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Side蒼



晴れて始まった蓮との付き合いだけど、蓮は学校では相変わらず幼なじみとしての対応しかとらない。

隣のクラスの蓮に教科書借りに行けば、「しっかりしてよね、はい」で終了。

弁当一緒に食おうって誘えば、「明姫奈と食べるから」ってシャットアウト。

しまいには「もうケンカしたの?」って明姫奈ちゃんに心配される始末。

…なんかあいつ、付き合う前よりツンケンしてないか?

まぁ、照れてるだけなんだろうけど…

ツンデレはこれだから困る。

けどそのぶん、ふたりきりの時のデレ具合が半端なく可愛いケドな。





「なー岳緒。おまえ隣に用事ね?」

「は?3組?ないけど」

「そ」

「なんだよ。また忘れ物かー?しっかりしなさいよねー」

「ちげぇよ」

「じゃなんで」

「…べつに」

あー。蓮に会いてぇ。

話なんてしなくていい。ただ姿を見るだけでいい。

他の野郎に話し掛けられてねぇか、とかも気になるし…。

けど、用もないのに会いに行くと怒られるしな…。

あー。なんか俺、付き合う前よりヤバくなってる気がする…。

昨日の蓮、ほんとに可愛かったな…。

嫌われたくない、って泣きそうになるは、嫉妬はするわ…今までの俺の苦しみがそっくり蓮に移ったような気持ちを示されて、この言葉を反応にどんなに憧れたか…って幸せすぎていちいち頭おかしくなりそうになった。

あとは…蓮が「好き」って言ってくれれば、もうなにも言うことないんだけどな。

けど、蓮がそれを言うのは、ものすごく勇気がいることなんだろう。

それは、俺の言動に対しての反応をみれば、十分理解できる。

すぐに真っ赤になったり、つっぱねたことを言ったり…その初心(うぶ)さは、可愛いを通り越してハラハラさえしてくる。

だから、あまり大胆なことしちゃいけないな、と自制を心がけようとする…けれど、そんな反応を見ると余計に煽られるあたり、…俺って案外Sなのかもしれないな。

とにかく、蓮の口から聞きたいんだ。

あいつが初めて芽生えさせた気持ちを。

でも、こんなに幸せなのに、まだそんなたった二文字の言葉を望むなんて、俺は、ワガママなんだろうか…。

「なんか蒼、昨日からずっとぼーっとしてんなぁ。もしかして好きなコのことでも考えちゃってるわけー?」

ぎく

岳緒に蓮とのことを知られるのはまずい。

蓮との約束もあるが、岳緒は蓮のファンだ。

『おまえに蓮さんは似合わないだの』なんだの、難癖つけられるとむかつく。

っていうか。ずっと気になってたんだが…こいつの蓮への気持ちって、本音はどこまでのものなんだろう。

芸能人に憧れるようなもの、って本人も言っていたし、言動から考えても、そうなんだろうけど、本当にそれだけの気持ちなのか?

「いいよなぁ蒼、セイシュンしちゃってさー」

「…しんどいだけの片想いだぞ…」

「って言ったって、終わってないだけいいだろ。…俺なんか、振られたてほやほやで、ハートブレイク中だっていうのに…はぁ」

…やっぱり考えすぎかな。だって今岳緒は彼女に振られたショックで、こんなにも痛々しく傷心中だ。

こうまで凹んでる岳緒は珍しい。それだけ本気だったってことなんだな。

「なんだよ岳緒、おまえらしくないな。ネクストって言ってただろ?振ってきた女のことなんか、さっさと忘れろよ」

「いや別に元カノのことなんかどーでもいいんだけど…なんだかさぁ」

はぁー、と語尾は長い溜息に変わる。

どうでもいい?てっきり元カノに未練があって凹んでいるのかと思ったが、違うのか。

意外な話の展開に、『どういうことだ?』と俺は深刻な顔つきでいる岳緒をまじまじと見つめた。

「振られたことじゃなくて、振られた時に言われた言葉が気になって、しこりになってるんだ」

「しこり?えっとたしか」

「『もっと他に好きな人がいるんでしょ』ってやつ」

「……」

「直後は『なに言ってんだ』って思ったんだけど、後からなんか引っかかってきて…。『好きな人』って言われれば、そういやひとりだけ思い当たるな…って」

「……」

嫌な予感がしてきた。

もういい岳緒。その先は言うな。

「もしかして俺って、ずっとそのコのこと好きだったのかな、って。憧れって思ってたけど、ほんとはリアルに望んでたのかな。…あのさ、相…」

ぶん

岳緒の言葉を遮るようにケータイがなった。

助かったとのばかりに、俺はすかさずスマホを手に取った。

蓮からラインが来ていた。

『今日は買い物して帰るから、荷物持ちやってよ。部活終わるの、待ってるから』

相変わらずのツンデレ発言に、胸が少し弾む。

買い物なんてしなくても冷蔵庫一杯じゃん。蓮のやつ、一緒に帰りたいなら、そう言えばいいのに。

「蓮さん?」

「ああ」

と返事したところで、俺ははっとなって岳緒を見た。

どうしてわかったんだ?

「気づいてねぇの?おまえってさ、蓮さんとラインすると、ちょっと口元がしまりなくなるんだよね。へら、って。そん時ばっかりは、クールな顔がのろけた顔になる」

「は…?んなわけ…」

岳緒はニヤリと笑みを浮かべた。

「なるほどねー。やっぱそういうことか…」

「……」

意味深な言葉を問い質す前に、岳緒は立ち上がると教室を出て行ってしまった。

それから岳緒は授業をサボったために、結局さっきの言葉の続きは聞けずじまいだった。

けど、すでに俺は岳緒の真意に気づいてしまっていた。

困惑を感じたまま、俺は部活に向かった。





部活が終わったのは、日が沈みかけた夕方だった。

いつもより少し早く終われたのは、今日は鬼部長の堺先輩が休みだったからだ。

岳緒は部活にはちゃんと顔を出した。

いつも通り練習をこなしていたけど、どことなく上の空で、やたらミスが多かった。

わかったよ。わかったよ、岳緒。

やっぱりおまえ、蓮のこと本気だったんだな…。

くそ…。だからおまえはバカなんだよ…。

昨日今日で気づくんじゃねぇよ…!

俺はおまえと女をめぐってケンカなんかしたくねぇのに…。

練習の間、俺はずっと岳緒を避けるようにしていた。

けどやっぱり、恐れていた事態はすぐにやってきた。

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