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#ファンタジー
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#ファンタジー
エルフが5人と、ドワーフが5人。それに加えて、ヘルミナがひとり。話を聞いてみるとドワーフは、ゼゼがオルトゥスに呼んでいた顔ぶれだった。全員で場所を丸太小屋に移して、落ち着いて話を進めていく。
「すいません、来て頂いた早々に……。これはお詫びの品です」
「こちらこそ申し訳ないですね。いやはや、こんなに良い酒を……」
大量に並ぶ酒瓶を前に、突然呼ばれたゼゼも表情が明るい。今回襲われていたドワーフたちも、いつの間にか酒の方に注意が行ってしまっている。
「そんなわけで、ワシの顔に免じて許してくれんか? ほれ、リディア姐さんに迷惑を掛けるわけにはいかねぇし」
「異論はねぇや! リディア殿が直々に謝罪してくれたのであれば、もはや何も言うまい!」
「そうとも、そうとも!」
一通り賑やかに話したあと、ドワーフたちは酒瓶を持って丸太小屋を後にした。そして残ったのは、ヘルミナと、エルフの5人だった。
「――まぁ、状況は想像が付くわよ。『ドワーフを見たら10秒以内に攻撃しろ』……だったかしら?」
「ひぃん……。それはうちの家訓なんですが……。まぁ、大体はそんな感じです……」
「はっ! ヘルミナの家はヌルいからな。我が家は5秒だッ!!」
「うちは3秒よッ!!」
「ちょっと……。みんな、黙ってぇ……」
物騒なことを言い出すエルフの横で、ヘルミナが涙声になる。ヘルミナも最初は物騒だったが、いつの間にか常識人になったものだ。
「ヘルミナ。そもそもここにいる方とは、どういう繋がりなの?」
「ほら……。オルトゥスって、ドワーフがたくさんいるじゃないですか……。さっきの5人を含めて……13人になりますよね?」
「ザザさんは含められないから、そうね。その通りだけど?」
「それに比べて、エルフは……あたしがひとりじゃないですか。だから、エルフも増やしたいなぁ……って」
「そんなところで対抗意識を……。でも、まぁ気持ちは分かるけど」
そう言ってから、エルフたちの顔を眺めていく。森の巡回はヘルミナばかりに頼んでいる手前、森の住人が増えるのは良いことではあるけど――
「……ここにはいろいろな種族が暮らしているし、今後はもっと増えると思うわ。みなさん、それでもやっていけるのかしら」
「み、みんな……。どうかな……?」
弱々しいヘルミナの声に、悪態をつくエルフもいる。ドワーフたちとは違って、統率は取れていないようだ。
「はぁ……。ヘルミナ、あなたがどうにかできる問題?」
「じ、自信が無くなってきました……。でも、一緒にやっていきたいです……」
「それじゃ、私が教育していいわね?」
その言葉に、ヘルミナは身体をびくっと震わせた。彼女もかつて、リディアから教育を受けたことがあるのだ。エルフたちはそんなヘルミナを見て、小馬鹿にするような表情を浮かべていた。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
リディアはエルフたちを連れて、工房に入っていった。ヘルミナが居間で座って待っていると、アルマがお茶を淹れてきた。
「ヘルミナさん、お疲れ様です。大変でしたね」
「うぅ……。アルマちゃん、優しい言葉をありがとう……。はぁ~、フェルネちゃんに頼んで故郷に連絡してたんだけど、リディアさんにも先に相談しておけば良かった……」
「あはは……。そうしておけば、間違いはありませんでしたよね……」
「アルマ、ちょっといい?」
「はーい!」
アルマはリディアに呼ばれた後、大量の水を工房に運んだ。それが終わると、次は急いで外に出て行く。ヘルミナは不思議に思いながら、工房に聞き耳を立ててみるが……何も聞こえてこない。
そうこうしていると、アルマがレンザンを連れて工房に入っていった。しばらくすると、ヘルミナは吹き飛ばされてしまいそうな冷たい圧――のようなものを感じた。よくは分からないが、汗が自然と……だらだらと出てきてしまう。
「な、何が起きているんだろう……」
しばらくすると、アルマとレンザンが工房から出てきた。
「レンザンさん、こんにちは? 今日は何でこちらに?」
「うむ……。お嬢ちゃんに呼ばれてな。我の気を、エルフ共に思い切り当ててくれ……と」
「気? ……あぁ、もしかしてさっきの……」
「まぁ、少し怖がらせてやれ、ということだな」
そう言うと、レンザンは丸太小屋を出て行った。
「何だか、あたしのときより念入りに教育をしているような……」
「ヘルミナさんは、根が素直な方ですから。今回の5人は少し違うようで……」
「なるほどぉ……。実際、故郷から逃げ出してきたような連中ばかりだしね……」
「……ヘルミナさん? リディア様の大切な場所に、そんな輩を連れて来たんですか?」
「ひっ!?」
アルマの静かな怒りに、ヘルミナは怯んでしまった。そういえばアルマも、初めてここに来たときはリディアに襲い掛かったと聞いている。……涙目のヘルミナを見て、アルマは仕方の無さそうに笑った。
「……でも、同胞がいるのは羨ましいです。わたしは兄さん以外、まだ会えていませんから……」
「あ、そうだよね……。いつか、オルトゥスまで来てくれると……いいね……」
「はい♪」
アルマはそう言うと、キッチンに戻っていった。代わりに何故かキングが来て、ヘルミナに寄り掛かっていった。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
その後、5人のエルフはとても素直になり、ヘルミナの言うことをよく聞くようになった。リディアとレンザンには極度に怯えるようにはなったが、それ以外は問題なさそうだ。
問題が解決したあと、リディアとヘルミナは、デュランの農作業を眺めていた。近くの樹の後ろでは、フェルネとベロニカが彼のことを見守っている。
「――はぁ。それにしてもリディアさんの教育って、本当に凄いですよね……」
「あら。ヘルミナももう一度、受けてみる?」
「あたしはもう、素直なエルフじゃないですかぁ……」
「ふふっ、そうね。それで素直なエルフさんは、あの5人をまとめられそう?」
リディアが軽い感じで聞いてくる。肯定するのは容易く、否定するのは――今後が大変になりそうな気がする。
「……はい、何とか」
「それじゃ、ヘルミナには新しい仕事をお願いしようかしら」
「え!? えー……。え!?」
「今はデュランに仕事がいきすぎてるのよ。仲間なんだから、分担しないといけないでしょう?」
「でも、デュランさんは力仕事ばかりじゃないですか……」
「果物の運搬とか、そういうことならできるでしょ?」
「ぐふぅ……。……あ、でも、あたし向きの仕事を持ってくれば、そっちで良いですよね!?」
ヘルミナの言葉に、リディアは溜息をついた。ヘルミナは元々、仕事を選り好みするところがあるのだ。
「……まぁ、いいけど。でもそれまでは、運搬の仕事はよろしくね♪」
「ひぃん……。わかりましたぁ……」
そんなヘルミナを一旦置いておいて、リディアはベロニカの元に向かった。
「こんにちは、ベロニカ。何をしているの?」
「今はねー、デュラン君を眺めてるの! 見てよ、あの肉体美……!!」
「激しく……同意……!」
ベロニカに続いて、フェルネも少し興奮している。今までよりも、何やら一歩踏み込んでしまっていそうだ。
「それで――以前、デュラン君の採寸をしたでしょ? 服が5着できたから、あとでリディアの家を貸してくれる?」
「いいけど、5着……も作ったの? もう少し他の仕事も――」
「同時進行で、糸や布はたくさん作っておいたわよ! まぁ、それ以外の仕事はおいおいね。次は女の子の服を作りたいなぁ……」
「あら、それなら私の服をお願いしようかしら。今と同じデザインで良いんだけど」
「それは……腕の振るい甲斐が無いわね……」
リディアの依頼に、ベロニカは断る直前だった。
「新しく、防御力のある布を作ってみたのよ。普通の布とは違うから、ベロニカの知識にもなるんじゃないかしら」
「知識……! それは魅力的な言葉ね……!」
その後、丸太小屋に全員で移動した。まずはデュランのファッションショーが行われ、ベロニカとフェルネはとても魅力的な時間を過ごした。フォーマルなスーツに、爽やかな私服。可愛いパジャマに、渋い部屋着。そして実用的な野良着――
「俺は、この野良着が一番いいな。丈夫そうだし、動きやすい。ああ、ローテーションのシャツがあると嬉しいんだが」
「わかったわ! すぐに作って届けるから!」
「おう、よろしくな。さて、それじゃ俺は――」
デュランが出て行こうとしたところで、レンザンが入ってきた。デュランは思わず、彼に道を譲ってしまう。
「お嬢ちゃん、よろしいかな?」
「レンザンさん? どうしましたか?」
「来客を連れて来たぞ。……やはりダメだな。オルトゥスの者は、気配を読む力が足りん」
「あはは……。レンザンさん、それなら鍛え直してもらえますか?」
「……ふむ、それもありだな。陶器の窯は、まだ時間が掛かりそうだし……」
「ドワーフが5人増えたので、着手できるようになる……かも?」
リディアの言葉に、レンザンは少しだけ笑顔を見せた。既に良い土は確保しており、あとは環境を整えるだけなのだ。
「――あ、それでお客様でしたっけ? 今はみんなで話しているところだけど……大丈夫そうです?」
「ああ、むしろ人がいた方がいいかもしれないな」
レンザンがそう言うと、リディアは頷いて――アルマが玄関に向かい、客を連れてきた。
「初めまして。オレは狼獣人のブラガという。世界を巡って、希少なものを扱う商人だ」
「ラーナはラーナだよ~っ!!」
灰色のような髪色、真っ赤に光る瞳。見るからに強靭そうな狼獣人の風体だが、それにしてはどちらも柔らかな印象を持つ……そんな男女。年齢からして、父娘のようだ。
「はじめまして。この場所、オルトゥスの主――リディアです」
その言葉に、ブラガは口元を緩ませた。
「……ほう。そこに並ぶ服、テーブルに乗っている不思議な布、それに陶器で有名なレンザン先生……。まだ形にはなっていないが、確かに可能性を感じる場所だな」
「本当だね、父ちゃん! いや~、噂通りだね!」
ラーナの言葉に、リディアは不思議に思った。旅の商人が、オルトゥスの噂をどこで聞いてきたのか――
「……この場所のことは、どこかで聞いてきたんですか?」
「ああ、ザザという旅のドワーフだ。……行く先々で、ここの噂を広めてくれと頼まれたぞ?」
「あ……、そうなんですね」
「ここには貴重なものがあるから、一度見てみると良い……とな。オレも外にいろいろ持ってきているから、良いものがあれば交換を頼む」
その言葉に、リディアは強く反応した。この土地で入手できないものは、それこそ数多くある。オルトゥスから何を出せるのかは分からないが――
……何も無ければ、自分の錬金術で補うまで。他に何か出せそうなら、話の流れで考えよう。リディアはひとまず、ブラガたちに付いて行くことにした。
コメント
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わあ、新キャラの狼獣人親子、かっこいい…! しかもザザさんが噂広めてくれてたんだね。リディアさんの教育シーンは毎回ゾクゾクするけど、ヘルミナが常識人になってて成長感じたよ。デュランのファッションショー、ベロニカとフェルネのテンション上がりすぎてて笑った(笑) 商人との取引、これからどう発展するのか楽しみ!