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アリィ「やられた…!」
ノア「こんなタイミングが噛み合うことって…」
アリィ「あの門を跳んで超えるのは…」
ノア「まって落ち着いて。流石に高すぎて危ないし、ここにはハンターが居るんだよ。」
アリィ「でも…」
ノア「秋月の山に行く方がいいと思う。アリィ、ジークがタダでやられるとはボクは思えない。信じよう。 」
アリィ「……うん。」
ノア「すみません、この門を閉鎖したってことは悪魔が出たんですよね?」
門番兵「あぁ。悪いな、決まりだから開ける訳には行かないんだ。」
ノア「分かってますよ。危ないので、秋月の山の方から出ようと思いまして。悪魔がいる付近って分かりますか?」
門番兵「俺は封鎖しろという通達があって封鎖しただけだ。正確な位置までは分からないから憶測になるが…地図は出せるか?」
ノア「どうぞ。」
そう言い、ノアは自分の地図を渡す。
門番兵「この辺りだな。通達があった直前に爆発が起こった場所だ。ここからだから大体でしかないが…十中八九悪魔だろう。」
ノア「ありがとうございます。アリィ、悪魔を避けた道を通ろう。ハンターに会うのはゴメンだよ。今頃混んでるだろうし。」
アリィ「…そうだね。悪魔って爆発を起こせるものなの?」
ノア「ボクはそんな悪魔見たことないけど…知能があれば可能性はあると思う。ボクのことは気にしないで。」
アリィ「じゃあ行こうか。」
ノア「出発をしたはいいけど…どの道も全部ダメ!ヒト、ヒト、ヒト!なんで!?」
アリィ「ハンターは1箇所に固まってたし、多分同じように皆避難してるんだと思う…後、野次馬。」
ノア「んもー!野次馬より自分の命大切にしてよ!」
アリィ「ごもっとも。これ、突っ込む?」
そう言い、アリィは川のようになっている人混みを指で指す。
ノア「絶対流されてはぐれるって…」
アリィ「秋月の山に繋がる道全部これだもんね…この後秋月の山に繋がる道も封鎖される可能性があるから、皆移動してるんだと思うけど…」
ノア「野次馬してるヒト達は何考えてるのか…どうする?待つ?アイツらも早く動きは出来ないと思う。ジークを抱えてるし… 」
アリィ「んー…今はぐれるのは避けたいし…よし。あんまりしたくなかったけど、ハンターが利用してる道を使おう。」
ノア「げぇ…まぁでも1番通りやすいもんね。」
アリィ「にしても…姿を消す悪魔かぁ。」
ノア「妖説もあるね。」
アリィ「ノアは覚えないの?」
ノア「全く。アリィも思う?」
アリィ「うん。多分悪魔じゃなくてアヤカシ。」
ノア「なんにしてもこの状況ではやめて欲しかったよ。?」
アリィ「どうしたの?」
ノア「何か変な音がしない?」
アリィ「何のために出してるのか分からないハンター達の掛け声なら。」
ノア「アリィってたまに冷たいよね…。そうじゃなくって。」
アリィの頬を冷たい風が撫でる。
アリィ「風の吹く音?」
ノア「そう、それ。」
アリィ「確かに突然吹き始めたような…」
アリィが疑問を抱いた直後、轟音とも言える風の音と共に巨大な生物が現れる。
アリィ「…まずい…」
ソレは蜘蛛のような見目だが、嘴のような口を持ち、身体中に鎌のような角を生やしていた。
アリィ(魔法はこの場所で使うのはリスクが高すぎる。まだ気づいてはいない…動いたら気づかれる…。)
アリィはそう考えながらノアに目をやる。
ノアもまた同様に悩んでいるのか、動かない。
???「全員、伏せろ。」
その言葉に従い、アリィ達は伏せる。
ノア(ここはハンターに任せた方がいい。)
2人が伏せた直後、大きな風切り音が聞こえる。風切り音が聞こえなくなり、伏せろと指示した人物の声のみが聞こえる。
???「幻か。」
アリィとノアは立ち上がり、支持した人物の姿を見る。その者は黒い羽織を深く被っており、顔は見えない。唯一、特徴といえるであろう変わった剣を片手に構えていた。
ノア「あれは…刀?」
???「答えろ。」
謎の人物はアリィに刀を突きつけ、そう言った。
アリィ「…質問もされていないのに、答えられるとでも?言っておくけど、あの悪魔のことなんて私は何も知らないから。」
???「もう1人のガキはどこに居る。」
それは予想外の問いだった。
今それを聞くのは、ハンターでない者のみだ。
アリィ「助けてくれてありがとう。でも、誰かと間違えてない?」
アリィがそう答えた直後、謎の人物は突如刀を逆手に持ち、持ち手でアリィの腹部を殴る。
ノア「アリィ!」
アリィ「っ…いきなり殴られるような覚え、私したことないんだけど。」
???「痛めつけても無駄か。口の固いことだ。」
謎の人物はアリィの発言を気にもとめず、淡々とそう呟く。
ノア「…ここじゃ、場所が悪い。場所を変えよう。」
???「何故俺がお前らの言うことを聞かねばならん。」
ノア「掟破りには死を。それは君も分かってるだろう。でも1つ勘違いをしてるね。何も死を与えられるのは掟を破った本人に限らない。『羊』をボクに殺されたくはないだろう?」
???「……ちっ。」
謎の人物は、刀を鞘に納める。
ノア「アリィ、立てる?」
アリィ「大丈夫、ありがとう。」
ノア「怪我は?」
???「俺が無駄な傷を残すとでも思うのか?」
アリィ「ちょっと黙ってくれる?」
ノア(怒ってる…。)
アリィ「怪我はしてないよ。それより場所を変えると言っても、どこに行くの?」
ノア「このままの秋月の山への入口に行く。ここじゃハンター達の目があるけど、多分この後皆ハンター達は報告や事後処理に追われるはずだから、1番安全だと思う。」
アリィ「ハンターってそんな多忙なんだ…。」
ノア「この子をこれ以上傷つけるようなことしないでよ。」
ノアは謎の人物に念を押してそう言う。
???「ふん。」
アリィ「アレが居なくなったから、人混みも空いてきて行きやすくなって助かったよ。 」
???「居なくなった?馬鹿なのか?アレは所詮幻にすぎん。本体を叩かない限り再度現れるだろうな。」
アリィ「…ならアンタが殺るわけ?」
???「何故俺がそのようなことを。そんな義務はどこにもないが。」
アリィ「………。」
ノア「アリィ、気持ちは分かるけど抑えて…。」
アリィ「分かってる。ノア、こいつの、見たんだよね?」
ノア「うん。緊急事態だったし、ボクのはアリィのと違って目立ちにくいから…。」
アリィ「いいよ、それに関しては怒ってないから。コイツ、何?」
ノア「ちょっと信じ難いけど…フェニックスの1人だよ。…一応。」
アリィ「…冗談じゃないんだよね?」
ノア「この状況で言わないよ。」
アリィ「だとしてなんで私達を襲うわけ?」
???「俺は悪魔の手助けなんて任務受けていない。俺の受けた任務は、テオスをイドゥン教に渡るのを防ぐことのみだ。」
アリィ「それは私達を襲う理由にはならないんだけど。」
???「何故分からんのだ?お前が本当にお前という証拠があるのか?」
アリィ「はぁ?」
ノア「アリィ、多分彼は、妖のことを言ってる。」
???「そこのガキよりノッポの方が賢いな。その通りだ。妖はヒトに化ける。そうして、自らの領域に引きずり込む。少し小突いてやれば、大抵は逃げる。」
アリィ「本物なんですけど。謝ってくれる?」
???「嫌だが?」
アリィ「…随分とヒトをイラつかせるのが得意だね。私はアンタみたいなタイプ大嫌いだよ。」
???「奇遇だな、俺もガキは嫌いだ。」
ノア「まぁまぁ!」
アリィ「第一トスク国に、アヤカシがいるのは分かるけど、なんでイドゥン教にも居ると思うわけ? 」
???「お前は本当に何も知らないな。イドゥン教本拠地、フィヌノア国は来るものは拒まないが、出るものを拒む。つまり、偶然入り込み、家に帰れなくなった妖もいるという訳だ。」
アリィと謎の人物は依然、ギスギスした話し合いを続ける。
???「それでもう1人のガキは?」
アリィ「…ノア。」
アリィはノアに目配せする。
ノア「言っていいと思う。何かあれば、ボクが『羊』を殺すだけだよ。」
アリィ「とっくにイドゥン教に連れてかれたよ。」
???「そうか。」
謎の人物はただ一言そう相槌を打つ。
???「行くぞ。」
ノア「ボク達君と一緒に行くなんて、一言も言ってないんだけど…」
???「目的は同じだろう。俺はイドゥン教を追う。お前らもテオスを追う。ならば、共に行動した方がお前らの生存率を上げられる。」
アリィ「それ、アンタにメリットあるの?」
???「鳥野郎、『鴉』に文句を言われずに済む。」
ノア「…アリィ、事実だよ。無事にジークの元に行くには、彼は居た方がいい。性格はアレだけど、かなり強い。」
アリィ「…そうだね、性格は最悪だけど。」
傾「傾。俺の名前だ、覚えておけ。」
アリィ「30年後に気が向いたら覚えるよ。」
アリィ「……。」
傾「……。」
ノア(気まずい…。この2人相性悪すぎる…。)
ノア「ボク達、お互いのこと知らないし、少しぐらい話し合わない?」
傾「何を。」
ノア「え、えーと…あ、そうだ。ボク達名乗ってなかったよね? 」
傾「お前がノアで、ガキがアリィだろ。お前達の会話で分かった。 」
ノア「そ、そっか。」
(ジーク帰ってきて〜…!!)
アリィ「ノア。ここから本格的に山登りしなきゃいけないらしいから、足元に気をつけて。」
ノア「あ、うん。ありがとう。何その看板?」
傾「熊の出没する可能性を指す看板だ。 」
アリィ「クマ?」
傾「猛獣だ。道の通りにいくつも鈴が置いてある。それを鳴らし、近づかせないようにする。」
ノア「アリィが住んでた国には危険な生き物とか居なかった? 」
アリィ「そういうのはジークの方が詳しいから…。あ、でも獣じゃないけど虫がいたかな
。猛毒を持っててヒトを刺してくるの。こっちが何もしてなくてもね。」
ノア「何それ怖い…。」
傾「タチが悪いな。」
ノア「ねぇ、この先道がないけど… 」
傾「道ならここにあるだろ?」
傾はそう言い、細くヒト1人がやっと通れる道を指す。
ノア「……。」
考え込むノアの肩をアリィはガッと掴む。
アリィ「浮けるからってポルポルになろうとしたでしょ。」
ノア「………いや?」
アリィ「その間は明らか考えた証拠だよ。怖いから一緒に渡ってよ…。」
ノア「やだやだやだ」
傾「安心しろ。ここから転落したところで、大した怪我にはならん。」
ノア「転落って言った!」
傾「山の麓だぞ。この先こんな道ばかりだ。受け入れろ。」
アリィ「ひぃ…。」
傾「……。」
傾はアリィとノアが渡るのを無言で眺め、待つ。
ノア「あ、雨が降ってなくて本当に良かった…。」
傾「山の天気は変わりやすいがな。 」
ノア「もうやめてよ。そういうこと言うの。あぁ…やっと着いた。」
傾「ガキ、後はお前だけだ。」
アリィ「分かってるよ…。」
アリィはそう言いながら、細い道を足踏みし、土の硬さを確かめる。
アリィ(普通に歩く分には問題なさそう…?でも魔法は使ったら多分崩れるから使わないようにしないと…。)
アリィ「着いた…げほっ…いつの間にか、息止めてた…。」
傾「生物として欠陥的すぎるな。嫌でも慣れろ。」
ノア「スパルタだ…。」
傾「……獣か。」
傾は突然、別方向へ顔を向ける。
ノア「猛獣?でもここに鈴は無いけど…」
傾「仕方がない。このまま行く。獣が出たからと、山道を外れるなよ。回収はしてやらん。」
アリィ「ここから鈴までってどれくらいなの?」
傾「ここから遠くにある。」
アリィはそんなのは分かっていると言いたげな自分の口を抑えた。
ノア「ねぇ待って傾…。ボクちょっと疲れてきたというかもう体力が…」
傾「……あと3分歩け。」
3分後
ノア「もう無理、本当に限界!」
傾「そこで蹲るな。あそこで蹲れ。」
そう言い、傾は簡易的に作られた椅子を指で指す。
ノア「椅子だ〜!」
ノアは即座に椅子に座る。
アリィ「…随分詳しいけど、この国来たことがあるの?」
傾「今日来た。」
アリィ「…はぁ…。」
傾「この国で生まれた。国を出てから初めてここに来た。」
アリィ「毎回分かりにくい説明を…。じゃあこの山は登ったことがあるの?」
傾「それは無い。知っているだけだ。トスク国は山がそこら中にある。故に、ヒトの手が加えられていることが殆どだ。」
アリィ「椅子とか机がある理由も、知ってる理由も分かったけど…あの細すぎる道って、ヒトの手が加わってアレなの?」
傾「無論。」
アリィ「えぇ…。」
傾「驕るな。ヒトが常に獣より優秀な訳では無い。時には獣が利用した道を借りることも、真の賢い選択だ。」
アリィ「獣道だったんだ。通りで…。」
傾「獣のように賢くなれたらどれ程良いか。
今日はここで寝る。」
ノア「まだ明るいけどいいの?」
傾「予想以上にお前達の体力がないからな。」
アリィ「体力が無いのは認めるけど…アンタは随分自信があるんだね。」
傾「…3人しか居ないから言うが、俺はイニディア村からここまで走ってきた。 」
ノア「走って!?まぁそこまで頑張って来てたなら、なんか間に合ってなくても許せちゃうな…。」
傾「間に合っていなければ、意味は無い。山は日が沈むのが早い。ノッポをそこで簡易拠点の設営、ガキは俺と共に薪拾い。」
ノア「はーい。」
アリィ「アンタも私の事嫌いなのに、なんで私と?」
傾「…ただの気まぐれだ。」
ノア「あ、お帰り。…なんかアリィ凄い疲れてるね…?」
アリィ「け、獣道ですらない、 なんでもない所に、ずんずん進んでくから…。」
傾「そちらの方が、薪があったからな。」
ノア「あんまりアリィを危険な目に合わせないでよ?」
傾「『羊』を他人に殺されたくはないからな。安全な道で待機はさせてやったはずだぞ。」
アリィ「これは心労だよ…。」
ノア「そういえば、傾に少し聞きたいことがあったんだよ。」
傾「なんだ。」
ノア「えーっと…」
ノアは地図を取り出し、傾に見せる。
ノア「ボクらが居るのは今、秋月の山地方のここ。で、ここに国門…秋葉の門がある。で、今居るのが…えーと…」
傾「ここだ。」
ノアが指を迷わせていると、地図上の現在地点を指で指す。
ノア「そうそこ。それで思ったんだけど、ここに小さめの村があるけどなんで行かなかったの?いや別に怒ってるとかじゃなくって…」
傾「地図を見ると門までかなりの距離がある。全てに寄っていたら、いつまで経っても着かん。多少無理はするべきだと考えた。」
ノア「確かにそうだけど…ボクらは買いだめてるけど、君は話し方からしてあんまり物資がないんじゃないの?トスク国にきて間もない気が…」
傾「案ずるな。俺も馬鹿じゃない。全てに寄らないとは言ってないからな。」
アリィ「焚き火完了したよ。今日はご飯…」
傾「作れるのか。」
アリィ「まぁ一通り…。」
傾「やめておいた方がいい。火を炊いてるとは言え、匂いに釣られて熊などの野生動物がでかねん。干し肉は?」
アリィ「あるよ、あんまり好きじゃないけどね。」
傾「じきに慣れる。今日の見張りは俺が行う。」
アリィ「…任せていいのか凄く不安…。」
ノア「ほら。意地悪なことばっか言うからだよ?」
傾「ふん。」
アリィ「…じゃあお休み。」
ノア「おやすみー。」
傾「お前は寝ないのか。」
ノア「君を叱らなきゃいけないからね。」
傾「ほう。」
ノア「なんて不敵な返事なんだ…。君は一々人を怒らせるような余計な一言が多い。癖になっちゃったのかもしれないけど、少しは出さないように頑張って。君達が喧嘩するとボクが気まずいし…。アリィは本来ならあそこまで怒りっぽくないんだ。君から歩み寄ってくれればアリィも…」
傾「……お前にはあのガキがそう見えているのか?」
ノア「え?」
傾「本当に不必要に記憶を覗くことをしないんだな。『羊』から聞いた通りだ。いい事を教えてやろう。のっぽ。」
ノア「えーと…?」
傾「俺とあのガキがいがみ合うのは、同族嫌悪だ。」