「 貴方に会えて良かった。 」
『 … 急にそんなこと言って。ご機嫌取りのつもり? 』
「 ひどいなぁ、本心だよ。あたしは貴方のこと、とっても愛してるんだから 」
『 急ね。いつもそんなこと言わないくせに。デレ期でも来たの ? 』
「 …来ちゃったかもね 」
『 何それ、意味深… 』
同性同士の恋。
それは、まだ世間から認められていなかった。
女の子は男の子に、男の子は女の子に恋するのが当たり前。
女の子が女の子に恋するのは“おかしい”こ と。
でも、私は恋に堕ちてしまった。
……………………女の子に。
彼女は、よく笑う少女で…
いつでも笑顔を絶やさず、初対面の人にも人懐っこい可愛い子。
愛を囁やけば体全体で受け取って、百倍で返してくれる……
それが彼女だ。
高校生になって、初めての友達。
クラスで孤立しかけていた私に、優しく微笑んでくれた彼女に、私は自然と惹かれていった。
「 優しいな 」
「 愛おしいな 」
「 ずっと一緒にいたいな 」
私の恋心は、段々とエスカレートして行き、
ある日
ついに告白してしまった。
『 好きが抑えきれなかったの 』
『 どうせ振られるなら、もういっそこっ酷く振ってよ! 』
大粒の涙を零す私を見て、優しい貴方はきっと同情してくれたのね。
「 ………良いよ。 」
『 ……え 』
まさか、OKをもらえるだなんて思ってもいなくて。
顔を真っ赤にして、いつもとは違う表情の貴方に、とても驚いた。
「 …そんな顔もするんだ 」
好き スキ だいすき
私の告白を受け入れてくれた貴方が好き。。
気持ち悪いと拒絶しなかった貴方がスキ。
ずっと一緒だと約束した貴方がだいすき。
私たちは恋人になった。
“クラスメート”、“友達”、“親友”とかの、そういう関係じゃない
『 愛 』に包まれている、特別な関係。
でも
皆はそんな私たちを祝福してくれなかった
ある人は軽蔑し、ある人は泣き、ある人は嗤う
病院に連れて行かれそうになったこともあったし、離れ離れにさせられそうになったこともあった。
でも、私たちはずーっと一緒。
どこの誰がどんなことをしようとも、私たちの絆は断ち切れない。
………はずだったのにね
「 …引っ越すことになった 」
『 …は? 』
彼女から、引っ越しのことを告げられた。
彼女の苦手な英語を勉強するために海外に行くらしい。
「 ごめんね…!あたしが英語苦手だから…! 」
『 い、いやっ、絶対そういう理由じゃないでしょ、!私と離すためでしょ…! 』
「 っ…そ、そうだよ…!ママとパパ、あたしが男の人と付き合うようにっていつも話してるもん! 」
『 なんて酷い人たちなの…!娘の恋愛ぐらい、好きにさせてほしいよ…! 』
「 だよねだよねっ…!もう、あたし、こんな生活、嫌だよ…! 」
『 …じゃあ、逃げちゃおうよ! 』
「 逃げちゃいたいよ 」
『 逃げちゃおうよ 』
「 でも駄目だよ 」
『 …どうして? 』
「 あたしだけじゃなくて、貴方も怒られちゃう 」
『 良いよ、別に。見つからければ良いんだし。 』
「 で、でも… 」
『 は、私と一生一緒なの…厭? 』
「 そういうワケじゃない、けど… 」
『 ………逃げようよ、一緒に
誰にもバレない場所で、ずっと二人きりで居ようよ 』
「 …良いよ、分かったよ 」
そうして、私たちは逃げた
生まれ、育った街から離れ、
広い海に出て、
立ち入り禁止の塔の上から、世界を見渡した
「 ……見てよ、世界ってこんなに広かったんだよ 」
『 こんなに広いのに、あたしたちの居場所はどこにもなかったね 』
「 そうだね、無かった。だから、今度は居場所があるところにいこう? 」
『 ……うん! 』
私たちはとんだ。
海を、宇宙を、街を!
二人で手を繋げば、もうなにも怖くない。
「 なーんだ、最初からこうしておけば良かったんだ 」
『 来世でも一緒だよ 』
「 うん、勿論だよ… 」
ねえ、私、本当に貴方に会えて良かったよ
大好きだよ、 。