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管野アリオ
875
#オリジナル
重田💋(omoda)
886
「嫌っ、離して!」
「逃げんなよ」
低い声と共に壁へ追い詰められ、
私の肩を囲うようについた腕。
目の前には、僅かにネクタイを緩めた男――。
昼間は完璧な金融マン。
けれど夜の顔は、誰も逆らえない極道の若頭。
女にだらしなくて、
強引で、
何を考えているのか分からない。
それなのに――
「……っ」
「そんな顔されたら、もう止まれねぇんだけど」
触れる寸前で囁かれる声に、
私の心臓が微かに震える。
本当は知っていた。
この男に関わった時点で、
平穏な日常には戻れない――この恋に落ちたら最後なのだと。
「ふぅ、疲れた……」
この日、上條 優來は珍しく終電間際まで残業していた。
月末処理に加えて取引先との確認作業など、経理部の繁忙期は容赦がない。
その上人手不足とあって、ようやく会社を出た時には午後九時を過ぎていた。
(早く帰ってお風呂に入りたい……)
そう思いながら駅へ向かっていた時だった。
「上條さん」
突如背後から声を掛けられ優來が振り返ると、そこにいたのは営業部の今野 遥だった。
以前から妙に距離が近く、食事に誘われたり、しつこく連絡先を聞かれたりしていたこともあって優來は遥のことが苦手だった。
「あ……お疲れ様です」
愛想笑いを浮かべつつも距離を取る優來をよそに、遥はお構い無しに距離を詰めていく。
「こんな時間まで仕事? 俺もなんだ。お互い大変だねぇ」
「は、はい……そうですね」
「これから食事でもどう? 俺、車だから送るし」
「すみません、今日は疲れているので……」
そう断ろうとするも、腕を掴まれる。
「いいじゃん、少しくらい」
「すみません、今日はちょっと……」
周囲には通りすがる人がいるものの、面倒事に巻き込まれたくないのか見て見ぬふり。
どうにか逃れたい、こうなれば強く言い返すしかないと思ったその時だった。
「――その辺にしとけよ」
低くドスの効いた声が後ろから飛んできたことで空気が一瞬凍りつき、優來の腕を掴んでいた遥の手がぴたりと止まる。
(誰?)
そう思いながら優來が振り返ると、そこには一人の男が立っていた。
その男は肩まで伸びた淡いブロンドの髪を無造作に流し、薄いブラウンのサングラス越しでも隠しきれない鋭い眼差しは獲物を狙う猛獣を思わせる程。
整った顔立ちに高い鼻筋、引き締まった顎のラインが男らしさを際立たせている。
耳には複数のピアスが並び、黒のテーラードジャケットに派手な柄シャツを合わせ、深く開いた胸元からは鍛え上げられた胸板が覗いていて、一目で人を圧倒するくらいの存在感を放っていた。
「……何なんだよ、アンタ……」
突然現れた男に遥が苛立った声を出すも次の瞬間、遥の顔色が一気に変わり、
「……っ、す、すみませんでした!」
何かに気づいた遥は優來を掴んでいた手を離すと逃げるように去って行った。
突然の遥の行動に驚きつつ優來もその男をよく見てみると、胸元には刺青のような物がチラ見えしていることに気づき立ち尽くしてしまう。
(あれって、刺青? ってことはこの人……ヤバい感じの人……だよね?)
そうは思うも助けてもらった以上逃げることも失礼な態度を取ることも出来ずに戸惑っていると男はそんな優來を見て、ふっと笑った。
「大丈夫か?」
「あ、はい……その、ありがとうございました、助かりました」
慌てて頭を下げた優來は丁寧に感謝の言葉を伝えて早々にこの場を後にするけれど、何故か男は後ろから無言でついてきた。
(え? どうしてついてくるの?)
断り方がまずかったのだろうかと思った優來は足を止めると、恐る恐る振り返った。
「あの……」
「んー?」
「何か用が?」
「いや? 俺もこっちに用あるからさ」
「……そう、ですか……」
絶対嘘だと優來は思ったが断言できる証拠も無く、どこか気まずい空気が漂う中、再び歩き始めると暫くして男が口を開いた。
「……なあ、アンタ彼氏いねぇの?」
「……いませんけど」
「へぇ、勿体ねぇな」
「はい?」
「アンタ、結構良い女だからさ」
「なっ!?」
突然何を言い出すのかと優來の警戒心が跳ね上がると、タイミングよく男のスマートフォンが鳴った。
コメント
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あー、これは**ザ・王道ダークヒーローもの**って感じで滾るわ🔥 ヒロインが「この恋に落ちたら最後」って覚悟してるとこ、最初からフラグ立ちまくってて好き。 助けてくれた男がまさかの極道の若頭で、しかも「彼氏いねぇの?」って軽く聞いてくるとか……強引だけど目が離せない展開だった! でも1話だけじゃまだ男の正体がチラ見せ程度だから、ここからどう崩れていくのか楽しみ。続き待ってる!