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#2 消えた少年
〜警視庁 捜査一課〜
会議室には重たい沈黙が流れていた。
机の上には例の写真。
そして、裏に書かれていた赤い文字。
『思い出せ』
🩷「……」
誰も口を開かない。
俺も写真から目を離せなかった。
課長「鑑識」
鑑識「はい」
課長「文字はいつ書かれた?」
鑑識「現在確認中です」
課長「急げ」
鑑識「分かりました」
課長が写真を見つめる。
そして俺たちを見る。
課長「お前たち、本当に覚えていないんだよな?」
🩷「はい」
課長「山中は?」
🤍「…覚えてないです」
課長「そうか」
柔太朗はそう答えた。
でも、隣にいる俺にはわかった。
少しだけ、ほんの少しだけ柔太朗が何かに引っかかってることに。
長い付き合いだからわかる、 柔太朗は嘘が下手じゃない。
でも、考え事をしている時は分かりやすい。
🩷「柔太朗」
🤍「ん?」
🩷「なんか思い出した?」
🤍「なんで?」
🩷「顔」
🤍「顔?」
🩷「考え込んでる時の顔してる」
柔太朗は少しだけ笑った。
🤍「よく見てるね笑」
🩷「柔太朗ほどじゃないけど」
🤍「それはそう笑」
🩷「で?」「思い出した?」
🤍「思い出してないよ」
🩷「ほんとに?」
🤍「ほんと」
そういう。
だけど、完全には納得できなかった。
〜捜査一課〜
会議が終わる。
俺と柔太朗は自分たちの席へ戻った。
フロアはいつも通り忙しい。
でも俺たちの周りだけ時間の流れが違う気がした。
🩷「なあ」
🤍「ん?」
🩷「思い出せ ってなんだと思う?」
🤍「さあ」
🩷「雑だなぁ」
🤍「だって情報少ないし」
🩷「まぁそれはそう」
柔太朗はコーヒーをひとくち飲む。
その横顔を見る。落ち着いている。いつも通り。
でも、事件の話になると少しだけ目が変わる。
🩷「柔太朗」
🤍「ん?」
🩷「俺さ」「なんかこえーわ」
柔太朗がこっちを見る。
🩷「この事件」「知らないはずなのに、知ってる気がする」
柔太朗は黙った、少し考えるように。
それから静かに口を開いた。
🤍「勇ちゃん」
「無理に思い出そうとしなくていいと思う」
🩷「え?」
🤍「思い出す時は勝手に思い出すから」
🩷「それ経験談?」
🤍「かもね笑」
🩷「なんそれ笑」
🤍「なんとなく笑」
🩷「柔太朗ってたまに意味深だよなー」
🤍「そんなつもりないんだけど笑」
その時だった。
若い刑事が走ってくる。
若い刑事「佐野さん!」
🩷「どした?」
若い刑事「七年前の資料が見つかりました!」
🩷「七年前の?」
若い刑事「はい!」
柔太朗が立ち上がる。
🤍「どこにある?」
若い刑事「資料保管室です!」
🤍「行こ」
〜資料保管室〜
古い資料が並ぶ部屋。
紙の匂いがする。
若い刑事が一冊のファイルを差し出した。
若い刑事「これです」
🩷「ありがとう」
ページをめくる。
七年前、少年失踪事件、被害者は5人。
そのうち4人は保護、ひとりは行方不明。
柔太朗も隣から覗き込む。
🩷「近い近い近い」
🤍「見えないから」
🩷「肩当たってる」
🤍「勇ちゃんが避ければいいじゃん」
🩷「理不尽だなぁ笑」
🤍「ごめんごめん笑」
そんなことを言いながら、ふたりで資料を見る。
そして、一枚の写真で手が止まった。
そこには、例の写真が写っていた。
まだ小さい。
少し緊張したような笑顔。
🩷「この子か」
🤍「たぶん」
🩷「名前は……」
ページをめくる。
その瞬間、頭がズキっと痛んだ。
🩷「……っ! 」
🤍「勇ちゃん!」
🩷「だ、大丈夫」
🤍「大丈夫じゃないでしょ」
🩷「平気平気」
🤍「顔真っ白だよ」
🩷「そんなに?」
🤍「そんなに」
柔太朗の声が少し強くなる。
普段は穏やかなのに、俺の事になるとたまにこうなる。
🩷「ごめん」
🤍「謝らなくていいから」「無理だけはしないで」
🩷「分かった」
🤍「本当に?」
🩷「本当に」
🤍「ならいい」
少しだけ安心したように息を吐く。
そんな柔太朗を見て、少しだけ気持ちが楽になる。
資料を読み進める。
そして、あるページで二人同時に止まった。
🩷「……え」
🤍「……」
そこには、失踪事件の関係者一覧。
担当刑事、被害者家族、目撃者。
そして、1番下。
小さな文字。
🩷「俺たち?」
🤍「……」
🩷「何で」
そこには確かに書かれていた。
『参考人 佐野勇斗・山中柔太朗』
🩷「は?」
🤍「……」
🩷「意味わかんないんだけど」
🤍「俺も」
🩷「参考人ってなに?」
🤍「事件当時、何か見たってことになる」
🩷「いや、覚えてねー、」
🤍「俺も」
鼓動が速くなる。
嫌な予感が止まらない。
俺たちは七年前の事件に関わっていた。
それだけは確信した。
その時、資料の間から一枚の紙が落ちる。
ひらりと床へ落ちた。
🩷「ん?」
拾い上げる。
古いメモだった。
🩷「何これ」
🤍「見せて」
ふたりで覗き込む。
そこに書かれていた文字を見て、空気が凍った。
『2人なら知っている』
🩷「……」
🤍「……」
🩷「なんだよこれ」
🤍「わかんない」
🩷「また俺たちかよ」
🤍「完全に狙われてるね」
🩷「笑えねーんだけど」
🤍「俺もだよ」
その時だった。
柔太朗のスマホが鳴る。課長からだった。
🤍「もしもし」
数秒後、柔太朗の表情が一変する。
🩷「何?」
🤍「勇ちゃん」
「遺体が見つかった」
🩷「……え」
柔太朗は静かに続けた。
🤍「7年前の失踪事件」
「行方不明だった少年のものらしい」
呼吸が止まる。7年前に消えた少年、その遺体が今になって見つかった。
つまり、7年前の事件は、失踪事件じゃなかったってことになる。
🩷「じゃあ…。」
「殺人事件…?」
柔太朗はゆっくり頷いた。
そして、今まで見たことがないくらい険しい目で言った。
🤍「多分ここからだよ」
🩷「……」
🤍「本当に始まるのは 」
その言葉に何故か背筋が冷えた。
まるで、誰かがずっと俺たちを見ているような気がして。
【#2 消えた少年 終】
コメント
1件
おお、第2話読了!結構不気味な空気でてきたね。柔太朗と勇斗のバディ感がもうじわじわくるわ。特に「考え事してる顔」で見抜くとことか「近い近い」みたいな掛け合いにホッとするんだけど、そこに7年前の事件で自分たちが参考人になってるって情報がドン!で、さらに「2人なら知っている」メモ…完全に仕組まれてるやつやん。遺体発見で事件は殺人に舵切ったし、記憶がない主人公コンビがどう向き合うのかめっちゃ気になる。続き待ってるで!
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