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毛が逆立つ奇妙な感覚を覚えた僕は、恐る恐る振り返った。

《《ゲームオーバー》》


キズだらけの爆弾おにぎりみたいな雄ネコが、乗用車の天井に見下ろして、“シャー”と威嚇する。


縄張りを荒らしたよそ者に牙をむきだした。震え上がった僕は、その場で凍りついた。


「おまえ誰だ?ここいらで見かけねぇ|面《つら》だな」

「ボス、こいつ家ネコとちゃいますか?」 


ボンネットにもう一匹いる。三毛ネコは僕に向かって不敵な笑みを浮かべた。


「す、すみません。道に迷っていまして、すぐに出ていきますから」


「ほら、やっぱ、家ネコですぜ」


「ふん、家ネコの分際で縄張り荒らしとは、いい度胸をしているぜ」


「ですから迷っただけです。すぐに出ていきます」 


血に飢えた野良ネコたちは僕の話なんか訊いちゃいなかった。 

ついさっき逃げ出して、早くも《《ラスボス》》

に出くわしてしまった気分だ。


先に子分が地面に降り立つ。


しっぽを揺らしながらゆっくりと向かってきた。一方、僕は身を低くする。


背を向けたら、いつ襲われてもおかしくない状況に陥った。 


子分はシャーと威嚇しながら飛びかかる。


僕はとっさにカエルをくわえると投げつけた。「カエル!?」

「カエルだと!?」 


ボスネコもカエルに反応した。 


二匹がカエルに気を取られている隙に逃げ出した。


まんまと逃げおおせたと思いたかった。


だが、野良の世界はそんなに甘いものではなさそうだ。


なぜなら、口の端からカエルの足が飛び出したボスネコが、追いかけてきたからだ。


モータープールまで戻ると車の下にもう一度逃げ込んだ。


車の下から下へと移動する。


うまく距離が開いたと思いきや、悪い事は重なるものだ。頭上にある車がそろそろとタイヤをきしませながら動き出したではないか。


チャンスとばかりにボスネコは『ワギャー』と、雄叫びを挙げながら僕の背中めがけて飛びかかってきた。 


僕はあらん限りの力を振り絞り、瞬間移動のごとく猛ダッシュ。捕まる寸前のところで回避した。


「チッ! ネズミみたいにすばしっこい野郎だぜ。


だが、所詮ネズミはネズミだ」勝ち誇った顔をする。僕の背後にブロック塀がそそり立っていて、文字通りの袋のネズミになっていた。


凛太朗ーー


このとき僕はエミちゃんの声を訊いたような気がした。

モータープールを見回す。

ボスネコの背後にすらりとした人影が立っていた。


『にゃ! にゃ! にゃ!』 


僕は必死になって、エミちゃんの名前を呼ぶ。


「雌ネコの名を呼ぶとは、女々しい奴め」


エミちゃんの名前を雌ネコと勘違いしたボスネコは僕の上に飛びかかった。


「凛太朗? なんてこと……。ーーコラッ! うちの凛太朗になんてことするの!」 


エミちゃんは拳を振り上げ、見たこともないような剣幕でボスネコを追い払った。


先に子分の三毛ネコが逃げ出した。


分が悪いと思ったのか、僕の上に飛び乗ったボスネコは、しぶしぶ退散する。僕は救世主めがけて駆け出した。

エミちゃんとネコの僕

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