テラーノベル
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アリーナの会場がメンバーカラーのペンライトで色鮮やかに染まっている。
割れんばかりの大歓声の中
M!LKの5人はノンストップのダンスメドレーを披露していた。
(、ッやばい、急にきた、ッ)
曲の合間の短い暗転の瞬間、太智は衣装の上から自分の腹部をギュッと押さえた。
朝から少し胃のあたりがムカムカするとは思っていた。
だが、ライブ後半の激しいアップテンポの楽曲
そしてステージの激しい照明の点滅と熱気が
太智の胃に決定的なダメージを与えていた。
こみ上げてくる強い吐き気と冷や汗が止まらない。
頭がグルグルと回り一歩ステップを踏むたびに内臓がひっくり返るような不快感が太智を襲う。
(あかんわ、、ここで俺がはけたら4人のフォーメーションが全部めちゃくちゃになるしな、)
(MCまであと2曲か、、絶対に耐えなあかんな、)
パッと照明が再びステージを照らす。
太智はいつもの完璧なアイドルスマイルを作り
痛むお腹を必死にかばいながら激しいダンスの定位置へと走った。
__♪
だが、身体は正直だった。
いつもなら誰よりも高く跳び誰よりもキレのあるダンスを見せる太智の動きが
明らかに鈍っている。
重心が低くどこか上体を丸めるような不自然な体勢。
(だいちゃん、、??)
すぐ隣のポジションに入った柔太朗が一瞬の交差の瞬間に太智の異変を察知した。
いつもなら目が合えば悪戯っぽく笑いかけてくる太智の顔が
照明の下でもはっきりと分かるほど青白くなっている。
唇の赤みも完全に消えていた。
フォーメーションが変わり今度は勇斗が太智の後ろに回り込む。
太智の背中がはあはあと尋常ではない早さで上下しているのが見えた。
(太智息が上がりすぎじゃね??)
(まさか気持ち悪かったりする、??)
勇斗は瞬時に太智が吐き気を堪えている時の特有の
「顎を引いて耐える仕草」に気づき背筋が凍るような感覚を覚えた。
「次、みんないっぱいペンライト振ってな~!!」
舜太がマイクで客席を煽る。
会場のボルテージは最高潮に達するが太智にとって「視界が激しく回る」この楽曲は
地獄以外の何物でもなかった。
イントロが流れた瞬間太智の胃がドクンと大きく波打つ。
「、、ッ、ぅ”、く、」
マイクに音が入らないよう咄嗟に口元を腕で覆った。
一瞬、足元がぐらりと揺れステージの床へ膝をつきそうになる。
その瞬間バサッと太智の前に大きな影が立ちはだかった。
仁人だった。
仁人は客席から太智の姿が見えないよう
あえてフォーメーションを少し崩して太智の正面を体で遮った。
そしてペンライトの代わりに持っていた自分のタオルを大きく振り回しながら
太智だけに聞こえる声で鋭く叫んだ。
「太智!! 無理して踊るな、 下向いてろ!!」
それと同時に後ろから勇斗が太智の腰をガシッと力強く支える。
「太智、俺の背中に隠れてな。」
「舜太、柔太朗繋いどいて。」
勇斗の指示に舜太と柔太朗がアイコンタクトだけで即座に反応し
太智のぶんまでステージの端から端へと大きく動いて客席の視線を完全に引きつけた。
最年少であり、涙もろい舜太は太智が一番悔しがっているのを分かっているからこそ
涙をこらえて全力で声を張り上げた。
「、、はあ、はあ、ごめ、んッ」
メンバー4人の完璧な連携による「壁」の中で
太智は冷や汗をだらだらと流しながらなんとか激しい吐き気の第一波を堪え忍んだ。
曲の終わりを告げるキャノン砲が派手に鳴り響きステージが暗転する。
スタッフの「MC入りまーす!!」の声が響いた瞬間
太智の緊張の糸はプツリと切れた。
「太智ッ!!」
暗闇の中、勇斗の胸の中に太智の身体がぐったりと倒れ込んでいった。
暗転した瞬間勇斗と仁人に両脇を抱えられるようにして
太智はステージ裏の暗い通路へと崩れるように駆け込んだ。
「スタッフさんバケツ!!あと水とタオル。」
仁人が大声を張り上げる。
ステージ裏のパイプ椅子に座らされた瞬間
太智の胃がこれまでになく激しく跳ね上がった。
口元を両手で押さえるが指の隙間から苦しげな呼吸が漏れる。
「だいちゃん無理せんでええよ!?」
「ここ客席からは見えんから全部出しちゃいな!!」
舜太が大急ぎで用意されたエチケットバケツを太智の膝の間に抱え込ませた。
太智はバケツのフチにしがみつくようにして上体を深く折った。
「、、ッ、げほッ、、う”、ぉ”えッ、」
激しい嘔吐の音が静かなステージ裏に響く。
何も食べていなかったせいか胃液と苦い胆汁だけがボタボタと吐き出されていく。
涙と鼻水で顔をぐしゃぐしゃにしながら太智は声を殺して何度も激しく嘔吐を繰り返した。
背中が大きく波打つ。
「よしよし太智、偉いぞ。」
「苦しいな、ごめんな」
勇斗が自分の衣装が汚れるのも構わず太智の背中に大きな手のひらを当てて
優しく、だけど力強く何度もさすり続けた。
勇斗の包み込むような温かい手がパニックになりそうな太智の心をかろうじて繋ぎ止める。
「だいちゃん、呼吸忘れないで。」
「ゆっくり深呼吸してね」
柔太朗が冷たい水で濡らしたタオルで太智の汗だくの首筋や額を丁寧に拭いながら
耳元で静かに声をかけ続ける。
柔太朗のひんやりとした指先が熱い体には酷く心地よかった。
「、、う、ごめッみんな、ごめん、ッげほッ!!」
「謝るな太智、誰も怒ってないよ。な??」
「だから今は自分のことだけ考えろ」
勇斗が太智の乱れた髪を優しく撫でる。
ようやく激しい胃の痙攣が収まり太智がバケツから顔を離すと
すかさず仁人がストローを挿したスポーツドリンクを唇に当てた。
「吉田さ、」
「お疲れ。大丈夫か??」
「俺ちょっと今からステージ戻ってMCで20分繋いでくるから。」
「その間にちょっとでも横になってて」
仁人は太智の口元を新しいタオルで優しく拭うと
いつも通りの頼れるリーダーの顔に戻って他の3人に視線を送った。
「舜太、柔太朗はMCね。」
「客席俺たちで盛り上げて太智戻るまで一旦繋ぐよ。」
「だいちゃん、ゆっくり休んでな!!」
「だいちゃん、行ってくるね。」
3人が再び眩しいステージへと走っていく。
残された楽屋裏の暗がりで勇斗はまだ震えている太智の肩をそっと抱き寄せた。
「太智。俺がずっとここにいてやるから安心して寝てろ」
メンバー4人の圧倒的な優しさとプロとしての絆に守られながら
太智は勇斗の胸の中でようやくほっとしたように小さく息を吐き出した。
4人が客席を必死に盛り上げ20分間のMCを繋ぎ終えてステージ裏に戻ってきた瞬間。
そこにはまだ顔が真っ白なまま衣装のベルトをきつく締め直そうとしている太智の姿がありました。
「、ッよし。まだいける」
楽屋裏のパイプ椅子から立ち上がり
太智はふらつく足元に喝を入れるように自分の太ももを強く叩いた。
胃の中のものを全て吐き出したおかげで強烈な吐き気は少しだけ治まっている。
けれど脱水症状と体力の消耗で視界はチカチカと火花が散ったように霞んでいた。
「だいちゃん!?何してるん座ってなあかんて!!」
ステージの階段を駆け降りてきた舜太が
太智の姿を見るなり大声を上げて駆け寄ってきた。
途中加入とはいえ長年過ごしてきた太智の「意地でもステージに戻る」
という無茶な目がすぐに分かったのだ。
「しゅんちゃんもう大丈夫や。」
「次の曲、位置につかなあかん」
「大丈夫なわけないやんか!!」
「唇真っ白やで!?」
舜太が太智の両肩を掴んで止めようとするが
太智はそれを優しく振り払った。
その目は完全にプロのパフォーマーの目だった。
「太智、お前ばかか!!」
後ろから戻ってきた勇斗が怒りを露わにして太智の前に立ちはだかった。
大きな体で太智の動線を完全に塞ぐ。
「はやちゃん俺どうしてもライブ出ないってのは嫌やねん、」
「投げ出したくないねん、」
「投げ出すなんて誰も言ってねえだろ!」
「お前が倒れたら俺ら心配でパフォーマンスなんて出来ないよ、」
「、みんなに迷惑かけとるのは分かっとるけど、、」
太智の瞳に悔しさと情けなさでじわっと涙が浮かぶ。
太智の震える声に楽屋裏の空気が沈黙に包まれた。
全員が太智の気持ちを痛いほど分かっていた。
涙目になった太智をみて勇斗が慌てる。
「ぁ、ちょ泣くなよ、汗」
「でも休んだほうがお前のためだろ?」
「はやちゃんもういいよ。」
「だいちゃん止めるのはもう無理じゃない?」
静かに口を開いたのは柔太朗だった。
柔太朗は太智の前に歩み寄ると乱れた衣装の襟元をすっと綺麗な指先で整え
ベルトの位置を直してあげた。
「じゅうちゃ、」
「その代わりだいちゃん」
「約束して欲しいんだけど、ダンスはいつもの半分に抜いて。」
「危なくなったらすぐ俺の服を掴んで?」
柔太朗の綺麗な目が太智の無理を受け入れる覚悟で妖しく揺れていた。
「よし分かった」
最後に仁人がメンバー全員をガシッと引き寄せた。
「じゃあみんな残り3曲全員フォーメーションいい感じに変えてね。」
「太智、お前も無理すんなよ??」
「うん。」
再びステージへ上がる直前
勇斗が太智の背中を今度は痛くないように優しく、だけど熱を込めてポンと叩いた。
会場全体に次の楽曲のイントロが激しく鳴り響いた。
ステージがパッと眩いライトで照らされた瞬間
5人はすでに完璧な初期位置についていた。
(、、動ける。大丈夫や、)
太智のポジションは本来なら激しくステージを左右に移動する動線だった。
しかし今、太智の前後左右にはまるで鉄壁の盾のようにメンバーが配置されている。
__♪
歌い出しと同時に勇斗が太智の前へ一歩踏み出し
大きな体で客席からの視線を遮りながら力強いボーカルで会場を圧倒した。
勇斗は自分のパートを歌いながらも
時折後ろの太智へ「大丈夫か」と問いかけるように視線を一瞬だけ送ってくる。
ダンスのターンが訪れる。
太智の体が脱水症状のせいでぐらりと右に傾いた。
(あ、あかんっ、! )
ファンにバレる、と思った瞬間。
すぐ横にいた柔太朗がまるでそういう演出であるかのように
自然なモーションで太智の腕をすっと支え
そのまま本来のフォーメーションへと滑らかに太智の体を誘導した。
柔太朗の目が「ステップ抜いて」と無言で語りかけてくる。
曲の中盤、激しく全員でジャンプするパート。
太智の視界が完全にブラックアウトしかけ足の力が抜けかけた。
「だいちゃん俺見てや!!」
逆サイドから大きく移動してきた舜太がマイクに 音が入らないギリギリの声で叫び
太智の視線を自分に釘付けにさせた。
最年少である舜太が全力の笑顔でダイナミックに踊る姿が
太智の意識を現実の世界に引き戻す。
舜太は太智とすれ違う一瞬
その熱い手のひらで太智の腰をグッと押し上げ倒れるのを防いだ。
そしてラストサビ。
太智がセンターに立つこの曲最大の魅せ場がやってきた。
太智は残された全ての気力を振り絞り中央のスポットライトの下へ躍り出た。
客席へ向けていつもの弾けるような
誰よりも眩しい「塩﨑太智」のアイドルスマイルを爆発させる。
その瞬間、会場全体のペンライトが激しく揺れ地鳴りのような大歓声が5人を包み込んだ。
太智のすぐ後ろではリーダーの仁人が太智の背中にいつでも飛び込めるような距離を保ちながら
完璧な歌声で支えていた。
仁人の瞳には極限状態の中で誰よりも輝いている太智への
誇らしげな光が宿っていた。
最後の音が力強く響き渡り5人が完璧なポーズで曲を締めくくる。
客席からは、この日一番の拍手と歓声が降り注いだ。
ファンの誰一人として太智が直前までステージ裏で倒れていたなどとは夢にも思っていない。
完璧な、5人のM!LKのステージだった。
パッと照明が暗転したその一瞬。
「、、ッ、あ」
限界を遥かに超えていた太智の膝がついに折れた。
崩れ落ちる太智の身体を暗闇の中で待ち構えていた勇斗と仁人の腕が
床に触れさせるよりも早くしっかりと抱きとめた。
「頑張ったな太智!」
勇斗の低く温かい声を聞きながら太智は今度こそ安心して
4人の腕の中でそっと意識を手放した。
ライブが終わった数日後。
熱もすっかり下がりすこぶる元気になった太智を囲んで
5人は楽屋で次の活動に向けた動画のチェックやSNSの反響を見ていた。
「なあちょっとこれ見てや」
スマホの画面をタップしながら舜太が声を弾ませた。
「Xでなこないだのライブのレポ読んどったんやけど」
「みんなどんだけ目良いん??ってくらい俺らのこと見とるんよ」
「えまじ?? なんて書かれてるん?」
太智が覗き込もうとすると隣に座っていた勇斗がすかさず
「太智はまだ病み上がりなんだから目使うな」
と太智の顔と同じくらいの大きな手で太智の視野を遮ってきた。
「はやちゃんもう大丈夫やって!!」
「 スマホくらい見せてや!!」
「はいはい俺が読んであげるよ」
衣装の片付けを終えた柔太朗がスマホを受け取り
目を少し細めながら画面を読み上げた。
「メドレーの時太智くんいつもより上体丸めてて一瞬ひやっとしたけど柔太朗くんが自然に腕引いてフォーメーション戻したの見逃さなかった。M!LKの絆えぐい」
「勇斗くんがずっと太智くんの前に立ちはだかって壁になってた気がする。あの時太智くん一瞬口元押さえてた?? 体調悪かったのかな、、心配」
「ラスサビで吉田さんがいつもより太智くん近くに寄り添うようなポジションだった気がする。5人のアイコンタクトがプロすぎて泣いた」
「うわ、めちゃくちゃ見破られてるじゃん」
仁人がスポーツドリンクのボトルを太智に手渡しながら苦笑いした。
「俺らみ!るきーずに1ミリも悟られないように必死で壁作ったつもりだったんだけどな。」
「鋭すぎない??」
「ほんまになあ、、」
「しゅんちゃんが大きく動いて視線逸らしてくれた時とか俺、ほんまに助かったんやで」
太智が少し照れくさそうに言うと舜太は嬉しそうに顔をほころばせた。
「だいちゃんがステージ降りないで頑張るって言ってたから俺らも必死だったんやで??」
「でもファンのみんなが俺らのそういうのに気づいて感動してくれとんの、なんか誇らしいな」
「まあ太智がそれだけみんなに愛されて一挙手一投足を見守られてるってことだろ」
勇斗が太智の頭をガシガシと手荒くだけど愛おしそうに撫で回す。
「でもさこれだけ鋭いってことは、、」
柔太朗がふっとどこか意地悪で妖しい微笑みを浮かべた。
「俺らがだいちゃんを過保護に甘やかしすぎてるのもそのうち全部バレちゃうかもね」
「それはもうとっくにばれてるんちゃう??」
太智の呆れたツッコミに楽屋はいつもの賑やかな笑い声に包まれた。
リクエストです!!ありがとうございました😭
体調不良ふたつリクエストもらったのでもうひとつ違うverの書こうと思ってます。
今回もちょっと雑談いれます‼️‼️👍🏻ᖛ ̫ ᖛ )
1thミニアルバムおめでとうございます!!
配信あったじゃないですか!!あれ早めに開始するっていう通知きてたの気づかなくてインスタ開いたらM!LKが配信中ですみたいなでてきてえええ⁉️⁉️⁉️⁉️⁉️って思って急いで入ったら告知終わってました笑笑笑笑
だからXとか情報あがるまでええなにがなにがなにがみたいに思って焦りました笑
わたしは塩﨑太智verと通常盤買おうと思ってます!!!
全然まだまだリクエストくださいね!!
コメント
10件

わーー今回のお話も最高でした( ᐪ꒳ᐪ )♡💙さんの体調不良のお話を大好きなしおさんの構成と文章で見れてテンションめっちゃめちゃ上がるし、もう好きすぎて胸がくるしいです︎🌟🌀´-短いお話ももちろん好きなんですけど、長いお話見応えあってほんとうに好きなので幸せでした( ˶>ᴗ<˶)🎵 これからも楽しみにしてます🍀*゜
ちょっと待って、好きすぎます😭口角飛んでいきました。まじでどタイプすぎます🫶 あの、急ですけどタメで話すことって可能ですか!

最高です!大好きなんですよ!この作品!これからいっぱいみたいでっす!次のも楽しみです!!