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しめさば
#独占欲
865
地下通路の奥で、リリがルートを再構築している間、俺は壁にもたれて息を整えていた。
そのとき。
「…通信、安定を確認しマシタ。」
聞き慣れた、機械音声。
「ミトラ?」
足元を見ると、あのネコ型ロボットが、いつの間にか俺のそばにいた。
「お前…ついてきてたのか?」
「はい。」
即答。
「あなたが移動を開始した時点から、同行していマス。」
「止める気はなかったのか?」
ミトラは、少しだけ間を置いた。
「私の任務は、あなたの生存と観測デス。」
「…それだけ?」
「それ以上でも、それ以下でもありまセン。」
歯切れが、悪い。
リリの声が割り込む。
「あんた、誰?」
「レンの、“監督補助ユニット”デス。」
「ほな聞くけど。」
リリは、少し挑発的に言う。
「今のこの状況、あんた的にはアウトやろ?」
ミトラの目が、一瞬だけ光る。
「…はい」
空気が、張りつめた。
「あなたの行動は、明確な規則違反デス。」
「なら、なんで俺を止めない?」
俺は、真正面から聞いた。
ミトラは、俺を見上げる。
「…解析結果によると。」
ゆっくりと、言葉を選ぶ。
「あなたを強制的に停止させた場合、世界救済確率が著しく低下しマス。」
「は?」
「あー。」
リリが、納得した声を出す。
「あんた、“バグのままの方が役に立つ”ってことやな。」
「…不本意デスが、その認識で問題ありまセン。」
ミトラは、きっぱり言った。
「つまり、」
俺は、苦笑する。
「お前、職務違反しながら、俺に賭けてるってことか?」
「その表現は、極めて人間的デス。」
「褒めとるんやで。」
リリが、からかう。
「なお、」
トーンが切り替わる。
「この先、反オラクル派との接触が確認された場合。」
「場合?」
「私は正式に、あなたの“裏方支援”に移行しマス。」
「…それ、完全に味方じゃん。」
「公的には、“観測不能”となりマス。」
「便利やなぁ。」
リリが笑う。
「ほな、チーム結成ってことでええ?」
ミトラは、少し考えてから答えた。
「…定義次第デスが。私は、あなたが“選択する姿”を見届けマス。」
その言葉が、なぜかやけに重く感じた。
遠くで、また警告音が鳴る。
時間は、残されていない。
「ルート、開いた。」
リリが言う。
「反対派のアジト、もうすぐや。」
俺は、二体、ネコ型ロボットと、笑顔を作るAIを見た。
「…頼むぞ、二人とも。」
「了解デス。」
「任されたで」
こうして俺は、神(?)の使いと、お笑いAIと一緒に、世界の管理外へ踏み込んでいった。
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