テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
第12話「人格通信アプリ・ケロベロス」
マコトは高校三年生。短めの黒髪に緑のイヤホンをかけ、パーカーとジーンズ姿でスマホを握りしめている。彼は多重人格社会ではごく普通の若者で、三つの人格を持っていた。
一つは“代表人格”のマコト。
二つ目は“ノリ担当”。おしゃべりで軽口をたたく。
三つ目は“批評家”。口うるさく突っ込みを入れる。
最近、街で大流行しているアプリがある。その名も 「ケロベロス」。
スマホのカメラを通して、自分の中にいる人格を“外に投影”できる通信アプリだ。
画面には同居人格の顔が吹き出しのように浮かび、他人とも会話できる。
「へぇ、これが“ケロベロス”か……」とマコトがアプリを起動すると、画面に彼のもう二つの人格が現れる。
「おっす!遊び行こうぜ!」(ノリ担当)
「バカ言うな、まず課題だろ」(批評家)
教室ではすでに多くの生徒がアプリを使っていた。
黒髪ショートのユイは「恋愛人格」を画面に投影して友達に恋相談をさせ、別の男子は「勉強人格」を映し出してノートを貸し借りしていた。
このアプリの登場で、人格たちは“内側”にいるだけでなく、社会の前面に直接現れるようになった。まるでクラスにもう一人友達が増えたような感覚だ。
昼休み、マコトの机の上にはスマホが置かれ、画面に三つの人格が映って口論していた。
「アイス買いに行こうぜ!」
「勉強しろって!」
「いや、俺に決めさせてよ!」
周りの友達が笑い出す。
「お前んとこ、いつもにぎやかだな!」
「まるで3人でランチしてるみたい」
放課後。マコトは試しに「ケロベロス」で別のクラスの子と通信した。画面の中で自分の人格と、相手の人格が吹き出し越しに会話する。
「ねぇ君、ノリ良いじゃん!友達になろ!」
「おい、初対面で馴れ馴れしいぞ」
マコトは思った。
「人格同士が勝手につながって、俺の知らない友達が増えていく……すげぇ時代だな」
多重人格社会では、人格は“個人の中”だけにいる存在だった。
しかしアプリ「ケロベロス」の登場で、人格たちは社会に直接参加し、ひとつの“もう一つの顔”として暮らし始めていた。
笑いと混乱の中で、新しい日常が広がっていく。