思議な色。
「姉ちゃんの友達は入蝕されてた。もう人間じゃない」
「リズ……が……」
声が掠れる。
「吸血鬼だっていうの……!?」
「そうだ」
「そんな……そんなはずはない!!だってリズだった!私、お話したもの!ちゃんとリズだった!!」
フレディは首を振った。
「まだ起き上がって間もないんだ。かろうじて自我を残している。でもそれは……ごく薄いヒトの膜を被っているにすぎない」
薄いヒトの膜。
何だかその表現がとてもとても怖くて、背筋が震える。
リズを纏った何か?
「フレディ……あなたは、どういう人なの……」
「俺は『祓い手』の一人」
そう宣言した小さな男の子は、私より随分大きく見えた。
「祓い手……?」
もう知らない単語ばっかり。
思わず眉を顰める。
フレディは嫌な顔をしなかった。
「冥使と戦うことをお仕事としている人をそう呼ぶの。退魔師とかヴァンパイア・ハンターとか呼ぶ人もいるけど。俺もその一人」
冥使?祓い手?入蝕?ヴァンパイア?
……ダメ、頭がついていけない。
力なく頭を振った。
「頭痛い……何でこんなことに……私、何の関係もないのに……」
不意にベッドに逃げ込みたくなる。
ふかふかの私のベッド。
私の小さなお城。
あそこは私を守ってくれる場所。
起きたら全部夢なんだわ。
だから、今までのことは全部無かったことになる……。
けれど、そんな私のぬるい夢を、彼はあっさりと打ち砕いた。
「何言ってんの。関係ないわけないじゃん。むしろド真ん中」
どまんなか?
「どういうこと?」
私が関係しているっていうの?
私には何一つ、分からないのに?
フレディは本棚を見上げながら、振り向かずに答える。
「ん……もう少し待ってね。何だか目的がはっきりしなくてさ。俺にもまだ分からないことが多くて……ああーっ!!」
「な、なに!?」
今度は何!?また悪いこと!!
「すごい!これ、かなり貴重な本!!」
興奮しながら叫ぶと、一冊の本を棚から引き抜いた。
「…………」
……本?
「禁書の一つ!!うわー、本物かな!?初めて見たー!」
かくんと力が抜ける。
拍子抜けしちゃう。
コドモなのかオトナなのか、よくわかんないな……。
「ほら、見てよ。珍しい本なんだよ、これ」
近づいた私に本を渡す。
随分古い本だ。
表紙は動物の皮で出来ているみたい。
擦り切れて、ガサガサ。
ペラペラとめくると、古い本特有の匂いが立ち上った。
「…………。読めない……」
私に分かったのは英語じゃないということだけ。
「古い文字だからね。俺もちょっとしか読めないー」
そう言って笑うフレディは、屈託がない。
やっぱりコドモかな……。
「……ちょっとは読める?」
私は全く読めない。
「うん、ちょっとだけならね」
「学校で習った?」
私は不安になった。
このところ学校をお休みにしている。
それまでにも、何度か長めのお休みをしたことあったし……。
ひょっとしてその間に皆、習ってた?
「あはは!習わないよ、こんなの」
私から本を取り上げると、ページをめくった。
「何が書いてあるの?」
「んー……」
彼の目がゆっくりと文字を追っていく。
「土人形……血と骨を用いて……へえ……」
「?」
「噂には聞いたことあったけど……」
それきり、黙ってページを捲り出した。
邪魔するのも悪いかと思い、しばらく黙って見ていた。
その顔はどんどん険しくなっていくので、さすがに内容が気になってくる。
「ねえ……何が書いてあるの?」
目から本を外さずに、ぼそりと答えた。
「……ヒトの作り方」
「ヒトの作り方!?」
「…………」
本に集中したままだ。
私は呆然としていたが、少し考えてから恐る恐る尋ねる。
「人って作れるものなの?」
すると、ようやく我に返って顔を上げーー私を見つめた。
「?」
にっこり微笑み、勢いよく本を閉じる。
「まさか!」
「…………」
そうよね。
ヒトの作り方なんて。
お料理のレシピじゃないんだから。
「誰が集めたのかな」
遠くを見る目で、本棚を振り返った。
「えっ?ここの本?」
「うん……魔術書、秘薬事典、伝承……どれもその辺で買えるものじゃないよ。それに……」
「それに?」
グレーの瞳が本棚を滑っていく。
「祓い手関係の本が多いのは気になる……」
あ、またオトナの顔になった。
「ね……」
その時、ぐえええっと何かの吠え声が。
「な、何……?」
思わず、側にいたフレディのコートを掴む。
「大丈夫、雑種だ」
オトナの目のまま、答えた。
「雑種?」
「それほど厄介な相手じゃないってこと」
言いながら、コートを握っていた私の手を軽く叩く。
「彼の行く手に茜と山査子の棘があらんことを」
そう呟くと、素早く銃を抜いて身を翻した。
「見てくる!」
「えっ……ま、待って!」
駆けていく背中に向かって、慌てて叫ぶ。
「リズは……どうするの!?私、どうしたらいい!?」
フレディは振り向きざまに叫んだ。
「姉ちゃん、あの友達にはもう近づくな!いいな!これは警告だからな!」
私が何か言う前に、彼の姿はドアの向こうへ消える。