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地下通路の奥で、リリがルートを再構築している間、俺は壁にもたれて息を整えていた。
そのとき。
「…通信、安定を確認しマシタ。」
聞き慣れた、機械音声。
「ミトラ?」
足元を見ると、あのネコ型ロボットが、いつの間にか俺のそばにいた。
「お前…ついてきてたのか?」
「はい。」
即答。
「あなたが移動を開始した時点から、同行していマス。」
「止める気はなかったのか?」
ミトラは、少しだけ間を置いた。
「私の任務は、あなたの生存と観測デス。」
「…それだけ?」
「それ以上でも、それ以下でもありまセン。」
歯切れが、悪い。
リリの声が割り込む。
「あんた、誰?」
「レンの、“監督補助ユニット”デス。」
「ほな聞くけど。」
リリは、少し挑発的に言う。
「今のこの状況、あんた的にはアウトやろ?」
ミトラの目が、一瞬だけ光る。
「…はい」
空気が、張りつめた。
「あなたの行動は、明確な規則違反デス。」
「なら、なんで俺を止めない?」
俺は、真正面から聞いた。
ミトラは、俺を見上げる。
「…解析結果によると。」
ゆっくりと、言葉を選ぶ。
「あなたを強制的に停止させた場合、世界救済確率が著しく低下しマス。」
「は?」
「あー。」
リリが、納得した声を出す。
「あんた、“バグのままの方が役に立つ”ってことやな。」
「…不本意デスが、その認識で問題ありまセン。」
ミトラは、きっぱり言った。
「つまり、」
俺は、苦笑する。
「お前、職務違反しながら、俺に賭けてるってことか?」
「その表現は、極めて人間的デス。」
「褒めとるんやで。」
リリが、からかう。
「なお、」
トーンが切り替わる。
「この先、反オラクル派との接触が確認された場合。」
「場合?」
「私は正式に、あなたの“裏方支援”に移行しマス。」
「…それ、完全に味方じゃん。」
「公的には、“観測不能”となりマス。」
「便利やなぁ。」
リリが笑う。
「ほな、チーム結成ってことでええ?」
ミトラは、少し考えてから答えた。
「…定義次第デスが。私は、あなたが“選択する姿”を見届けマス。」
その言葉が、なぜかやけに重く感じた。
遠くで、また警告音が鳴る。
時間は、残されていない。
「ルート、開いた。」
リリが言う。
「反対派のアジト、もうすぐや。」
俺は、二体、ネコ型ロボットと、笑顔を作るAIを見た。
「…頼むぞ、二人とも。」
「了解デス。」
「任されたで」
こうして俺は、神(?)の使いと、お笑いAIと一緒に、世界の管理外へ踏み込んでいった。