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それからちょっとたった
ある日、プラントの食堂にイザベラが現れた。
いつも通りの笑顔を浮かべているが、どこか冷たく響くその声。
「みんな! シンムの里親(出荷)が決まったわ。
だから今日でシンムとはお別れよ。
だから今日はいっぱい最後の日だから、楽しみなさいね、シンム」
子どもたちは戸惑いながらも、純粋に信じている。
「よかったね! シンム兄ちゃん!」
「でもこれで最後なのは悲しいよ……お別れやだぁ……」
涙を浮かべる子もいる。
シンムは、そんな彼らに優しく笑いかける。
「あぁあ、泣かないで💦 僕も悲しいなぁ。
もっと弟や妹たちの成長、見たかったよ」
「じゃあ最後だから、絵本いっぱい読んで?(涙ぐみながら)」
「本? 全然いいよ! 最後だし、いっぱい読んであげる♪」
子どもたちは目を輝かせて「ほんと? やったぁ!」と喜ぶ。
しかし、別室では、エマ、ノーマン、レイ、ギルダ、ドンが焦りに包まれていた。
「え、まだ脱出の準備が終わってない! やばい、シンム兄ちゃんには絶対に死んでほしくない!」と。
彼らは図書室にシンムを呼んだ。
ノーマンは冷静だが、涙をこらえて話し始める。
「シンム兄さん……ハウスの秘密、鬼のこと、僕らが食べられるために育てられた家畜なのだってこと……」
「だから、兄さん、お願いだ、先に逃げてくれ」
エマは声を震わせる。
「シンムお兄ちゃん、発信器をレイが作った破壊装置で壊して……お願い」(泣きそうになる)
レイも混乱しつつも切実に言う。
「シンム兄さん、お願いだ、兄さんだけは死んでほしくない……!」
シンムは、彼らの言葉を静かに聞きながら、微笑んだ。
「みんな、そんなことしてたんだぁ……(←知ってました)」
「でも、僕が先に逃げる? そんなのはしないよ」
「君たちが助かって、最後の犠牲者が僕で、みんなの誰かじゃなくてよかったよ^^」
彼はハウスの秘密も鬼のことも、そして自分たちが“家畜”であることも知っていた。
しかし、ここでも知らなかったふりを続けていた。
シンム兄ちゃんの、全てを背負う優しさと覚悟。
だが彼の秘密は、まだ誰にも明かされない。