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……唇がふっと離れると、私を見つめるカイトの目に、ふいにみるみる涙が溜まった。
「……ミク…ごめん、ごめんな……。……俺のために…こんなに、傷つけられて……」
口にするカイトの目から、涙がぱたぱたとこぼれ落ちる。
「大丈夫だから……心配ないから、泣かないで…カイト…」
「でもミクル……」
「心配はいらないから……泣かないで、ね…?」
その瞼に口づけて、薄くあけられた彼の唇に私からそっと唇を寄せた。
「ミク……ミクルにキスされると……、」
濡れた黒い瞳でじっと私を見ると、キスしたばかりの唇を指でいじりながら、
「……感じる……」
カイトが低く呟いて、その声音に色っぽさを感じドキリとさせられる。
「……帰ろう、ミク」
カイトが、つと私の手を引っ張る。
「カイト…ねぇ、手…病院で治療してもらった方が、いいんじゃないの…」
カイトの手には、新たな血がしみ出していて、巻いたハンカチが赤く染まっていた。
「ああ…治療は行くけど……明日、行く…」
言ってカイトが、自分の手に目を落とす。
「どうして、明日なの?」
「今夜は、ミクルと、バイクに乗りたいから……」
「だけどバイクなんて、今乗ったら手が……」
「大丈夫だから……こうやって、グローブを上から着ければ、グリップぐらい握れる……」
カイトが指抜きの皮のグローブをポケットから出して手に嵌めると、私を安心させるようにニッと笑って見せた。
「こっちに来て、ミクル」
外に止めてあったバイクのところまで来ると、カイトはハンドルにぶら下げてあったヘルメットをかぶって、
収納タンクから、ヘルメットをもう一個取り出した。
渡されたヘルメットをかぶると、手が引かれシートへ座らされた。
「ねぇ、どこに行くの?」シートにまたがって問いかける。
「高速……二人で、走りたい」
いざなうように腕が腰に回され、彼の背中にもたれる格好になる。
エンジンがかかると、カイトが夜の街へバイクを走り出させた──。