テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
同居生活、二週間。
朝。
照はいつものように朝食を作っていた。
フライパンから卵の焼ける音が聞こえる。
その頃、辰哉はネクタイを片手にリビングへ出てきた。
💜「照」
💛「ん?」
💜「ネクタイ曲がってる気がする」
💛「見せて」
辰哉が近付く。
照は無言でネクタイを整え始めた。
💜「自分でできるって」
💛「曲がってる」
💜「……はい」
数秒後。
💛「これでいい」
💜「ありがと」
ほんの少しだけ距離が近かった。
でも二人とも気にすることなく席についた。
────────
朝食を食べ終え、玄関へ向かう。
💜「鍵持った」
💛「財布」
💜「ある」
💛「社員証」
💜「……」
照が何も言わずにテーブルを指さす。
社員証がぽつんと置かれていた。
💜「あっ」
💛「忘れてる」
💜「危なかった」
辰哉は慌てて取りに戻る。
💜「助かった」
💛「今日だけな」
💜「また忘れたら?」
💛「その時も言う」
💜「優しいじゃん」
💛「同居人だから」
照はさらっと答えた。
その一言に、辰哉は少しだけ笑う。
────────
マンションを出る。
エントランスで別々の方向へ歩き出す。
会社が違うため、最寄り駅までは一緒でも、途中で路線が分かれる。
改札前。
junp
2,250
絶対辰哉
268
#岩本照
絶対辰哉
3,054
3,449
💜「じゃあまた夜」
💛「うん」
少し沈黙が流れる。
💜「……」
💛「……」
どちらも何となく立ったまま。
先に照が口を開いた。
💛「いってらっしゃい」
辰哉は少し目を丸くした。
💜「……」
💛「?」
💜「なんか新鮮」
💛「そうか?」
💜「うん」
辰哉は照に向かって笑う。
💜「いってきます」
その笑顔に照もつられて笑った。
💛「いってらっしゃい」
────────
夜。
照の方が少し早く帰宅した。
夕飯を作り終えた頃。
ガチャ。
玄関のドアが開く。
💜「ただいまー」
リビングから照の声が返ってくる。
💛「おかえり」
辰哉は靴を脱ぐ手を止めた。
誰かに「おかえり」と言われる生活。
一人暮らしでは当たり前じゃなかった。
自然と頬が緩む。
💜「今日、ご飯なに?」
💛「カレー」
💜「最高!」
辰哉は嬉しそうにリビングへ向かう。
その後ろ姿を見ながら、照は思った。
(喜ぶんだな)
その笑顔を見ると、不思議と作ってよかったと思えた。
────────
食後。
ソファでテレビを見ながら、辰哉がぽつりと呟く。
💜「半年って長いと思ってたけど」
💛「うん」
💜「意外とあっという間かも」
照はテレビを見たまま、小さく頷いた。
💛「そうかもな」
まだ二週間。
それなのに、この生活は少しずつ”特別”ではなく”当たり前”になり始めていた。
コメント
5件
熟年夫婦感パネェ
「当たり前」になってくのいいねぇ… 難しいことだからねぇ
みぅです🖤 第6話、読みました。 「おかえり」と「いってらっしゃい」が自然に交わされる朝と夜の空気が、すごく優しくて、逆に切なくなりました。 まだ二週間なのに、もう“当たり前”になりかけてるのが怖くもあるけど、それだけ二人がちゃんと向き合ってる証拠だなって。 照が辰哉の喜ぶ顔を見て「作ってよかった」って思うくだり、心臓がぎゅっとなりました。 この日常が続きますように、って祈りながら読んでます🌙