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真夜中の高速道路は空いていて、カイトはスピードを上げてバイクを疾ばした。
身を切るような風が脇を通り過ぎ、カイトの体にギュッとしがみつく。
その背中から、彼の体温が伝わり、冷えた体がじんと暖まってくる。
バイクがカーブを曲がり、直線の道路に入ると、エンジン音が唸るように響いた。
ハンドルを握るカイトは何も言わなかったけれど、
対向車のヘッドライトが流れる中を、一直線に進むバイクは、走りをひたすらに楽しんでいることが、私にもひしひしと伝わってきた。
高速を1時間ぐらい走って、出口から降りると、明かりの消えた大きなホテルの傍らに彼はバイクを止めた。
カイトがヘルメットを取って、
「…風、気持ちよかっただろ…?」
ふっと笑みを見せる。
「うん…気持ちよかったよ、カイト」
「ミクルにも、感じてほしかったから、俺と同じ気持ちを……」そう満足げに口にすると、
「髪…乱れちゃって…ごめんな」
カイトの手が、そっと私の髪を梳くように撫でた。
「ううん……私も、あなたと同じ感覚を味わえて、とってもうれしかったから……」
カイトが私の頬に触れて、
「冷えちゃったな…顔」
と、自分の頬をすり寄せる。
「……ミクル……」
照れたようにはにかんで、うつむいて目を伏せて、
「……好き…だよ…」
切れ切れにカイトが耳に囁いた……。