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白山小梅
白山小梅
12
「赤点取りそうなんだ」
笑いを堪えた声が落っこちた。結局、馬鹿にされる未来は回避できなかった模様だ。
「取らないし。柊、夏休みの予定あるの?」
「まあ、ぼちぼち。地元にも少し帰るかな。柴崎は?」
「あたしは帰んないかな。帰っても迷惑がられるだけだし、こっちに居る方がマシ」
スマホへと視線を移して、ショッピングの画面に戻る。柊はいつもの相槌を落とさずに、下腹部を優しく撫でてくれた。
「そういや、オーナーの知り合いにナイトプールの招待券もらったんですけど、柴崎、一緒に行く?」
「え!行きたい!」
「じゃあ、来週の日曜は水着選びに行こ。夏休みの目的出来たな」
「ナイトプール、行ってみたかったんだ。嬉しい!ありがとう柊」
「いーよ。そのかわり、挟んでいい?」
「は、さむ!?」
120%、ソウイウことだと思っていれば「ココか、ココに」
柊はあたしの内ももと胸をすりすりと手のひらで撫でるので、予感は的中した。
優しい?違う。柊は優しさのベールを纏っているだけで中身はただの性欲魔人である。
「無理。いたた、おなかいたい〜……」
「けち。柴崎が寝たら抜こ」
「トイレで抜いてきてよね」
「あ〜、間に合わなくて汚したらごめん」
「は?硬くなってるこれ抓っていい?」
「それはマジでやめて〜、再起不能になる〜」
すすり泣く真似をしながらも、柊はゆったりと腰周りを摩ってくれた。
あたしの峠は一日目である。今日、生理四日目だから、本来ならば越えているのだ。
でも、男の柊は生理の知識があるようでないらしく、割りと本気度高めに腰やお腹をさすってくれる。
柊が触れる場所が、においが、体温が。
あったかくて、気持ちいい。
……でも、柊、女性の扱いが上手すぎる気がする。
彼女要りませんって宣言した男とは思えない。
──やっぱり、この三年の間に彼女が出来たのかもしれない。
高校の時の” 好きな子 “と、あの後進展があって、突き動かされる出来事を経験したのかもしれない。
聞けばいいのに。
じょうずに聞き出せればいいのに。
A4サイズの紙に書かれた” 立ち入り禁止 “の文字がチラつく。
ラインを間違えちゃいけない。もう一度越えたら、今度こそこの場所には戻れない。
心臓にもやっとした気持ちを残しては、眠れるものも眠れない。今日は柊の方がねむるのが早いのか、腰周りを撫でていた手はいつの間にか止まっている。
「柊?」
背中越しにいる柊を呼べば、思い出したかのように手の動きが再開された。
「まだ寝てないのかよ。早く寝てよ、俺が抜けないっしょ」
不貞腐れた声が後頭部に届いた。どうやらまだ全然らしいので、ごろんと寝返りを打って、頬杖をつく柊を見上げた。カーテンの隙間を縫って差し込む月の灯りが、ほどよく彫りの深い、甘美な造形を、さらに幻想的に映している。
この男、黙っていれば一級品なのに、口を開けば舐め腐っている態度が本当に気に入らない。
「柊って本気であたしのことなめてるよね」
「そんなこと無いよって言ったら口でシてくれる?」
「噛んで良いならするけど、それでいい?」
「やめろ。やっぱり俺を殺す気か」
「……ね。噛まないから、寝る前のちゅうして」
「はあ?無理」
即答って、ひどすぎる。
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