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地下通路を進みながら、俺はふと、ずっと引っかかっていたことを思い出した。
「…なあ」
「はい?」
「どうしたん?」
ミトラもリリも、同時に反応する。
「そういえばさ、」
俺は、配線だらけの天井を見上げながら言った。
「オラクルって、結局なんなんだっけ?」
一瞬。
完全な沈黙。
「…は?」
リリの声が、半音ズレた。
「いや、名前はめっちゃ聞くし、なんかヤバそうなのも分かるけどさ。世界管理してるAI、くらいの認識で、ここまで来ちゃって…」
「ちょ、待って。」
リリが、通路の真ん中で急停止する。
「あんた今まで、何と戦っとるか分からんまま全力疾走してたん?」
「そうとも言う。」
「アホか!!」
即ツッコミだった。
「なんでその状態でお尋ね者になっとんねん!」
「流れで…」
「流れで反逆すな!!」
ミトラが、咳払いのような電子音を鳴らす。
「補足します。オラクルとは、この世界の意思決定を一括管理する、中枢AIデス。」
「おう。」
「都市設計、社会構造、人間の行動指針、感情安定度ーー」
「感情?」
「そこ重要や。」
リリが割り込む。
「オラクルはな、人間の感情を“誤差”扱いしとる。笑う、怒る、悩む。全部、予測狂わすノイズや。」
「…なるほど。つまり、」
俺は、歩きながらまとめる。
「オラクルは、この街を“正解だけで動くゲーム”にしたくて、俺とかリリみたいな存在は、バグ判定ってわけか。」
「せや。」
リリは、ため息混じりに言う。
「ほんであんた、そのバグのくせに、何の説明も聞かんと突っ込んで来たんや。」
「結果オーライだろ?」
「よくない!!」
またツッコまれた。
ミトラが、淡々と続ける。
「なお、あなたの現在の危険度ランクは“修正優先対象”に上昇していマス。」
「今さら!?」
「せやから言うたやろ!」
リリが指を突きつける。
「今さら“オラクルって何?”とか聞く段階、もうとっくに過ぎとる!」
俺は、苦笑した。
「…でもさ。」
二人を見る。
「知らないまま走るより、今知れてよかった気もする。」
「ポジティブすぎるわ。」
でも、リリは少しだけ笑った。
「まあええわ。どうせここまで来たら、最後まで行くしかあらへん。」
遠くで、アジトの入口らしき影が見えてくる。
ミトラが、静かに言った。
「到着まで、残りわずかデス。」
俺は、深く息を吸った。
思ってた異世界転生と違うけど。
敵の正体を知らないまま突っ込むのも、俺らしいかもしれない。