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『ラノケンの副将戦に当てるのはなんと一年! しかし! 驚く事なかれ、中等部の一年からラノケンに通い続けた実力! その実力は計り知れない! ドジっ子食いしん坊!』
口姫のアナウンスと共に愛のアバターはスポットライトに照らされた。愛のアバターは恥ずかしながらも手を振って、観客にアピールする。
『対するマンケンの副将は同じく一年、笑屋本舗! 絵は下手だが、ギャグ漫画を描かせれば日本一! 当たれば爆発! マンケンのリーサルウェポン? いや、隠しバズーカーだ!』
『絵が下手は余計やねん!』
虎の毛皮を被った少女アバターがハリセンで口姫のアバターの頭を叩くと、観客席からどっと笑いが起こった。
『教子先生。ラノケンの副将のドジっ子食いしん坊についてですが、中等部の一年からラノケンに通い続けたベテランという話ですよね? 小説に関しては一年生でも三年生並みのポテンシャルを持っていると言っても過言ではないのでしょうか? 教子先生?』
『……ん?……』
聞姫のアバターの質問に教子先生は寝言で呻くような言葉を発し、世界の終わりでも見るかのように真っ直ぐな視線で、両手の指を組んだまま、何処かを見ていた。その教子先生の反応に聞姫のうさ耳が二つに折れ、笑顔のまま、首を傾げた。
『通信の状態が悪いのかな? 教子先生? 例えば文章が上手いとか、誤字脱字が全く無いとか、ドジっ子食いしん坊の特徴を教えていただけますか』
『ノーコメントだ!』
『え、えーと……では、ドジっ子食いしん坊の作品の特徴はいかがでしょうか?』
『今回のドジっ子食いしん坊の作品、(異世界勇者娘は日本に行く)は学園モノでもあり、ファンタジーでもあり、コメディ的な要素を入れた作品となっている』
『えっ? 学園モノとファンタジーですか? 全く想像できませんが、魔法学園とかそんな感じの異世界の学校の話でしょうか?』
苦笑いで首を傾げる聞姫。
『逆だ。魔法が存在する異世界から、地球世界の学校に勇者パーティーが通う事になるという話だ』
『かなりの斬新な話じゃないですか!? 話の流れとしては期待大ではないでしょうか? 次にマンケンの笑屋本舗ですが、素描先生、どんな作品になるでしょうか?』
『彼女の得意な漫画はギャグになります。口姫さんが紹介した通りに彼女の絵は独特ですが、彼女のギャグ漫画はそれを補うほど、面白いです。ドジっ子食いしん坊さんには悪いですが、笑屋本舗さんの勝利は確実だと思います』
『かなりの自信がおありのようですね。では、ドジっ子食いしん坊と笑屋本舗のバトルエフェクトを見てみましょう』
「知っとるで、あんたが誤字脱字の小説を書くのは。しかし、文章が下手と言うなら分かるんやけど、何で誤字脱字やねん? どこぞで気が抜けてまうの?」
虎の着ぐるみのような毛皮を被った笑屋本舗のアバターがハリセンを愛のアバターに向けて言う。
「こ、これでも! ど、努力はしているんだけど、どうしても字が抜けたり、間違った漢字を使っちゃうみたいなんだよ!?」
愛のアバターはどもったような喋り方をし、くるくると回ったり、挙動がおかしい行動をする。恐らくは失読症がバレるのではと、かなり焦っているようだ。
「うちも絵は下手やけど、努力はしとるつもりやで! ここは努力勝負といこうか? どちらのメッキが剥がれるか、見物やろ?」
「えっ?」
笑屋本舗のアバターが残像と共に消えたかと思うと、スパンと物凄い勢いで振り下ろされたハリセンが愛のアバターの頭を直撃し、倒れる。すぐに立ち上がろうとする愛のアバターに笑屋本舗のアバターはさらに両手を押さえ、踏み潰すように両膝に重圧をかけ、完全に動けないようにしてしまう。
「こっからがうちの単独ライブやねん」
「う、動けない!?」
『おっとこれは!? 笑屋本舗のハリセンの猛撃からのマウントポジションだ! ドジっ子食いしん坊! 全く動けない! これはどういった状況だ! 一週間後の笑屋本舗の閲覧数は3111、ブックマーク数159、いいね数78、コメント数4。対するドジっ子食いしん坊の閲覧数は899、ブックマーク数52、いいね数27、コメント数0と大きく差をつけられてしまった!? この差は大きい! ドジっ子食いしん坊、この差を撥ね除けられるのか?』
『おっきく差をつけてしもたね。うちの単独ライブやし、ゆっくり味を覚えへんとね』
笑屋本舗のアバターは舌なめずりし、牙のような不気味な八重歯を見せたかと思うと、愛のアバターの肩に噛み付いた。笑屋本舗の噛みつきは一度だけでは止まらずに捕食するように愛のアバターの両肩がえぐられ、白い鮮血が飛び散り続ける。その白い血は愛のアバターだけでなく、笑屋本舗の顔や身体も白く染め上げていく。
「あうっ!? あうっ!? あうっ!?」
『まるで虎による惨殺ショーだ! 笑屋本舗の猛撃は止まらずにドジっ子食いしん坊の白い鮮血は舞い続ける! これはドジっ子食いしん坊と笑屋本舗の差は埋まってないという事なのか? 笑屋本舗の閲覧数は6230、ブックマーク数309、いいね数149、コメント数8。対するドジっ子食いしん坊の閲覧数は3003、ブックマーク数154、いいね数70、コメント数2。まだ大きく差をつけられたままだ!』
「そんな……ドジっ子食いしん坊は勝てないのか?」
思わず両膝を突く書也のアバター。
「嘘でしょ? あんなにドジっ子食いしん坊は頑張ったのに勝てないの?」
友美アバターは思わず理香のアバターを揺さぶる。
八雲瑠月
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