テラーノベル
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2015年のある日。東京二十三区に西洋妖怪が攻め込んできた。真冬の空の下、奴らは道を紅く染めていった。人々の悲鳴と奴らの笑い声、肉が裂ける音が周囲を包む。ある者は死にたくないと叫び、またある者は懺悔を始めた。
そこはまさに地獄だった。
ここで死ぬのだろうか。誰もがそう思った。だが、その絶望的な状況に一筋の光が見えたのだ。なぜならあの風の帝が助けに来てくれたからだ。
風の帝とは、日本で最も強い軍隊で、魔法陣という特殊な能力を使うプロたちの集団だ。そして、この国で唯一西洋妖怪と互角に戦える可能性がある組織なのだ。
彼らならきっと何とかしてくれるという人々の期待を背負って彼らは戦った。
2018年。3年間の長い戦いに終わりが宣言された。日本に居た西洋妖怪を風の帝が殲滅したからである。これでやっと日本に平和が戻ってきたと人々は喜んだ。だが、現実はあまくはなかった。
2019年。人々の生活を一転させる知らせが入った。西洋妖怪が人間に紛れて生活しており、密かに人間を殺しているという知らせだった。すでに100件の被害報告が上がっており、自分の近くにもいるかもしれないと世間は騒いだ。そして、人々は疑心暗鬼になり殺し合いを始めた。それもそのはずだ。何せ、隣の家に住んでいる住民や自分の家族が西洋妖怪かもしれないのだから。あくる日もあくる日も殺し合いが続いた。女も子供も政治家たちも、相手を信じることができずに互いを殺しあった。
2021年。日本の人口は約6割も減ってしまったが、風の帝が今度こそ西洋妖怪を殲滅したと政府が発表した。その発表を受けても人々は安心できなかった。そんな世間の様子を受け、政府は風の帝に政権を譲り「次またこのような事態になったら彼らが対策を取り、守ってくれるだろう」という意思表明をした。この表明に対してそれなら安心できると殺し合いをやめた。
これが表の歴史である。では真実は―?
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