テラーノベル
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レンザンはリディアの丸太小屋に一泊したが、翌日からは自分で住まいを作り始めた。診療所を兼ねるその家は、オルトゥスの中心地が良いということで、丸太小屋のすぐ近くに建てられた。
「……この場所は、将来どうなるか分かりませんからね。引っ越してもらうかもしれませんよ?」
「ははは、あくまでも仮住まいだからな。そこまで力は入れないよ」
ドワーフから大小の木材を受け取り、それを器用に組み立てていく。徐々に小屋のようなシルエットが見えてくるが、壁はかなり薄く感じられた。
「……こんなに薄くて、寒くありません?」
「我は火蜥蜴族だからな。これくらい、何てことは無いのう」
「いやぁ……。診療所も兼ねているんですよね?」
リディアの言葉に、レンザンの手が止まった。そこについては意識をしていなかったのだ。
「――まぁ、カーテンのようなものを付ければ……ある程度は、防寒になると思いますが」
「なるほど、それが良い。布はどこかに余っていないかな?」
布……といえばベロニカを想像するが、彼女が作る布は立派なものだ。そのため、防寒用に使うのはもったいない気がする。
「あとで倉庫を探してみますね。もしなければ、また相談させてください」
「ああ、ありがとう。我だけであれば不要だから、あまり急がなくてもいいぞ」
「はい、わかりました」
そのままレンザンの作業を眺めていると、遠くの方に人影が見えた。目を凝らしてみれば、ベルデに派遣していたシオンとデュラン、ドワーフたちの一行だった。しばらく待っていると、台車を一か所に置いて、全員がリディアの方に向かってくる。
「シオン、お帰りなさい!」
「ただいま帰りました、リディア様」
「みなさんも、お帰りなさい。大変だったでしょう?」
リディアとドワーフが挨拶を交わしたあと、デュランが疲れた顔で続ける。
「はぁ、往復するにはなかなか遠いな――……って、リディア、向こうの人は?」
デュランはレンザンの方を見つめ、拳に少し力を込める。レンザンもそれに気付き、作業を止めてデュランに近付いていく。
「お初にお目に掛かる。我はレンザン、ただの陶芸家だ。しばらくこの地で世話になるよ」
「……と、いうことよ。陶芸家の方だけど、診療所の先生もやってもらうことになって」
「そうなんですね。レンザン先生、よろしくお願いします」
シオンは率先して、レンザンに挨拶をした。ドワーフたちもそれに続き、最後にデュランも挨拶をした。
「ただの陶芸家なんて――とんでもない。この気当たり、只者ではないでしょう……?」
「はっはっはっ、そんなことはない。……それに、我には分かっておるよ。お主なのだろう?」
「な、何のことだ……!?」
レンザンの射貫く眼差しに、デュランは怯んでしまう。
「……ほれ。あの畑はお主が育てておるのだろう? お主からは、土の臭いがするからな」
そう言うと、レンザンは大きく笑って作業に戻った。
「はぁ……、大した先生ですね。小屋を建てているようですし、ワシも手伝ってきますよ」
「ジジさん、ベルデから戻ってきたばかりでしょう? 休まなくて平気ですか?」
「なぁに、ドワーフは頑丈なのが取柄でしてね!」
ジジは力こぶを見せてから、レンザンの元に走っていった。それを見ながら、デュランが零す。
「うーん……。凄い人が来たもんだな……。俺はあの爺さん、苦手かもしれん……」
「あら、意外ね。あなたは誰とでも上手くやっていけると思っていたわ」
「相手が強すぎると、落ち着かねぇんだよ。俺ももう少し、訓練をしないとな」
「それなら、シオンも付き合わせてね?」
「そうすると、俺が教える側になるからなぁ……。それに、シオンはまだ力が弱いし……」
「わかったわ。力を強くしておくわね」
「おいおい……」
以前、シオンの防御力が急に増えたことを思い出して、デュランは力が抜けた。リディアはきっと、また同じようなことをするのだろう。
「――さて、俺はドワーフの家に戻るよ。ジジは……しばらく掛かりそうだな。シオンはどうする?」
「僕はここに残って、リディア様に報告を行います。デュランさん、鉱石の運搬をお願いします」
「あいよぉ。それじゃ、またなー」
デュランはジジ以外のドワーフを連れて、ドワーフの家に戻っていった。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
リディアとシオンは居間に行き、そこでベルデの報告が行われた。鉱石はそれなりに採れそうなので、採掘をする分には問題ない。しかし距離が遠いため、運搬できる量は少なくなる……という懸念が上がってきた。
「――想像通りだけど、そうすると……やっぱり家畜が欲しいわね。馬でも牛でも」
「僕は見たことがないですが、台車を引くことのできる動物、ですよね? キングではダメですか?」
居間にいるキングを見て、それもありか――と一瞬思ったが、可愛いキングにそんなことをさせるのも忍びない。そんな空気を察したのか、キングはぼよんぼよんと波打っている。
「あるいは、空間転移の魔法があれば良いんだけど。残念ながら、私は使えないのよね」
「リディア様でも、できないことがあるんですね」
「それはそうよ。だからみんな、寄り添って生きていくの」
「なるほど……」
リディアは人間の国の地図を眺めた。ベルデの遥か北には、魔法に詳しい街がある。しかしオルトゥスからは遠く、探し物も見つかることは無いだろう。
「いわゆる上位種、みたいな……格の高い種族しか使えないのよね」
「リディア様が、一番上ではないんですか?」
シオンの言葉に、リディアは楽しそうに笑う。
「もちろんよ。上には上がいるの。……だからといって、言われるままにはされないけど」
「そうですよね。やっぱりリディア様が一番です」
「……そうなのかしら。まぁ、シオンにも手伝ってもらうからね?」
「はい、何でもご命令ください!」
リディアはアルマにお茶を淹れさせて、今後のことを考えていた。ひとまず自分で、できることからやらなければ。やらなければいけないことは、たくさんある。だからこそ、ひとつひとつを丁寧に、確実に……。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
シオンの報告が終わると、リディアは軽食を持ってレンザンの元に向かった。あらかたの作業を終えたレンザンとジジが、何か熱心に語り合っている。
「お疲れ様です。作業は順調ですか?」
「おお、リディア姐さん。一旦は終わりかな、ってところですね」
「ジジ君のおかげでね、ずいぶんと捗ったよ」
「そうなんですね。ところで、ずいぶんと楽しそうに話をしていましたが……」
何か共通の話題でもあったのかな、とリディアは思った。分野は違えど、お互い職人同士なのだから――
「ええ、レンザンの旦那は剣に詳しいんです。それでほら、ワシは武器の鍛冶が得意でしょう? だから、そこで話が弾んでしまって」
「ああ……、そっちの接点でしたか」
「ドワーフの作る剣は、鋳型で作るものだと思っていたが……。ジジ君は玉鋼からも打つようでね」
「旦那も多少、腕に覚えがあるそうなんですよ。それで、少しばかり技術的な話も……」
「ふふっ、それは熱くもなりますね。私はお邪魔でしょうから、軽食だけ置いていきますね」
軽食を受け取ると、ふたりは再び語り始めた。
新しい出会いが始まるとき、想像できない繋がりも生まれることがある。出会いというのは何と面白いことか――リディアはついつい、そんなことを考えてしまった。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「――はわわっ。主様ぁーっ!」
ある日、リディアが居間にいるとフェルネが飛び込んできた。それを見て、シオンとアルマは驚いた。キングはいつも通り、豊かなビートを刻んでいた。
「フェルネ、どうしたの? ……っていうか、何も言わずに入ってくるのはベロニカだけにしてくれないかしら……」
あくまでも、リディアの丸太小屋はプライベートな空間である。たとえ親密であっても、緊急であっても、もう少し一線を踏まえて欲しい……というのが正直なところだった。
「こここ、今後は気を付けます……! そそそ、それで、森でいざこざがありまして……!?」
「森で? ……そういうのはヘルミナの仕事でしょう? あの子は何をしているの?」
「ととと、とりあえず来て頂けませんか……!?」
「はぁ……」
フェルネは混乱すると、しっかりと話すことができない。他に聞く相手がいないのであれば、今は付いていくしかないだろう。
フェルネの案内で森に行くと、どこからか言い争っているような声が聞こえてきた。何を話しているのかは分からないが、急いで近付いていくと――樹々の間から、突然矢が飛んできた。
「ちょっと……、危ないわね!?」
またヘルミナがおかしなことを――そう思いながら、人の気配がする方に飛び込んでいく。するとそこには……10人ほどの集団が現れた。そしてその中には、見覚えのある人物がひとりだけ――
「……ヘルミナ?」
「り、リディアさん!? これは、そのぅ……」
ヘルミナの近くには、他のエルフが5人いる。彼女は明らかにその輪の中心におり、しかもリディアに弓を射るというのであれば――
「――そう。私を敵にまわすのね? 信じていたのに、残念だわ」
「ち、違いますよぉ……!?」
しかし、後ろのエルフたちは戦闘態勢に入った。6対1、傍から見ればエルフたちに有利な状態だ。……そんな中、リディアの後ろからは野太い声が聞こえてくる。
「くそ、あのお嬢ちゃんを援護するぞ!」
「そうだ、エルフなんぞにやられるものか!!」
「父祖の代からの恨みィ!!」
「……え?」
思わずリディアが振り向くと、そこにはドワーフが5人、戦闘態勢に入っている。……前にはエルフが5人、後ろにはドワーフが5人。そしてひとり、涙目になるヘルミナ。
「……はぁ。また、何かやらかしたのかしら……」
リディアはひとまず、彼らの足元に黒い稲妻を落とした。ややこしくなったときは、全員を大人しくするに限る。……エルフとドワーフたちは、突然落ちた稲妻に、腰を抜かして倒れてしまった。
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comi
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コメント
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うわあ新キャラ・レンザンおじいちゃん、陶芸家って言いながらデュランの土の匂い即バレするとことか渋すぎる…!😭✨ あとエルフvsドワーフの構図にリディアの黒い稲妻で一発鎮火、まじで格の違い見せつけられてスッキリしたよ〜🥺💕 キングずっとぼよんぼよんしてて癒しだった